2013/05/16 20:47
日向誕生日おめでとう

何をあげようか、ずっと考えていた。

伊月と日向は幼馴染みだ。
母親同士の仲がいいこともあって、幼稚園の頃からずっと一緒にいる。実は日向の初恋が伊月の姉だとかそんなことも知ってたりする。その時はぶん殴ってやろうかと思った。

でも、そんなに長い間一緒にいると、毎年の誕生日に何をあげればいいのかわからなくなる。

日向のことだから、戦国武将ものは制覇しているだろう。去年は姉妹に相談して助言を貰ったが、如何せん今年は関係が違う。

今年の伊月と日向は恋人同士なのだ。

恋人に何をあげればいい。
そんな質問を姉妹にしたところで参考にはならないだろう。女性が男性にあげるのとはわけが違う。

さぁどうしたものか。

やっぱり直接聞くのが一番か。

一週間後の同じ日に、赤い丸が着いている。




はぁ、と伊月はため息をつく。
今日はもう日向の誕生日だというのに、月曜に日向になにか欲しいものはないかと聞いたらいらないと返された。

曰く、伊月が欲しい

そんなこと言われても、伊月にはどうすることもできない。言ってしまえば日向はそういうことを望んでいるのだろうし、この大切な日をそんなことで祝ったとされるのはなんだか嫌だった。

だって、日向に出会うきっかけになった日だ。

たった1年でも、ずれていたとしたら、日向とこんな風になれなかったかもしれないのだ。

同じ年だから、わかりあい、遠慮なく喧嘩して、そして好きになった。だから、日向には最高のプレゼントをあげたいのに。

なのにままならない。

そんなことを思っているうちに、日向の家に通じる横路にさしかかり、日向がよぉ、と片手をあげる。
随分と眠そうなのは、大方、0時ぴったりにと考えて送られたメールたちのせいだろう。それでも嬉しいことには嬉しいからと律儀に待っていたのかもしれない。

「おはよう」

とそこは普通に返して、

「おめでたい用事を愛でたい」

キタコレ!と言ってやれば勢いよく頭を叩かれた。
痛い、これ拳じゃね!?と伊月は叩かれた頭を押さえる。日向のツッコミは年々乱暴になっていく。

「お前は普通に祝えんのか」

呆れたように日向がひらひらと手を振って、どうやら彼自身にも被害はあったようだ。
ざまぁみろと内心舌を出すが、

「…真っ先にメール来るかと思ったんだだが」

来なかったな、と日向の顔は伊月に背を向けていて見えない。
真っ先に祝われたいと思ったのだろうか。

「うん」

元より、真っ先に祝う気はなかった。そのことが少しだけ悪かったな、と思う。
それでも、

「日向、誕生日おめでとう」

直接言う方が大切だと思った。
真っ直ぐに日向の目を見て言いたかった。贈り物をさせてくれないのなら、それくらいさせろと。

「俺と出会ってくれてありがとう」

直接言いたかった。これは言わないと伝わらないだろうと口にすれば、日向の頬は赤く染まる。

おう、とまた日向は背を向けてしまって、顔は見えない。
でも、短い髪の隙間から見えている耳は微かに赤く染まっていて、伊月は思わず笑みを浮かべた。

そのまま照れ隠しなのか学校に向かいはじめてしまった日向の右手に、するりと自分の左手を滑り込ませる。

横目で伺ってきた日向に、今日だけね、と笑う。

大胆なことなんてできないけど、今日だけ。

彼と出会えた奇跡に、
想いが通じあった奇跡に、
彼らが産まれた奇跡に、
彼らをとりまく世界に、
感謝しよう。




早いものでもう1年ですね。
このサイトも一周年を迎えました。
去年、というより今年も、差し迫って一時間で日向誕を書くという暴挙。
まったく。

しかもひとつリクエスト放置っていう。
もうすぐできます。申し訳ありません

日向誕生日おめでとう



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