□深淵 4/4 何もやることのない賢木は瞑想に耽る 日に日に大きくなっていく感情から、目を逸らしていたことに俺は薄々気付いていた コメリカの頃から他の奴とは違うかった皆本 俺の中で特別な感情が芽生えたのはいつだっただろう 俺とお前の関係は、なかなか良好だったはずだ 恋人同士とはいえないが、友人以上の・・・何か言葉に出来ないような絆があったと思う すべて俺の思い込みかもしれないが・・・ そんな関係を、俺の一言で壊してしまうには惜しかった お前の中での俺に対する評価が一変してしまうだろう お前には出来る限り嘘をつきたくないし、ありのままの自分を見てほしい でも、ひたむきで輝いているお前には、悪夢のようなあの夜のことを知ってほしくない あの夜の出来事は、俺と管理官の心の奥底にしまっておこう・・・―― 賢木は首を反らして白い天井を見つめた このまま意識を失ったら、現実に戻っているのだろうか それとも目を覚ますことなく死へと向かうのだろうか 薄れゆく意識の中で賢木は目を閉じた ← |