午前7時5分前





朝は、目覚ましが鳴る30分前に目を覚ます。

外からカーテンをすり抜けて入り込んでくる朝日と、これまでの経験で身に付いた反射だけを頼りに、この時間に起きるのはもう既に習慣となった。

隣に眠っている布団に埋めた白い肩をするりと撫で、柔らかな頬にそっと唇を落とす。独り暮らしを始めて2年がたち、恋人は自らも独り暮らしであることで、周囲の人間に気を使うことなく宮地の元を訪れる。

昨夜は久しぶりだったこともあって、少しはっちゃけてしまった。穏やかに息を漏らす彼女の横顔には少しだけ疲れの色が見える。
決して豊満とは言えないが、柔らかく、自分が触れるようになって少しずつ大きくなっている胸も何気にお気に入りだ。最近、またカップ数があがったんじゃないか。

彼女が起床するにはまだ早い、午前7時前。

今日も可愛い彼女の寝顔を堪能し、少し怠い身体を無理矢理に起こして、隣で眠る彼女を起こさないように静かにベットから足を下ろす。

できるだけ足音を起てないよう気を付けながら、洗面所へと向かう。

冷たい水を出して、顔を洗い、ついでに頭までかぶってしまえば、もう目は覚める。冬場は辛いな、畜生。

裸の背中に髪から垂れた水滴が冷たい。

彼女は宮地の背中には絶対に傷を残さない。
なんとなく独占欲の現れみたいなことを思っていた若い頃の自分は残せよ、と、意味のわからない理由で恋人に詰め寄り、だって、と、思ったよりも掠れた声を聞く羽目になった。
曰く、
だって、宮地さんの肌って綺麗で、傷つけたくない。と。
思わぬ攻撃を食らった気分だった。
そんなことを言う恋人が可愛くて、結局、その日は彼女の白い肌を赤く花で埋め尽くしてしまうほど愛してしまった。

白い、まっさらな綺麗なものを、汚すのがいいんだと思う。それが独占欲なのだと。恐らく、恋人はそれを大切にしたいのだ。大切なものは縛り付けたい宮地とは違うのだ。

がしがしと乱暴に髪に伝う水を拭き取り、その上にTシャツを羽織る。流石に寒い、とカーデガンもついでに羽織り、冷蔵庫をあける。

恋人が起きる気配はまだない。目覚ましが鳴る10分前。

今日の朝飯はトーストに、ベーコンとスクランブルエッグ。レタスもあったからスライスした玉ねぎと一緒にサラダ。和風ドレッシングはまだ残っていた筈だ。大きくトマトをカットして、これにも刻んだ玉ねぎと和風ドレッシング。

トマトに刻んだ玉ねぎと和風ドレッシング、この組み合わせは彼女とカレーを作った時に、彼女が美味しいと発見したサラダ。普通にドレッシングをかけるのとは少し違う味がする。
カレーは彼女に作らせると大変なことになるので宮地が作った。彼女の料理の腕はいい加減にどうにかしてやらないといけない。

とすん、と、背中に何かがぶつかって、少し身体が振れた。

「……おはよ、リコ」
「ごはんの匂い」
「おい、挨拶しろよ。轢くぞ」

少し無理な体勢で、視線だけ後ろにやれば、背中に顔を埋めた登頂部が見える。
そのしたの肩と背中は裸で、白いタオルケットとのコントラストが眩しい。

おいおい、と冬であるにも関わらず、裸にタオルケットという格好でベッドから出てきたらしいリコに嘆息すると、リコがぐりぐりと背中に頭を押し付けてきた。

笑ってやればふふふっと小さく笑い声が聞こえた。続いて、おはようございます、とリコの唇が触れる背中が振動する。

「きよしさん、私コーンスープも欲しいなー」
「はいはい」

わかったから着替えてこい、と言うと、はぁいと声が返ってきて、ぎゅう、と背中に抱きついてから、体温が離れた。
彼女を振り返ると、赤く花の散った白い背中と尻が寝室へと逃げていく。

宮地はとりあえず、恋人の希望を叶えるため、鍋にふたりぶんの水を入れ、火にかけた。

午前6時55分。
目覚ましが鳴るには5分早い。

恋人のいないベッドは少し冷めていただろうか。




あとがき

唐突に書きたくなった宮リコちゃん。
寝ぼけた1時間クォリティ






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -