仕事を増やすなよ、と嘆いてみる

「おいテメェ・・・。金具が壊れてるぞ」


これは・・・またしても不覚。リヴァイ兵長に言われて、やっと帽子の金具が壊れていることに気付いた。今日はやたらとはずれやすいな、とは思ってたけど。いやむしろ、どうしてここまで気づかなかったのだろうか。


「やたらと頭を気にしてるとは思ったが・・・いつからだ?」

「あー、えっと、さっきです」

「あ?テメェにしては随分と粗い情報じゃねぇか」

「・・・気のせいです」


この際だから、多少のことは切り捨ててしまおう。昼寝のことがバレようと、あの訓練兵・・・ジャン・キルシュタインに見られたということだけは死守しなければ。幸い、このことについてはリヴァイ兵長はあまり言及する気がないようだ。・・・助かった。


「?・・・何でしょう」

「何でしょう、じゃねぇだろ。お前、何しに行ってたんだ」

「あ、忘れてた」


しまった声に出してしまった。慌てて口を押えるももう遅い。即座に飛んでくるリヴァイ兵長の拳骨。この人に拾われてから一体何度この拳を頭で受け止めた事か。頭突きで誰かに負ける気がしない。リヴァイ兵長以外には。


「いっ・・・・たぁぁ」

「立て。もう一発くらわせてやろうか?」

「いらないです」


相変わらずスパルタだ。そりゃあ、昼寝した私の自業自得なんだけど。今までこの失態を仕出かしたのは1度や2度ではないから、言わなくても伝わったようだ。昼寝をしていました、と。でもリヴァイ兵長がそのことに意識が向けば私の勝ちだろう。とりあえず、帽子がとれていた事がバレなければ、それでいい。


「すみませんでした」

「いい加減にしろ。テメェ、壁外で昼寝でもするつもりか」

「興奮状態にある時は流石に・・・」

「四六時中興奮状態にさせてやってもいいんだぞ」

「それは、リヴァイ兵長も大変なのでは」


興奮状態にある私の機嫌の悪さはリヴァイ兵長が一番知っているはずだ。壁外の私のコンディションとしてはその方が都合がいいからか、そのことについては特に注意されたことはないけれど。


「あぁそうだな。壁内で仲間に牙を剥かれちゃあ困る」

「さすがに牙は向きませんって、牙は」

「言葉の綾だ、バカ。暴言吐くなって意味だ」

「善処します」


ため息を吐いたリヴァイ兵長の手元を見ると、束ねている書類が来た時よりも増えている事の気づいた。先程言っていた資料のことだろうか。すごく気になる。


「ところで兵長、それなんでしょう」

「104期生の情報だ。ハンジが持ってた物は一つ古い情報だったからな」


ビンゴ。まとめられていたからそれ関連の情報だと思っていた。ジャンが104期生であればジャンのあらかたの特性は見えてくるはず。・・・もし、とんでもない兵だったらどうしよう。むやみに周りにバラされでもしたら、私は憲兵に引き渡され、調査兵団の上層部もタダじゃ済まない。上から了解を取ってるとは言え、調査兵団の大半でさえ知らないこの秘密が民衆の耳に入れば憲兵だって黙っていられないだろう。この秘密は、厳守する。そう、ジャン・キルシュタインを殺してでも。


自己中心的な神はいつだって正解を選ぶ


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