02

 あれから急いで学校に行く準備をした。
 持ち物とかは前もって用意してあったので(悲しいけど、こうなるって分かってたしね……)必要以上には慌てずに済んだ。
 朝ご飯は、ゼリーを食べる。
 入らないのだ。過度の睡眠不足と過労から、胃が受け付けなくなってしまっている。大層不健康なダイエット状態。長編の締め切り直前から直後はいつもこう。まさに命を削って書いている感じ。自業自得とも言えるけれど。


 実は2日寝ていない。だから睡眠不足と言えるのか……不足なんて言葉で(自分を)誤魔化せるか非常に微妙だが、とにかく、そんな状態だから足元がとても危うい。さっきから何度も壁にぶつかっている。熱もあると思うのだけど、計ってしまったら負ける。体温を数字で知覚した時点で、歩く気力が根こそぎ奪われる。
 コレ無事に高校着くかな……。洒落にならんな……。

 そんなことを考えながら、始業式ということも手伝って重い鞄を持ち玄関を出た。この鞄の重量は今の私には江戸時代の『石抱き』という拷問並みにきつい。並べられた三角形の木の上に座ってないだけマシか……。

「……いってきます」

 挨拶は大切だというのが信条なので、ほとんど死に掛けている声だが欠かさずに言う。両親は海外にいるので返事は返ってこないけど。


 今日は始業式の後、問答無用で国語・英語・社会科の実力テストが手ぐすねを引いて待っている。明日が社会科の残りと理系科目の数学と理科。社会科が2つなのは私が文系だからだ。理系は代わりに理科が2つ。

 荷物が本当に重い。春休みの課題もあるし……。

 課題といえば、春休みの長さ分かってますか!?って先生達に一度聞いてみたい。なんでこんなに課題が多いんだ……。練習がきつい部活だと、下手をすると終わらない量じゃないかな。いや、先生達はそこをちゃんと計算してるのかもしれない。ぎりぎりで出来る量。……考えるだけで嫌だな……。
 こちとら、部活は所属していないけれど、小説の〆切りを抱えていたので、本当に死ぬかと思ったよ……。終わらせましたよ、ちゃんとね。
 終わらせないと、課題が気になって気になって気になって、小説に集中出来ないのだよ。
 我ながらなんと小心者だろう……。しかし、私は小説家ではあるけれど、あくまで「学生」という身分。「学生」としてやらなきゃいけない事が出来ないのなら、学校を退学するべきだと思っているし、本当に無理になってきたら退学するつもりだ。学校側にもそう伝えてある。高校は義務教育ではないのだ。私立は学費も馬鹿にならない。



 案の定、危惧していた通りに、壁とか改札とかにガンガンぶつかりながら登校した。
 静止物にこれだけぶつかれば、動くもの――人間とかには、もう本当に申し訳ない位ぶつかった。ぶつかった瞬間は睨まれるのだが、私の惨状というか雰囲気というか……とにかく疲れきってます〜魂が半分以上抜けてます〜っていう女子高校生の顔を見た途端に、見なかったフリをされるか哀れみの眼差しをくれる。勿論謝ってますよ。さっき自転車に轢かれかけたし。流石に自動車にはぶつからなかったけれど。
 あんまり壁にぶつかってるから駅員さんに物凄い不審なモノを見る目で見られました。
 壁方向に重力が働いているに違いない。と思っておく。

 でも、それ以上に電車は戦でした。
 眠い。しかし、寝たら確実に病院行きだった。
 乗り過ごして終点まで行く。それならまだしも、終点で車掌さんに起こされても起きない自信がある。寝るっていうか、もはや気絶。意識がないと勘違いされて、救急車呼ばれる可能性が大だ。実は一回やらかした。
 起きたら病院でしたとか、吃驚する所じゃないよアレは。お医者さんは怒り狂うし。ネチネチって言うよりねっちょり?ぬっちょり?そんなお説教をされた。高校側にも迷惑をかけたし、しばらくの間、噂にも上ってしまったから二回目は本当に避けたいのだ。


 学校の最寄り駅から学校までの道のりも、さながら幽鬼のようだった。
 皆なんか遠巻きだし。うん、死にかかってるの自分でも分かってるよ。


 久方ぶりの校門を潜って、いざクラス分けの一覧表まで。


 高校二年生の一年が幕開く。


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