キスホリック
「ん、ふ…っ」
たまに、たまにだが、笠松は急にスイッチが入ったかのように、こうやってキスを繰り返す。緊張やら恥ずかしさやら、色んなモノでいっぱいになった伊月にはなすすべなどあるわけがなく、ただ、懸命にその想いに応えるようにしがみつくことしかできない。
苦しくなっても、付き合いの長くなった笠松はキスの合間、ちょうど伊月が苦しいともがくそのタイミングで唇を放すことを覚えたらしい。
長く、長く。繋がっている時間が増えた。
伊月としても、その時間は長くもあり短くもあり、笠松のキスによって与えられる、その少し苦しいほどの時間ですら気持ちがいいと感じてしまう。
少しずつ、少しずつ指先から笠松の服を掴む力が入らなくなって、やがては布の上からまるで誘うように、肌を撫でる。
力が入らなくなった指先はもがけばもがくほど、笠松の劣情を煽る、らしい。
これ、脳内麻薬ってやつだよな。
それが始まる瞬間は、突然ではあるけどすぐに分かる。
普段の生活では決してしないようなタイミング、そして、噛みつくようなキスの始まり。
まるで求められているかのようで伊月の身体は歓喜に震える。苦しいのに、それすらも愛おしい。
「……随分、幸せそうな顔だな?」
「……、え?」
長いキスの終わり、唇が放れた瞬間に肺の中いっぱいに酸素が入り込む。突然与えられた酸素は、それすらも苦しく、心地いい。
にっと笑った笠松さんの笑顔はまるで獰猛な獣のそれ。
まるでとって食われそうな。
あとがき
超SS三本目。
PGであることを忘れない笠松さんが好きです。真っ直ぐ誠実だけど、好戦的で戦略的。
戦略を考える性質をお互いに持ってる、笠松さんと伊月が好きです。