企画部屋 | ナノ



「おい、ロゼッタ」

「・・・ごめんなさい、ライナー」


目の前で起きていることを説明してくれる人がいるならば今すぐにでも来てほしい。こんな真夜中に、違和感を感じて目を開いてみれば、目の前には涙目の恋人がいた。おかげで眠気は一気に吹っ飛んでしまった。


「お前、ここは男子寮だぞ」

「分かってる、分かってるの、だけどね」


困ったように目を向けてみれば、ロゼッタは慌てて説明しようと言葉を紡ぐ。チグハグで何を言っているのか最初は理解できなかったが、「雷が」だの「眠れなくて」だのを何度も繰り返している所を見ると、雷が怖くてこちらに来たのだと予測することは容易い。


「しかし、何故わざわざこっちまで来たんだ」


女子寮にだってミカサやサシャがいただろうに。隣にいるベルトルトを起こさないよう、小声で聞いてみたが、ロゼッタはその問いには答えない。ただただ自分のシャツを握って顔をうずめるロゼッタにため息をつくと、彼女の細い肩がピクリと動いた。


「ごめん、ごめんなさい」


どうしたものか。別にライナーはロゼッタを責めるつもりはない・・・むしろ、違う場所であれば歓迎していたであろう。しかしここは男子寮。通常なら、ロゼッタが入ってはいけない場所なのだ。他の奴らが気付いて、騒いで、教官にバレてしまえば罰を受けるのは間違いなくロゼッタだ。


「ひッ、」


一段と鳴った轟音に、布団にもぐりこんでいたロゼッタは小さな悲鳴を上げた。どうにかしてロゼッタを女子寮に返さなければ、と黙々と策を練っていたライナーは、かたく目を瞑って恐怖に耐えているロゼッタに、罪悪感を覚えた。


「お、ねがい、お願い、ライナー、今夜だけで、いいから」


バレたら、私が全部責任負うから。弱々しい声でそうライナーに言ったロゼッタの肩は小さく震えている。


「そんなに、雷が怖いか」

「怖い、怖い、すっごく怖い。だから、ライナーと一緒にいたいの。お願い」


ライナーの胸の部分をひたすらに握っていた手は、ゆっくりと背中に回された。こんな可愛いお願いをされて、揺るがない男がどこにいるというのだ。・・・そういえば、待て。ライナーは未だに震えているロゼッタをジッと見つめた。

彼女は普段から大人しく、我儘ひとつ言わずに何事も一生懸命こなしてきた。そんな彼女が、ライナーにハッキリとお願いをしたことは今までに何度あった?いや、今日が初めてだ。初めて、ロゼッタがライナーに甘えてきたのだと思うと、どうにかして離そうと考えていたライナーも、何も言えなくなる。


「一緒に、寝るだけでいいのか」

「うん、一緒に居てほしい」


先ほどよりも、はっきりと言った彼女の背中に腕を回す。いつもより小さく感じる彼女の身体はライナーとくっついているせいか、温かかった。数分もしない内に眠りについてしまったロゼッタを抱き寄せて、額に唇を落とす。


「・・・ん」

「お前が、頼ってくれると言うなら」


出来る限り、何でもしてやりたい。そう思うことの出来る相手がいる幸せは、いつまで続くだろうか。せめて、彼女の幸せが続くまで、そうあればいいと。




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