2013/04/06 03:12
笠月



付けていた唇をたっぷりと堪能して、ちゅん、と甘い水音を起てて放す。顔を離した伊月は覗き込むような体勢のまま、笠松の目を見つめて唇に薄い笑みを浮かべた。

くっ、と小さく笑い声が溢れた。

「笠松さんて、本当素敵ですよね。憧れます」

恋人の口づけを交わしたそのあとに、綺麗に笑う恋人がまるで本当に先輩を慕うようなことを言った。
聞き捨てならない。

「んだよ」

また何か考えてやがるのか、なんて太い眉を寄せれば、伊月はからからと愉しげに笑った。

「素直に、そうおもっただけですよ?笠松さんは、素敵な人です」

そういって、伊月は指を折りながら俺が素敵だと思う理由を挙げていく。実直で、誠実で、素直で。
そうやって挙げられるのは全て嘘っぱちだ。
実際の俺はそんなに出来た人間じゃない。

前に一度、森山にも言われたことがある。

俺は、全てが計算づくな人間なのだと。なまじ頭がいいから、無意識にそれを行っているのだと。

その自覚はある。
現に、今伊月がこうやって自分の元にいることでさえ、全て計算なのだから。

伊月が欲しい、自分のものにしたいと渇望したから。

「本当に。笠松さんてPGだとは思えない位素敵な人です」

そうやって笑うのは、確かに恋い焦がれる恋人の表情ではなく、どちらかというと憧れが強い。



憧れの人にリクエストいただきまして。
書いたはいいんですけどこれじゃない感凄くて、仕方ないので書き直すことにしました。
でも勿体無いので日記で晒す







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