断罪
R-15
宮月前提の森月となっています。
愛する人が手に入ればそれでいい。
心なんて、自分が愛していれば必要ない。
………そんなの、誰が言ったんだ。
あ、あ、あ。
断続的な声が、部屋に響く。明け方近く、薄い水色が、窓の磨りガラスから入り込んできてカーテンを照らす。
部屋にあるのは、熱い声と、息と、ふたつの身体。
ただただ熱を求めるだけのその行為には、心など存在しない。
否、本来なら存在してはいけなかった。
森山が抱えるそれは、確実にイレギュラーであり、明らかになると断罪されるものだ。
もう何度組み敷いたのかもわからない体が、森山の方を見ることなどない。
伊月の心は森山を見ている訳ではないのだから。
伊月は、悪友の…宮地の恋人だ。
別に、その宮地に恨みが有るわけでも、普段から周囲にバカップルと囃し立てられる伊月と宮地のカップルに当て付けがしたいわけでもない。
ただただ、森山は、伊月が好きだと、それだけだったのだ。初めは。
「森山さん」
森山さん、と、伊月は呼ぶ。
情事の最中に伊月が森山を呼ぶことは、これまでに一度たりともない。当然だ。
宮地に心を残したままで、他人に抱かれる気持ちは、分からないながらも想像はできる。
じゃあ、何故呼ばれたのか、それは簡単だ。あの日、この行為に及んだ、運命のあの日に。怖い、と宣った伊月を森山が抱いたその日に、彼が呼んだその声が、耳に焼き付いて離れないからだ。
名前を呼ばれているのだと、錯覚する。
結局、誤解は解けたらしく、森山と伊月の罪悪感だけが残る。
宮地と伊月は、男同士だっていうのに、周りが認めるくらいのバカップルの認識となった。
それでも、それでも伊月は、元来の性格か、不安になるとそれを宮地に打ち明けることを拒む。
知られたくない。そんな感情を抱いていることすら、宮地への裏切りだと。
だから、きっと伊月は罪悪感でがんじがらめになっているのだと思う。
顔が見えない背中から、その身体を抱き締める。
ああ、と切なげに、肩を戦かせる。
この、熱を求めるだけの行為の先には何があるのか。
少なくとも、幸せはないのだろう。
心なんて手に入らなくても、愛するその人がいれば、それでいい。
安っぽい小説のようなその言葉。
それを言ったのは、一体誰だろうか。
少なくとも、その言葉が偽物なのだと、それは分かる。
だって、
「伊月……っ」
吐き出すその息と一緒に、好きだと伝えることができたらどんなだろうと、思ったのだ。
あとがき
50000hitありがとうございます!
リクエスト主の真尋様のみお持ち帰り可とします!!
まずは、リクエスト内容からかなりかけ離れたものとなったことをお詫び申し上げます。
そもそもが、私が無理矢理表現をするのが苦手でして、裏自体、書くのが苦手なわけであります。
ということで、今回はR-15くらいで、
宮月前提の森月、ということにしてみた結果、こうなりました。
リクエストからかなり時間がたち、
お待たせしてしまい申し訳ありません。
またいらっしゃってくださると幸いです。