それは、唐突に。ソファに腰掛けた私の足元にしゃがみ込んだ上司は、私の脚を取ったかと思うと、てきぱきと靴を脱がせ始めた。
あれよあれよと靴下まで脱がせるその手際は大変鮮やかだ。彼は何事かと驚く私を気にした素振りも見せずに私の足を取り、その甲に口付けたかと思うと、そのまま舌を這わせ始めた。


ぴちゃりと濡れた舌の音が、私を現実に引き戻す。





「っアクタベさ、」

「動くな」

突然の彼の行動に抵抗しようとすれば鋭い視線と威圧感のある言葉が飛んでくる。足首を掴む手に込められた力とそのプレッシャーに耐えきれず、怖ず怖ずと力を抜けば満足したのか、口の端をくいと吊り上げた。

しかし、彼の機嫌が良くなったからといって、状況が好転することはない。



足首をぐいと高く上げたかと思うと足の裏を舌が滑り、擽ったさに身を捩る。また、親指が暖かいものに包まれたかと思えば優しく吸い上げられ、身悶える。私の思考はこの状況の処理に追いつかず、最早オーバーヒート寸前に追い込まれており。そんな私に出来るのは、捲れ上がったプリーツスカートを抑えることが精一杯だった。

そんな私の様子を愉しむように此方を見上げる視線にぞくぞくする。彼を見下ろしているのは自分の筈なのに、此方が跪いているような心地になるのは何故だろうか。

彼の突飛な行動を止めさせる度胸も拒絶の意を示す勇気も無い私に出来ることは、彼が満足するまでただ耐えるほかない。しかし。



「なに目ェ瞑ってんだ」

現実から逃げるようにきつく目を瞑れば、苛立ったような声が突き刺さる。



「目ェ開けろ」

「え、」

「ちゃんと見ろっつってんだよ」


怒気を孕んだ声色に恐る恐る目を開けると、鋭い視線に射竦められて。けれど、私に見せ付けるように脚へと舌を這わせる彼の姿を直視することは、酷く羞恥心を掻き立てられる。

ふくらはぎをなぞる舌はそのまま膝裏へとたどり着き、そこばかりを執拗に舐る。じわじわと与えられる刺激に下腹部がきゅんと疼く。足を支える手と反対側の手はやわやわと太腿を撫で、それは徐々に上へと流れてくる。




やんわりと私の手を退けた掌がスカートの中へ潜り込み、びくりと背筋を震わせる。それは流石に拙いだろう、そう思う私とは裏腹に、下着のクロッチを撫でる指先はひどく優しげで。もどかしい感覚に自然と腰が揺れてしまう。




「欲しいか?」


甘ったるい声で囁く彼の言葉を拒否することなど出来なくて。こくりと小さく頷いて見せれば、ちろりと朱い舌を覗かせた唇が三日月を描いた。


120209




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