□深淵 3/4 モノクロになって見える皆本が、コーヒーを淹れている 皆本は出来上がったコーヒーを賢木のデスクに置いた 賢木が手を伸ばしたが、カップを掴むことが出来なかった ここじゃ俺は透明人間なのか・・・ 皆本はコーヒーを淹れ終わると、携帯を手に取り部屋から出て行ってしまった 部屋に残されたのは淹れたてのコーヒーと賢木だけだった あぁ・・・皆本のコーヒーが無性に飲みたい 俺好みの味にブレンドして、毎朝淹れてくれるコーヒーは格別だ この冷え切った身体を温めるには丁度いいだろう 賢木は自身の手とコーヒーとを交互に見遣る 透明人間ってのは寂しいもんだな 誰からも認識されないし 目の前にあるコーヒーも飲めやしない ・・・ここにいると、どんどんネガティブになるな 賢木はため息をつきながらソファに腰を下ろした ← → |