約束の指輪




ふわりふわりと暖かい。

こんなに温かい気分は初めてかもしれない。

花宮は隣に眠る伊月の頬を撫でる。女とは違う手触りのそれは予想外に心地いい。
俺はホモか、と嘆息するが他の男にこんな感情を抱いたことはないから違うと言いたい。

誠凛の人間に認められるのには骨が折れた。――いや、恐らくまだ認められてはいないだろうと、昨日伊月と訪れた木吉の病室を思い出す。
木吉は本心なんか見えない、他のやつらは剥き出しの敵意を伊月の為ならと抑えたようなものだ。本気で伊月を心配するチームメイトに恋人が大切にされているという実感が湧いた。

一応認められたという形で、春休みの部活休みを利用して泊まりに来ていた伊月を久しぶりに抱いた。

自分の手に翻弄されて花宮花宮と舌っ足らずに繰り返す伊月は酷く扇情的で、壊したくなる。

このまま自分のものにしてしまえたらと思う。

花宮はするりと伊月の首を指先で撫でる。

身体を重ねていたその過程で、愛しいそれを自分の手で壊したくなった。
他の人間には渡したくない。

花宮、と。

首に手をあて壊したいと呟いた花宮に伊月はいいよ、と言った。いいよと笑った。

そこで目が覚めた。

壊してしまったら。
クールなくせにころころと表情を変えるそれを見ることはできなくなってしまう。生意気に反抗してくる唇も、その声も損なわれる。

そんなもの、伊月である必要はない。
伊月は綺麗だから、死に顔もきっと綺麗だが、そんなものは伊月ではないのだ。

先ほど軽く締めた首は、代わりにと沢山の花弁が散っている。白い肌に赤いそれはよく映える。

これでは足りない。

花宮は、眠る伊月の唇に吸い付くように口づけた。
何度も口づけて、微かに開いた隙間から舌を差し入れると、反射だろうか、伊月も舌を絡ませてくる。
眠っていても生意気な伊月に花宮は笑みを浮かべる。
そうやって、呼吸を奪っていると流石に苦しくなってきたらしい。

くっと息を呑んだ音と共に伊月が咳き込んで目を覚ました。

「げほ…っ、な、に…っ?はなみゃ…?」

驚いたように涙目で花宮を見やる伊月は最高に可愛い。切れ長の目いっぱいに涙を溜め込む伊月を見るとついいじめたくなる。
そして、めいっぱいに甘やかすのだ。とろける位に。

「伊月」

無理矢理起こされて半分夢現な伊月の左手を取る。
その指先に舌を這わすと伊月の顔がぼっと赤くなった。目も覚めたらしい。

「はっ、花宮!?」
「んー?」

いつも伊月自身にそうするように、丹念に舐めていく。薬指の付け根を一際優しく舐めて、それから、そこに歯を起てた。

「い…った…っは、なに…っ」

少し痛い位。
噛んだ薬指の付け根は、暫く痕がのこるだろう。
くくく、と花宮は笑みを浮かべる。

「これでお前は俺のもの」




あとがき

はい、またやらかしました。
一番純愛そうなタイトルで一番ヤンデレっていうね。
ちょっとR15要素入りました。
皆様わきまえてお読みくだされば幸いです。
キャプテン月の日おめでとう!



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