1 | ナノ


 大学の講義の後、いつもなら彼女の家へと向かうが、あいにくとここ3ヶ月ほど彼に彼女はいない。
 それでもしつこく彼女がいるようにして帰るのは、見栄だったりする。これが高校の親友である笠松か小堀ならすぐに見栄だって気付かれるが、いかんせんそんな密な付き合いはしていないのが今の大学の友達だ。
入学以来、中身は残念だが見た目はいい方、寧ろ自分では上の中くらいはあるだろ!という自負の下、彼女は欠かしたことがない森山は静かに息を吐いた。
最近、手作りとか食ってねぇなぁ…
今回の3ヶ月という数字は大学に入って以来新記録だと、コンビニ飯を片手に嘆息する。
彼女がいるうちは彼女が作ってくれていた。コンビニのご飯も不味くはないが、毎日ともなると流石に飽きがくる。自分で作れれば問題はないのだが、実は森山は料理ができなかったりする。かといって外食する金もない。
「はぁ…」
 夕方のコンビニは意外と人が少なく、森山はもう一度大きなため息をついた、と。
「…もりやま、さん?」
聞き慣れない声に名前を呼ばれて顔を上げると、見覚えのある顔。
「あ、やっぱり森山さんだ」
綺麗な黒髪にしても覚えがある、が、名前が出てこない。おかしいな、こんだけ綺麗な顔なら忘れるわけがないのだが。
思わぬ再会だったらしい相手を目の前に、森山は長考の姿勢に入った。が、相手も悟ったらしく。
「あれ?海常の森山さん、です、よね…?」
「そうだけど。ちょ、ちょっと待って思い出す…!」
高校時代の知り合い!
森山は不安になったらしい相手を手で制して海常にいたことを知る高校時代の知り合いを必死で洗う。
いる、絶対にいる。
「………カッとなってナイスカット」
「誠凛の5番!え、あれ?」
「どうも、誠凛高校バスケ部に所属していたPGの伊月です」
 ダジャレに反応して顔を上げれば、丁寧に自己紹介された。しまった。
「よく今ので俺って分かりましたね…」
「ああ…笠松が耳に残ったらしくて暫く愚痴ってたから…」
普通に会話を始めた伊月に森山は困惑した。
どういう状況なんだこれは?何故誠凛の伊月がここに、てかよく名前覚えてたな、近くに住んでるのか?
「森山さん」
「へっ?ああうん、なに?」
「まさかとは思いますけど、それ、今夜のご飯ですか?」
そう訊く伊月の視線の先には手に持っていた2つのコンビニ弁当。
「うん…今日の晩飯と明日の昼飯…」
「やっぱり……よかったら、ですけど、うちに来ません?下手くそですけどコンビニ弁当よりいいんじゃないかと」
「…いいのか?」
森山が確認すると、伊月はいい笑顔ではい、と返事をした。
「…じゃあ、行く」






あとがき
不意に面白そうだと思ったネタです



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