※現代 隣の花は赤いと云うが、己のこれはあんまりではなかろうか。政宗は自らの捻ね繰れた性分を思い、憂鬱な気分に駆られた。 「あなたのそれは恋じゃないよ」 携帯に目を落としたままそう告げるみょうじの声は淡々としていて、酷く事務的であった。来週の授業、休講になったらしいよ。そんな言葉と並んで否定された己の感情は行き場を求めてぐるぐる廻る。 「随分手厳しいじゃねぇか、honey」 「私ははちみつじゃありません」 「Ahー、そう嫌そうな顔すんな」 可愛いお顔が台無しだぜ? 余裕そうな態度が気に触るものだからと軽口を叩いてみても、さらりと流される。かちかちとメールを作成するみょうじの脳裏を占めるのはきっと、あいつの事なのだろう。 目の前にいる自分よりも、メールをやりとりしている相手のことを考えているみょうじが気に食わなくて、ふんと鼻を鳴らした。 「俺に乗り換える気はねえのか」 「お生憎様、どこかの誰かさんとは違って一途だから」 「へェ、そりゃ何処の誰だろうな」 「政宗、あんたは」 言いかけて、言葉を切る。 携帯から離れた目は己を見、一瞬外したかと思えば、その視線は再び己に向けられた。遠慮がちに開かれた唇が紡ぐのは紛れもない真実。 「徳川くんを好きな私が好きなんでしょう」 残酷なまでに柔らかな声色が胸に落ちる。さくりと胸を抉られたというのに、その言葉は不思議と心地良かった。 120118 |