009



翌朝、妙に慌ただしい家の空気に目がさめて、無駄に規則正しい夏休みになっていることに嘆息しながら、まだ早い時間に布団から出た。



リビングに入ると、ピアスを耳につけながら奥から母が出てきた。


「あぁ、またちょっと家あけるから」

「今度は何?」

「ニュース見たらわかる。ホントはしろちゃんが家に慣れるまで、せめて一週間は居たかったんだけど」



テーブルに置かれた荷物を手早くまとめながら、母はため息をついた。



「出来るだけ早く帰ってきたいけど、もしかしたら始業式に間に合わないかもしれないから、その時はしろちゃんの転校手続きかわりにやってね」

「はいはい、分かったから無事に帰ってきて下さいよ」

「当然です。あっ、書類とかは私達の部屋の机の茶封筒に入ってるから。印鑑とかお金はあんたの方が分かってるわね」



あれとこれとといいながら荷物と家のことを確認している母に、リビングに入ってきた父が声をかけた。



「車下につけたから、行こう。飛行機間に合わない」

「今行くわー。じゃあお姉ちゃん、頼んだわね。電話はこっちからするから。しろちゃんの身の回りに気を配ってあげてね」



他に言い忘れたことはなかったかとうんうん唸る母を玄関から見送り、ようやく一息ついた。



「はぁ、朝ごはんどうしよっかな」















それからしばらくして起きてきたマイ弟に両親の不在を告げ、しばらく帰ってこないことを教えた。

なんだか微妙な顔をした気がする美少年に、



「まあなんか困ったらお姉様に言いなさい」



姉ぶって言ってみたけれど、あんまり頼りにされている気はしなかった。













それからその日は昨日片付け切れなかった荷物を二人で整理していたが、今日も冬獅郎くんが口を開くことはなかった。



儚い顔をするなぁ……


二人しかいない食卓で、今日は向かい合って座った対面の美少年を、ぼうっと眺めた。


もうなんというか、色んな意味でこの世のものとは思えない顔だ。
俗に浮世離れした〜というのはこういうことだろうか。



心ここにあらずというか、感情が全く感じられない表情。

でもショッピングモールで見た、怒りと嫌悪に満ちた顔を思い出して、やっぱり彼という人間をはかりかねる。



そのうちこの家に慣れてくれればいいのだけど、と心中で息をついて、



「ごちそうさま」



本日ラストの食事を静かに終えた。


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