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※オリキャラ注意



「……」
 コンビニで約2年ぶりに再会した森山が伊月に晩飯を食べないかと誘われたのはつい昨日のこと。
夕方、講義が終わった伊月が家に帰ると、部屋のドアの前にひょろ長い男が立っていた。
その男は伊月を見つけると、寄りかかっていた上体を起こして軽く片手を上げる。
「よっ」
「…なにやってんですか」
 暇なんですか、と毒づけばそういう訳でもないんだけどね〜、とふざけた調子で返された。
「伊月くん、デートでもどうかな〜って思って」
「…他あたってください」
手早く部屋の鍵を開けて逃げ込もうとすると、焦った調子で腕を掴まれる。
「待った待った!ごめんふざけた。伊月今日この後暇?」
「…さしあたって大事な用も急ぎの用もないですけど」
「じゃあごはん行こう」
半分警戒体勢で待ち構えたら意外なとこからきた。
不意を突かれ一瞬の間を置いて、は?と森山を見上げると、目の前のイケメンはそれを崩すみたいに子どもの様に笑った。
「昨日のお礼。したいんだけど」




 連れて行かれたのは小さな居酒屋だった。その性質には珍しく、店長が趣味程度でやってるというその居酒屋は、学生をメインにしているらしく、小さな宴会席の他はカウンターが少し。それから、小さなテーブルが少しと小規模。また、メニューも割安で、手が出しやすい。酒類も甘めのカクテルに重きを置いているらしい。
「ここ、お勧めなんだ」
 と慣れた様子で入る森山に対して、まだ未成年の伊月は少し後込みするレベル。
対面のテーブルに先に座った森山は、注文を取りに来た奥さんらしい人に特にアルコールを取るでもなく、簡単にお茶と、細々な肴を注文していく。
「伊月はなにか食べたいのある?」
「…そうですね…お浸しとかいただきたいです」
 渡されたメニュー表を見ながら、野菜、と文字を追っていく。飲み物は森山と同じようにお茶を頼んだ。
「森山さん、ホントにいいんですか?」
「いいよ。昨日伊月の今日の分の飯まで貰っちゃったし」
「そーそ。この子稼いでんだから寧ろもっと食べてきなさい」
 突然の横からの声に伊月がびくりと震える。声の主は注文を取りに来ていた女性だった。
「珍しいわねー。孝くんが男連れてくるなんて。初めてじゃない?」
「孝くん…?」
「ちょ、奥さん…孝くんはやめてくださいよーこいつ一応後輩なんで」
「あら、孝くんは孝くんじゃない♪」
勝手知ったノリで話を弾ませる2人に伊月は若干置いてけぼり感を感じる。
「お兄さん何くん?」
「あっはい!」
伊月です!と尻つぼみに突然話を振られた伊月はじゃあ月ちゃんね!と言われて戸惑う。こんなに知ったノリで店員に話しかけられるのは初めての経験だ。
「あのねー月ちゃん。孝くんったら初めてうちに来たのは1人だったんだけど、それ以来女の子とばっかり一緒だったんだよ」
 嫌ねー、なんて同意を求められ、それに答える隙もなく森山の焦ったような否定とも肯定ともつかないような言い訳をしている。
なんか久しぶりだな、こんな賑やかな食事。
そう思った伊月は微かにその薄い唇に笑みを浮かべた。




あとがき
オリキャラ投下失礼しました




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