過去への敬意






「赤ちんは太陽だね」

敦が突然そんなことを言い出した。
なんだ急に、と返せば、いつものつまんなそうな顔で、でも、瞳だけ輝かせて。

理科で習ったんだ、と言った。




「えっとねー、九天っていうの?日天と、月天とー水星天とー金星天とー火星天とー…なんだったか忘れたけど、天体でしょ?」

ああ、九天。
そういえば今日の授業は天体オタクな教師がやけに熱く語っていたな。と納得する。

「だから、赤ちんは太陽。みんなのキャプテンだから。みどちんは木星。黄瀬ちんは金星。青ちんは、熱いから火星〜反対に黒ちんは恒星」

指折り数える敦は、きらきらした目で、ローテンションなのに楽しそうだ。
大好きな人たちに共通点を見つけて、嬉しそうにはしゃぐ、大きな子ども。
やっぱり図体はでかくても子どもには変わりない。

「じゃあ敦は?」

そう聞き返したのはほぼ反射だった。
だって全員分、当てはまる星がある。敦のがないわけがない。

「オレ?オレねー、水星!」

嬉しそうに言った敦に思わず目を見張った。
別に俺が太陽だから月って言ってくれるのを期待したわけじゃないけど。

少し悶々していると、敦は続けて、爆弾を落とした。

「だって水星は太陽の一番そばにいるから〜」

オレは赤ちんの一番そばにいるからね!と、自信満々に言った。




俺は、数年ぶりに開かれた手紙を手に、その場に立ち尽くした。
中二の頃、敦が俺にと向けて書いた手紙はただただ俺に対する率直な想いが綴られている。或いは、他に伝える手段がなかったのかもしれない。

「赤ちんはオレの太陽」

そう綴られた、文面に、それを言った敦の顔を思い出して、それからその場面を思い出した。

当の本人は、青峰と黄瀬の手紙の取り合いに参加している。



氷面鏡に映る雲も灰色な寒い冬。
今日俺たちは成人式を迎えた。
それに伴い、自然と脚が向くのは帝光中だった。
みんなが同じことを考えていたらしく、それぞれがそれぞれ、帝光中で鉢合わせした。
それから、記憶にある場所を掘る。

中学2年のある日、俺たちはタイムカプセルをここに埋めた。
タイムカプセルの中身は、自分の大切なもの。それから、大切なみんなへの手紙。
俺はまさにそのうちの一つ、敦からの手紙を手に固まっている。

あの後、俺たちは変わってしまった。
でも、色々経て、今の俺たちがいる。
俺と敦は今や同棲までする仲で、青峰は黒子と付き合い、桃井は黒子の高校時代の光である火神と婚約している。緑間と黄瀬はそれぞれ高校でのパートナーとよろしくやっているらしい。

手紙の頃だと考えられない。
あの頃はまだ、俺の片想いだと思っていた。まさか気持ちが通じるなんて。
あの頃と変わらないのなんて、俺のコアが、敦でできてるってこと位か。
今も昔もいい意味でも悪い意味でも甘やかしてしまう。

最近はもう足掻くのは諦めた。

でも、

手紙を眺めながら思う。

勿論、片想いをしていたこの時代も好きだ。
だけど、進まなければならない。時間も、関係も進んだのだから。

片想いに足掻いていた、あの頃の俺を。

厳かに、弔おうじゃないか。


ポケットから出したライターで、未来の自分へと書いたくだらない手紙に敬意を持って火を着けた。






あとがき

シシー・ラビット管理人菓子丸に捧ぐ!
実はちょいちょい紫赤さん捧げてますwwアレとかソレとか。
彼女からのお題は、紫赤で
[九天][コア][氷面鏡][弔い][手紙]
九天と氷面鏡に関しては意味調べました。
お前マニアックなんだよ!寧ろお前がコアだよ!!って騒いでいたいい思い出(´ω`*)






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