モーニング・グローリー





外から入る陽光の眩しさに目を覚ました。

鈍く重たい身体を起こせば隣に子どものように眠る子どもには似合わない大きな身体がある。

外へと視線を移すと、もう一週間程続いていた雨が上がっていた。
いい天気だ。

空気中の不純物を全て洗い流したような。
澄んだ空が広がっている。
時計を見るとだいたい朝の8時頃。珍しくしっかりと寝た気がする。


もう一度敦へと視線を戻し、顔に掛かった髪に指を入れる。彼と違って長く重たそうな髪はけれども、その実細く意外な程軽い。
するすると指の間を抜けていく。

髪から瞼へ、瞼から唇へ。
滑らせるように彼の細い指先が造形こそ大人な子どもの顔をなぞる。
起こさないように気を使いながらそうっと。

赤ちん、

眠ったままのその唇が、彼を呼んだ気がして動きを止める。
しまった起こしたか、と息を飲むが意外にもその唇は寝息を漏らした。
ほっと彼は息をつき、ふと、自分の唇に指先を当てる。

敦、

そのまま導かれるように、彼は寝息を漏らす唇にそれを重ねた。

「ん…、赤ちん…?」

今度は流石に目を覚ましてしまったらしく、寝ぼけた様子でふにゃりと笑う。赤司は腰回りに擦りより抱きついてくる腕に思わず笑った。

「雨あがったぞ、敦」
「えっ、マジで?」

毎日、黒い雲から降る雨に憂鬱な顔をしていた紫原に報告すると、紫原はがばりと体を起こした。
肩までかけていたタオルケットがずり落ちる。

「朝食の後にベランダに出てみよう」

未だに寝起きの様子の紫原にさあ準備を始めるぞ、とタオルケットを叩いた。



「ホントだ。あがってる」

カーテンを大きく開くと明るい日差しが差し込む。
朝の冷えた空気は夜に閉じ込めたじめじめした空気の中に爽快感を与える。

こんなにいい天気は久しぶりだ。

窓を開け放てば、やっぱり不純物を洗い流したように空は快晴、気持ちのいい天気だ。

赤ちん、と紫原が赤司を呼んだ。

見て見て!と子どものように弾む声に顔を向ければ、そこには控えめに咲く、まぁるい花。

去年の秋頃、何故か子ども好きする紫原が小学生に貰った種が花開いた。
昨日までの雨のせいか、わずかに花弁に雨垂れの光る。

花は美しい。
特に朝顔なんかは花開く頃は青が目立つが、枯れるにつれて赤く赤く色づく。それはもう萌えるような赤色に。

恋と似ていると思う。
紫原の恋なんかは正にそれだ。
本人の性質の為か、初めは真っ青に冷め切っていることが多い。しかし、好きになると酷く情が篤い。その人に染められ、その人に執着する。
その人がいないと何もできなくなる。
そして、与えられる方もたまらなくなる。

赤司は自らに与えられる愛を、自らの愛を、そういう風に受け止めていた。

それが正しい恋だとは思わないが、赤司はこれでいいと思う。

結局の所、恋心なんて人それぞれなのだ。

それが、自らの身を滅ぼすとしても。

「赤ちん!今日仕事は?」
「今日は夕方から。」

平日中心にバイトを入れる紫原とは違い、赤司のバイトは不定期、しかも時間までバラバラで、毎朝毎晩、その確認をする。

今日は夕方からか、と時計を見上げる。一分一秒が惜しい。

ちょっとだけつまんなそうにふーんと言った紫原は次に、じゃあ待ってるね、と笑った。
終わる時間は0時近くになるというのに。

待っててくれる人。
それはなんと甘やかな言葉。

骨抜きだな、赤司が笑う。

「じゃあ急いで帰る」

まぁとりあえずは、バイトの準備を始めるまでの数時間。
時計は時間を遅くなんて刻んでくれないし。
この時間を大切にしよう。



モーニング・グローリー


愛情のきずな
はかない恋、愛着、固い約束





あとがき


お待たせいたしました!
菓子丸リクエストの紫赤。お題は「モーニング・グローリー」「時計」「雨垂れ」「唇」「恋をするということ」でした。
リク主菓子丸のみ持ち帰り可!

モーニング・グローリーのもう一つの意味なんて知らないよ。知らないよ。






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