にちようびのまもの




俺たちの関係はなんだっただろうか、と、花宮はこのところ割りと頻繁に思う。
何度考えても、何度振り返ってみても花宮と木吉の関係は加害者と被害者であり、それは自他共に認めている。
……ただひとり、被害者である木吉を除いては。

1年ほど前に半ば強引に恋人となったこいつは、この爽やかに天然に笑う顔の裏に案の定花宮自身よりも黒い内側を持っていたわけで。

大学生になり同居を始めて約1ヶ月。

早くも不安を抱えている。

なーあー花宮、と同居人がまとわりつく。
やめろといってもこいつは聞かないし、もうそんなことはとうの昔に諦めた。

「うるせぇ。あぶねぇから邪魔すんな」
「大丈夫だろ?」
「…じゃねぇよ」

きょとん、と木吉は目を丸くして、微かににやりと唇を歪める。真性の天然なのか、腹に逸物なのか。未だに判断はしかねる。ああ、こいつ、やっぱり話聞いてねぇ。

「怪我するっつってんの、いいから放せ!」
「平気だよ」

二人で立った台所は狭い。
木吉が夕方から病院に行ったことにより遅くなった夕食も、なかなか準備が捗らない。
どんなものかとソースを一匙唇へと運ぶ。うん、木吉なんかに食わすには少々もったいない出来だ。

邪魔だ、と、半ば引きずるようにして台所を移動して、自分の分と木吉の分と。

「はーなみやー」

なんだよ、と返せば許可もしてないのに唇を奪われた。
ちゅ、と唇を吸われて小さく音がなる。熱い舌が唇に触れて思わず目を閉じた。
それは口のなかに入ってこようとはせず、優しくなぞってやがて口の端へと。

呆然とみやってやれば木吉の目元が緩む。
こいつ、と口のなかで悪態を吐くとますます笑みは深くなる。

「…っにやってんだテメェ!あぶねぇって言ってんだろうがバァカ!」

わははは、なんてわざとらしく笑って木吉は花宮の腰を撫でる。するするとウエストをたどり、腹を撫でるようにして花宮の腰回りに腕が絡まった。

こう言うことをするからこいつは殴りたい。

くそ鬱陶しい、無駄に力ばっかりが強い木吉の腕を無理矢理引き剥がし、その腹を蹴りあげた。

「盛ってんじゃねぇぞ、デカブツ!お前今夜飯抜き!」
「えっ」
「あと2週間は俺に触んな。てめぇこの俺の邪魔してんじゃねぇぞ」
「ええっ!?」

おいこら、飯抜きよりも反応が大きいのは何でだ。

取り合えず、目の前で自分よりデカい男が切なそうにくぅくぅ小動物の目で見上げてくる。
それだけで、2週間のお触り禁止が揺らぎそうだ。

襟首を引き寄せむき出しの額に唇を押し付けると、離れ際にちゅ、と音がしてそこで初めてとんでもないことをした、と思った。
自分から、なんて初めてだ。

きょとん、とした後に、徐々に木吉の目が無駄に大きくなる。

ああ、もう。
こんな顔見たかったわけじゃない。

「花宮!今俺にキスしたよな!?」
「してねぇ!してねぇから大人しくしやがれバァカ!!」
「さっきのお触り禁止令は!?」
「ぜってぇ守れよ、いい子ちゃんよォ!」
「花宮!?」

これもしかして墓穴、なんて気づけないまま、花宮にすら我慢の一週間が始まる日曜日。




あとがき

お読みいただきありがとうございます!
あずき様リクエスト、木花でございました!
これは甘いのか…
さんざん待たせた結果がこれで本当に申し訳ないです。

それでは、リクエストありがとうございました!
りく主、あずき様のみお持ち帰り可とさせていただきます!
またの起こしをお待ちしております!







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