8.




「せーんろは続くーよー、どーこまでもー♪」



上機嫌で車椅子を押す私に、車椅子に乗ってるご本人は実に鬱屈としたように息をはいてみせた。





私達はさくら棟を出て、庭園の小路を進んでいた。

庭園とは言っても半分は“手入れされた山”状態で、ちょっとした森林公園だ。

土地柄、高い樹木はまばらにしかないが、おかげで鬱蒼としないし、咲き誇る小さな花や芝がよく映える。

実にファンタジックな景色ではないか。

と言ったら、意味が分からない、という顔でティエリアくんにそっぽ向かれたが、むなしくなんて………ない…。





まだ涼しい風に吹かれながら桜の名所に向けてスロープを上がって行くと、少し見えにくいながらも、なだらかな斜面の先に通っている高校が見え隠れしていた。



「あーほらほら、あれうちの学校! グランドに囲まれてる」



がっぽり敷地を占領している学校は、テニスコートやらサッカー場やら、グランドで囲まれている。

田舎だからなせるこの敷地面積。こうしてみると、………馬鹿でかい。



「……中学?」

「高校!」



えっ、なにこの人、私を何歳だと思ってらっしゃったの?

思わず頬を引き攣らせていると、下から視線が上がってきて、赤い瞳とかちあう。



「高校…のわりには、ずいぶんと子供っぽい」

「んだと、ごら」



ふっ、と癪に障る例の笑いをもらして、彼は顔を正面に戻した。



「落ち着きはない、短絡的で強引」

「………まだ無理矢理連れ出したこと根に持ってんですか、ティエリア“ちゃん”」



バチッ、とまた紅と視線がぶつかった。が、もちろん逸らすものか。

向こうだって、それで降参するようなタマではなくて、それどころか呆れたような顔でまた正面に向き直ったから、こっちもカチーンと来た。来ましたとも。



ピタッと車椅子を進めるのを止める。


みたび、こちらに眉根を寄せて見上げてきた彼に、ニヤッと笑って、



「さて、行きましょうか」



抱え上げた。



まさかいきなり持ち上げられるとは思ってなかったんだろう彼は、反射的に私の首につかまったが、唖然として遠退いた地面を見下ろした。



「おっと、道が悪いから、しっかり私につかまってないと落っことしちゃうかもなー」



あからさまにむっとした表情がすぐ横から向けられたが、何を言っても今は私が完全有利。

にやにやと笑う私に、ティエリアくんはふん、と顔を背けた。





それでも本格的に喧嘩なんてごめんだから、しっかり抱えた彼を腕に、一歩一歩道を上がっていく。


不思議と重みなんて気にならなくて、爽やかに晴れた空と、肩に回されたティエリアくんの腕のしっかりと力の篭ったそれが心地よかった。








「着いた…」



のぼってのぼって、そこはまるで妖精か何かの住家みたいに、暖かくて幻想的でさえある場所だった。

緩やかに盛り上がったり窪んだりした地面には、降り注ぐ陽射しが桜の向こうから零れてくる。

どこからか吹き抜ける風は涼しくて、その風にあちこちの桜の花が優しく揺れた。



背の低い草花の間を、歩を進める。

さすがのティエリアくんでさえ、言葉もなく桜を見上げ、辺りを見回していた。





「絶景、でしょ?」

「ああ…」



さしもの彼をも唸らせた景色は、数年前と違わず豊かに桜の蕾をまとっていた。



「まだ三分咲き、ってとこか」



ちょうどよい緩やかな斜面にティエリアくんを抱えたまま腰を下ろし、頭上を見上げる。

すっぽりと空を覆ってしまう程に枝を伸ばした桜は、まだちらほらと花をほころばせているだけで、満開には程遠い。





ぴったり調整したみたいな気温に、緩やかな風、草花の香り。

ゆらゆら揺れる木漏れ日すら心地よくて、ふっと眠気を誘われた。





いつの間にか下りた瞼に逆らう術などなく、抱えていたはずのティエリアくんに逆に支えられているなんてことにも気付かずに、春の陽射しにまどろんだ。


久しぶりはずのこの桜の穴場。
そこに溶け込むように緩やかな時間が流れ、ふわふわする意識の中で、傍にある体温がそっと頭を撫でた気がした。

















。.。.。.。.。.。.


最終回?なにそれ美味しいn(ry

くっそ、ヤツは最後までマザコンだった…!(違


現パロでよかったとしみじみ思います。
大丈夫、俺がガンダムd(ry



これからも連載は激甘狙い撃ちます。
原作なんてラララ。



090420


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