2013/03/08 02:48
【桐皇伊月】独白
自分に価値を見いだせなかった。死んだらきっと、気づかれてしまう。だから、せめて泡のように、消えてしまいたい。あいつに俺は必要ない。このチームに俺は必要ない。俺がいなけりゃ、勝てたことだってきっとある。俺がいなけりゃ、木吉はコートに立てる。そんなとき、悪魔が、囁いた。「なぁ、居場所欲しいんやろ?」その人は俺の全てを理解したみたいに、飄々と笑った。うちなら、努力したぶんだけの成果がでる、と。うちなら、俺のために用意された場所がある、と。悪魔が俺に囁く。「考えてみてな」呆然としている俺の手に、その人は、小さな紙を握らせた。「最後にきめるんは君や」どうしようかと思った。正直、誠凛のみんなのことは好きだったから。でも…好きだからといって、俺が足を引っ張らないなんてことはできるだろうか?本当はみんな、俺を邪魔だと思っているのかもしれない。そんなことを考え始めると、止まらなくなった。苦しい。大好きなみんなだから、苦しいんだ。俺は無力だ。日向みたいに、みんなをひっぱていく力があるわけじゃない。木吉みたいに、自在にプレーを選べるわけじゃない。鏡みたいに、抜群の身体能力なんてもっていない。黒子みたいに、自分の弱点を生かしたプレイをしたって、できることなんて一握り、むしろ俺の場合、弱点なんて役に立たない。降旗でさえ、冷静に、ゆっくりとゲームを進めていくための要となることが できる。俺ができることなんて、イーグルアイを利用した、ゲームメイクぐらいしかない。イーグルスピアだって、実はかなり危うい。相手の優位から取ろうと思うと、それなりの腕力が必要になるから。…俺は、誠凛に何ができる?出来ることなんて、と思った。思ってしまった。俺じゃ、誠凛にいる資格なんて。俺が誠凛にいる理由なんて。みんながいる。ただそれだけで。みんなの力にはなれやしないんだ。それなら。それなら、敵に回ることで、誠凛の力になることもできるかもしれない。俺は、誠凛の力になりたい。そう、思った。思い立ったが吉日。手渡された小さな紙に書いてある文字の羅列。携帯を開くと、意味のなかったそれが、意味のある数字へと変わっていく。「ん。待っとったよ」数回の電子音のあと、悪魔がまた微笑んだ。さぁ、ここからは、みんなの為に生きる自分に。



私の中の桐皇伊月さんは、誠凛のみんなのためにと酔っている伊月さんです。実力がない自分がどう誠凛のみんなの力になれるか悩んでる伊月さんです。




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