時間にすると、凄く長い時間。
けれど、夢中になって空を見上げた時間はあっという間。
この次はいつ見られるかも判らないような光景が名残惜しくて、少し寂しくなった。

日向に目を向けると、日向は丸い眼鏡の奥から俺を見ていた。
どうだった、とその目が俺に訊く。

「…凄かった。珍しいね、日向がこんなのチェックしてるなんて」

その何もかも判ってるような態度がムカついて、俺はちょっと皮肉を込めて素直な感想を伝える。

「―いや、家に帰ったら偶然特集やってたんだ」

お前が喜んでくれてよかった、

心からそう言って、俺の頭をくしゃくしゃにして笑う日向に、なんとなく悔しい気分になる。

少し、静かになった夏の夜空を眺めた後、どちらとともなく、帰路につく。

先に立って歩く日向の後頭部を見ながら、ふと、昔読んだ文章の一節を思い出した。

人間が星を綺麗だ、って思う感覚は、遺伝子に刻まれた記憶らしい。
そうすると、日向と2人、今日この星空を見上げて綺麗だって思うのも、きっと遺伝子に組み込まれた運命だったのかもしれない、
なんて、俺には珍しく非科学的なことを考えた。

緑間みたいな考え方をすれば、俺らが出会って、恋をして、これまで付き合ってきたことが人事を尽くすってことだったのかもしれない、なんて、なんて感傷的な。

でも、なんとなく、
その運命を信じてもいいような気がして、
小声で、これが運命なのだよ、って緑間の口調を真似た。

「何?伊月」

俺が何か呟いたのに気づいて、でも何を言ったのかまでは判らずに、日向が後ろを歩く俺を振り返った。

「んー?日向大好きだよーって」

照れるかな、って思って少しおどけて言ってみると、日向も少しも照れくさそうに笑った。

「馬鹿。俺は愛してんだよ」



非科学的な話だけど、きっと、

俺たちが出会ったのも

俺たちが愛し合ったのも

全部生まれる前から決まっていた、運命なんだって。






あとがき


読んでいただきありがとうございました!
リク主風狸様のみお持ち帰り可です!
お待たせしました

リクエスト内容が「星」と、「夏の夜空」ということでしたので、ずっと書きたかったネタを投下させていただきました。
かなり長い文章になったことをお詫びします。

かなり長くなってしまいましたが、長年書きたいと思っていたネタが書けて満足しています。

この機会をくださり、ありがとうございました。

ご意見等ありましたら、遠慮なく言ってくださいませ。
返却も可です。

また来ていただけると幸いです(´ω`*)



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