07

何、コノ履歴はナニ!?何事!?



 人生初!まともに男子テニス部のお二人と話したお昼。最後はうっかり柳君の琴線に触れてしまったのか、興味を持たれてしまった。後に悔やむから後悔と言うんですね。やっちまったよ……!
 そんな疲れしか溜まらないような昼食は終わり、直ぐにテストが始まった。
 いや、ホント今日が文系科目で助かったよ。


 英語は良かったけど、社会科目は物凄く面倒だった。
 何って、席がね。
 我が立海の特徴というか…、文理関係無く好きな科目を選択できるから、理系に日本史B選択・世界史B選択がいるし、文系にも地理選択がいるのだ。エスカレーターだから出来る芸当とも言える。好きな科目を選択できることはありがたいし、もう二年目だから慣れた事ではあるのだけれど席替えは面倒だなと思ってしまう。

 因みに私と早妃は日本史選択なのだが、真田君もそうらしい。偏見かもしれないけど、真田君って武士!って感じだな。騎士ではなく、あくまでもどこまでも武士。
 綾は世界史選択だけど、柳君もか。

 ……なんかまた目があったよう……な……。解りにくい。放って置こう。それに限る。
 日本史は得意科目なので30分もかからずに解答し終え、簡単な見直しだけして後は机に突っ伏していた。


 帰りのSTで課題を集めた。残るは挨拶のみ。早く私を眠らせて!
 朝と比べて随分と軽くなった荷物を抱えて、早々に教室からずらかろうと「さようなら」と同時に、ダッ!と飛び出しかけた私を、正確には私の腕を、ガッ!と掴んできたのは柳君でした。彼は瞬間移動を会得しているらしい。

「青海、一緒に帰らないか?」

 え?何この人?私を殺したいのかな?それとも、自分の寿命を減らしたいのかな?

 教室から、そして廊下から断末魔が聞こえてくる。予想出来ることとはいえ、ちょっと辛いものがあった。視線には力がある。
 彼は自分の人気っていうか、そういった行動がどのような騒ぎを引き起こすかもうちょっと考えたほうが良いと思うんだけれど。まぁ、いくら柳君でもそこまで全部考えていたら疲れちゃうか……。
 先生も若干引き気味だ。助けて〜!野村せんせ〜い!
 悲鳴と同時に襲ってくる、凄まじい視線。視線。視線。野村先生は、さっさと教室を出て行ってしまった。見捨てられた……。
 誰かここに布団で良いよ、良いから持ってきて下さい。今ならたった一歩譲れば、体育で使うマットでも良い。もう寝たいよ。全てを忘れて私は寝たい。私は柳君を通り越して、遥か彼方を見つめた。
 しかしながら、断末魔をあげながら視線ビームを送っているのは、九割九分までは柳君ファン(?)としよう。残り一分、否、一人は柳君に贈呈している。

 早妃だ。ギリギリしてるぞ。
 あれは捕食者の目だ。柳君の命を狙っている。
 綾はそんな早妃を取り押さえながら、哀れみの眼差しを寄越している。哀れんでないで助けて欲しいな。だけど、早妃を抑えてないと跳び蹴りとか普通にしそうだし、綾の判断は正しいのだと思う。
 未だに私の腕を掴んでいる柳君の手をやんわりと解いた。視線が痛いのだ。

「間に合ってるんで」

 この状況をなんとかしなくては。というか、いっそ柳君を気絶させてでも早く帰りたい。

「ふらついている。荷物持ちとして家まで送ろう」
「嫌です」
「なにもしないが」
「当たり前だよ。それに、なにもしない以上にまず家が分かるね。家族構成もある程度分かりそうだね。それに帰り道で質問責めにされるのが丸分かりだよ」
「…………」

 分かっちゃいたけど、否定して欲しかった……!情報収集が得意で武器、というのは聞きかじっていたのだけど、このこ、まんまやる気だったよ……!

「はぁ……。柳君は、電車通学?」
「そうだ」
「方向は?」
「西行きだが」
「私は東行き。逆だね。逆なら電車賃が余計にかかってしまう。それは私が嫌だな。だから、遠慮するよ。ただ、」
「ただ?」
「心配してくれたことはありがとう。嬉しいよ」

 柳君がうっ、と何故か言葉に詰まっているこの隙に綾と早妃に目配せして教室を出ようとした。早妃は自転車通学だから、頼めば駅まで荷物を持ってくれるだろうし。
 ずらかるぜ、野郎共!

 ガッ!

 ええ〜何このデジャヴ。
 また、腕を掴まれた。断末魔が激しくなってるよ。

「駅までなら」
「本当に勘弁して。必要ないです。綾と早妃と帰ります。さっきから絶賛蚊帳の外になってしまっている真田君と帰って下さい」
「………なら、携帯のアドレスと番号を教えてくれ」

 なんでじゃ。意味が分からんぞ!ここまで興味を持たれる義理もない!筋合いもないわ!

「それこそ、何で。私はもう帰るよ。知りたかったら、調べて下さいな。では!」

 再び柳君を振り解き、今度こそ綾と早妃と一緒に帰途についた。早妃は荷物を持ってくれました。でも、めっちゃ怒ってました。柳君に。

 何とか帰宅して、制服だけ脱いでハンガーに掛けた。
 そのまま下着姿でベットにたどり着いたその後の記憶はありません。
 目覚ましが鳴って、朝でした。

 お風呂に入って、洗濯して、学校の用意。今日もテストだ。
 鞄の中を整理していると、私用の携帯がピカピカ光っていた。昨日は帰宅後直ぐに気絶したから、悪いことしたな〜と思って携帯を開いたら。

 着信:20件
 メール:34件

 と出ていた。
 何、コノ履歴はナニ!?何事!?気持ち悪っ!!

 恐る恐るボタンを押すと、知らない番号からだった。
 ……全部一緒だし……。
 こ、怖い……。

 戦々恐々とメールを開いてみる。
 こっちもアドレス皆一緒だよ〜!
 ぎゃーとなっていた私は、しかし件名を見てポカンとした。

 件名:『柳だ』

 この人、マジで調べ上げちゃったよ……!
 34件全部同じ件名でした。
 でも、内容が微妙に違ってました。


 削除しても良いかなぁ……。
 駄目だろうなぁ……。


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