03


「なぁ、お前はどこの兵団に行きたい、とかいう希望はあるのか?」

「別に、あなたには関係ないじゃない」

まぁそれはそうなんだがな。なんて、優しい口調で話しかけてくるライナーは嫌にならないのだろうか、こんな私に。どれだけ彼が私に優しくしようが、私は彼と仲良くするつもりなんてない。彼だけじゃなくて、だれとも仲良くする気なんてないけど。

「まだ決めてないなら、ゆっくり決めるといいさ」

「言われなくても、そうするつもりだから」

ライナーは私がどれだけ鋭い言葉を投げつけても、変わらず話しかけてくれる。最初は嫌がらせを受けている私への同情かと思ったけれど、どこか違うようだ。どちらかというと、世話の焼ける妹を世話するような、兄みたい。だけど私には、そんなのいらない。適当に話を受け流していると、急にライナーが手を掴んだ。驚いて見上げれば、真剣な瞳とかち合う。

「なぁ、お前はどうしてそんなに人を嫌うんだ」

「さぁ、なんでだろう」

嫌い?嫌いだなんて、いつ言ったんだ。あぁ、私の態度はそういう風にしか見えないか。別に私は、人が嫌いなわけではないけど。

「お前、辛くはないのか」

「何が、」

「こうやって過ごしていることだ」

「、意味分からない」

「誤魔化すな。毎日のように嫌がらせを受けることは、お前にとって辛いことなんじゃないかと聞いているんだ」

誤魔化してなど、いない。それが私の答えの全てだ。分からない、私には何もわからない。昔からそうだ。何をどうすればいいのか、どう行動したらいいのか、何一つ。

「辛いって言ったら、どうなるの?」

「そりゃあ、」

「ライナーが助けてくれるの?本当に?私を、どうにかしてくれるの?」

ライナーが目に見えて言葉に詰まった。どう返答していいのか分からない、そんな表情。当たり前だ、返答できないような言葉を投げかけてやったのだから。

「その、何か気に障ることを言ったのなら、悪かった」

「別に、怒ってるわけじゃない」

「そうか・・・」

ほら、彼も席を立って私の元から離れていく。遠目に見えるジャンはこちらをただ睨みつけている。ライナーは彼の友達の1人だから、気に食わなかったのかな。ごめんなさい、あなたから友達を奪ったりしないから、そんなに睨まないでよ。

「どうして、か」

この生活が、辛いと思ったことはない。だって、私が仕掛けたことだ。嫌がらせなんて想定していなかったけど、人を拒絶することで、何かが見えるかもしれないと思った。最初から全て拒絶していれば、もう傷つくことも、ない。だって、仕方がないことなんだから。友達なんて作らない方がいい。だって、作ってしまったら、失うだけだ。だから何も躊躇なんかしなかった。あんな思い、二度としたくない。

だから私は、全てを拒絶した。


簡単よ、汚くなるなんて