2014/07/30 10:14
【ハイキュー!!】甘味中毒【あかやち】
※ハイキュー!!のNL小説です。
※ハイキュー!!キャラの赤葦くんと谷地さん


背中に回された腕に力がこもった。

それでも彼女の力は自分よりもだいぶ劣っているらしく、背に添えられているようにしか感じない。

月だけが見下ろす暗い夜の中、手探りで小さな身体に回した腕はあまり力を込めてなどいないにも関わらず、その細くて柔らかい身体に自身が馴染むようにも感じられた。

久しぶりに恋人に触れる興奮からか、はたまた、こんな夜中に部屋を抜け出して逢い引き紛いのことに興じる緊張からか、どきどきと心臓が早鐘を打つ。
触れている小さな胸も、服ごしに俺の胸へといつもより少しだけ早い鼓動を伝えた。

もっと彼女を感じたい。

そう思って彼女の首筋に顔を埋めれば、彼女は小さく、俺の名を呼んだ。


「……苦しい…」


続けて呟かれた言葉に、わずかにだが、力を抜いた。

ぷは、と谷地は顔を離し、浅い呼吸を繰り返す。


「あ、ごめん…」
「………、」


相当苦しかったのか、荒いままの呼吸で彼女は横目で俺を一瞥し、整えていた呼吸を一度大きく吐き出して、向き直った。

怯えさせてしまっただろうか。

バレーをやっている身としては、標準よりも高いくらいでしかないが、182センチは普通はかなり高い。
高校生としては低い方に入る谷地からしたらかなり高い部類に入るだろう。

思わず後ずさると、彼女はふふっと笑った。


「……」


無言のまま小さくて柔らかな手のひらが俺の腕に沿って頬へと行きつく。そのなめらかで暖かな感触に心臓が跳ね、頬を寄せると月明かりで濡れた瞳が綻んだ。

小さく子どものような手のひらに誘われて、触れるだけのキスをする。

「…こう見えて結構強いんです、私」

いつもは自信なさげにすいませんを連呼する唇が、ふわりと微笑む。
だというのに、下がった眉が、谷地らしく優しい。

いつもは俺が支える側だというのに、彼女は。いつも、助けてあげたいという想いでいっぱいだと、いうのに。
らしくない。だけど、こんな彼女も、きっと谷地なのだ。

「………っ、」
「…ぇ、あ……っ」

あああああかあしさん!?と、焦った音で俺を呼ぶ声は、いつもの谷地で、でも、たまには甘えてしまってもいいだろうか。

彼女の後頭部に腕を回し、深く、深く口付けた。

「ん、…ふぅ……っ」


角度を変える度声が漏れ、しかし、それを追い詰めるように口付ける。

彼女の触り心地のいい髪に指を差し込み、その感触を楽しむ。
夜の月明かりに晒すとさらりと透けてるようにすら見え、光に輝く。


「は、ぁ……っ」


息継ぎの為に唇を離すが、大した間もあけずにまたキスをする。


ようやくのことで唇を離せば、力が抜けたかのように、彼女は俺の方に寄りかかった。

彼女を支えながら、ごめんな、と呟くと微かに重さが去り、顔を上げた気配。

「……?赤葦、さん…?」
「ごめん、……」

甘えたり、甘えられたり。
まるで、ハマったらやめられなくなる。
甘味のようだ。

「ごめん」

もう一度呟き、俺は恋人の小さな身体を抱き締めた。





(どうやらこの愛は止められそうにない)



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