「なぁロゼッタ、ここ座れよ」
「冗談言わないで」
つれないな、なんて言いながら頬杖をつくエレンを一睨み。誰がそんな所・・・そんな・・・エレンの膝の上なんて座れるものか。
「いいじゃねぇか、減るもんじゃあるまいし」
「確実に何かが減るの。何かが」
手にしていた本のページを捲りながらため息を吐く。エレンはどうしていつもこうなんだろう。休日なのだから他の友達と一緒に遊びに出かければいいのに。恋人とは言っても読書が趣味な女と一日中話してるだけなんて、彼からしたらつまらないことこの上なんだろう。あぁでも彼の幼馴染のアルミンも本は好きなんだよね。それでもアルミンは物知りだ。私とはわけが違う。
「・・・ったく、私と居て何が楽しいのよ」
チラリと、隣でこちらをじっと見据えるエレンをチラリと見る。私の質問にエレンは不思議そうに首をかしげた。
「楽しくなかったら付き合ったりしないだろ?」
「それは・・・!そうだけど・・・」
「なんだよロゼッタ。俺といるの・・・楽しくないのか?」
「べ・・・別に。フツ―」
あ、また思ってもいないことを。落ち込んでしまうかもしれない。そう思って咄嗟に彼を見てみたけれど、そこには想像していたエレンの表情はなかった。あれ、どうして笑ってるの?
「ロゼッタ、そんなこと言いながら顔真っ赤だぞ」
「・・・は、」
バチン!慌てて自分の両頬を両手で押さえた。嘘、嘘嘘嘘。エレンに指摘された通り、そこは普段よりもずっと熱かった。何これ、恥ずかしい!
「お前、嘘つくといつも真っ赤になるよな」
可愛い。明るい声でそう言いながら私の腰を引き寄せる。慌てて抵抗したけれど、やっぱり男の子には勝てなくて。彼のお望みの場所に落ち着くとエレンは私の背中に顔をうずめて、また「可愛い」と言った。恥ずかしくて言葉も出ない。ずっとそうだったなんて。どこが可愛いのよ、こんな女。思ってることも素直に言えなくて、嫌なことばっかり言ってしまう私なんて。本当はエレンとずっと一緒に居れて嬉しいの。傍に居るだけで幸せ。膝の上に乗ったりして思い切り甘えたい。そんなことも言えない私に、どうした可愛いって言ってくれるの。
「やだ、エレンのバカ」
「お前のそういう所、最高に可愛い」
顔に集まってくる熱を逃がせない。恥ずかしくて顔を両手で覆ったら、後ろからエレンがその手を解いた。やだやだ、見ないで。必死に顔を隠そうとする私の顎を掴んで、そのまま唇を合わせてくるものだから息をするタイミングも失ってしまった。近くで見るエレンの顔が、ヤケにカッコいい。
「・・・す、き」
吐息混じりで呟いた声だったけど、彼にはしっかりと聞こえていた。途端に真っ赤に染まる彼の頬に手を添えて、思い切って唇を奪ってみる。やっぱり恥ずかしい。勢いよく顔をそらした私の肩に、エレンが顔を埋めた。ひどく籠った声だったけど、「俺も」なんてエレンらしくない弱々しい声が聞こえて、それが少しおかしくて笑った。
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