企画部屋 | ナノ



※天音様のサイトの長編とコラボ。逆トリップ。もし少女よ〜の夢主がトリップしたら。


「・・・、」

何がなんだか分からない。私はさっきまで、訓練所付近の森にいたはずだ。昨日から帰ってこないユミルとクリスタが、もしかしたらこの森で迷ってるのではないかと皆で探していたはずだ。もしかして夢を見ているのだろうか?でもどうしてこんな時に・・・。ユミルとクリスタも心配だし、あぁもう、どうすれば醒めるんだ、この夢は。

「、は?」

とりあえず立ち上がろうとすれば、妙な感覚。慌てて下を見れば、弾力のある・・・多分、ベッド。私の部屋?いや、ベッドはこんなに柔らかくないし、部屋もこんなんじゃなかった。何ここ、どこかの貴族の家だろうか。変わった部屋だなぁ。

「ここから音がしたの?」
「確かにここだ」
「でもこの部屋は私の寝室・・・え?」

一瞬目を疑った。見たこともないようなきれいなドアがゆっくりと開かれて、そこに立っていたのは知らない女の子と、ユミルとクリスタだった。あまりにも2人を心配しすぎて、こんな夢を見てるのだろうか。いや、でもこの女の子は一体・・・。驚いているのは向こうも同じようで、2人の後ろからついてきた様子のクリスタは、私を見るなり突進する勢いで抱き着いてきた。

「あ、あぁ、ロゼッタ、会いたかったあああ!」
「・・・う、え、なに、え?クリスタ?」

もう、どこから突っ込んでいいのか分からない。クリスタが突進してきたときに生じた腹部の痛みは、これが、現実だといいたいのだろうか。ユミルと女の子はただただこちらを驚いた様子で凝視している。もしかして、この女の子は貴族で、私たちをどうにか拉致してきたのかもしれない。どんな目的で私たちを攫ったのかは分からないけど、何者か分からない以上、警戒しなければ。

「・・・また増えてる」
「な、何なのあなた!ユミルとクリスタを返して!」

キッと睨みつけるように言えば、困ったように眉を顰める女の子。あれ、なんだか私が悪いみたいじゃないか。えっと、どうすればいいんだろう。ここは、得意じゃないけど対人格闘術を駆使して・・・。

「待ってロゼッタ、この子、悪い子じゃないの!」
「驚いたな、ロゼッタ。お前までこっちに来るなんて」
「・・・こっちって、何の話?」


ユミル達から話を聞く限り、ここは異世界らしい。巨人がいなくて、お肉や野菜が普通に食べられるなんて、信じられないことだけど目の前の美味しそうな焼き菓子とやらを見る限り、本当の話なのだろう。貴族といえど、こんなもの当たり前に食べられるものじゃない。

「あの、さっきは、ごめんなさい。てっきり、攫われたのかと・・・」
「いや、まぁ、勘違いしても仕方ないと思うよ。なんで私の家なのかは分からないけど」

とはいえ、逆にこの家で助かったと思う。この子にとっては迷惑な話かもしれないけど、ユミルやクリスタと会えてよかった。

「あの、私藍織って言うんだけど・・・。あなたは?」
「あ、私はロゼッタ、といいます」
「そんなに畏まらなくていいよ。よろしく」

お菓子に奪われていた目線を慌てて女の子に向ければ、彼女は優しい目を向けて名前を教えてくれた。あぁ、ユミルとクリスタという前例があるから、そこまで私が出現したことに驚いていないのかもしれない。

「そのお菓子、遠慮なく食べていいんだよ」
「でも、こんな高級なお菓子・・・」
「ここではそうでもないから大丈夫だよ」

先ほどから遠慮など知らなさそうにパクパクと口に放り込んでいるユミルのようにガッつくわけには行かない。だけど、1度食べてみたかったんだよね、このお菓子。おずおずと1枚手に取って、一口齧る。途端に口に広がる、優しい甘さ。

「何、これ、すごく美味しい・・・!」
「そう?喜んでくれてよかった」

思わず手が止まらなくなる。これで最後にしよう、最後にしよう。でもあともう1枚食べちゃおう。こんなに美味しいものがあるなんて、知らなかった。サシャとか、きっと喜ぶだろうなぁ・・・。

「・・・あ、」
「ん?どうしたロゼッタ」
「もう、皆に会えなくなるのかな」
「・・・さぁな」

不意に出た言葉に、ユミルとクリスタの顔が強張った。だって、ここが異世界ならば、元の世界に帰ることが出来るなんで保証はない。この世界は巨人もいないから、壁もない。それに、海だってあるとアイリは言っていた。元の世界と比べたら、すごく美しくて平和な世界。だけど、あの世界には、皆がいて・・・。

「ロゼッタ、私たちもいるから・・・」

クリスタが慰めてくれるけど、やっぱり不安がぬぐえない。私は今から、どうすればいいんだろう。顔を俯かせると、机の上にあった私の手をアイリがとった。何事かと顔を上げれば、泣きそうな私に微笑みかけてくれているアイリ。

「じゃあ、ロゼッタもここにいる間は一緒に暮らそうよ」
「え・・・。そんな、いいの?」
「大丈夫だよ、1人増えたところで変わらないから」

犬みたいに言うなよ、なんてユミルが言うから、思わず吹き出してしまった。クリスタも笑っていて、元の世界ではあったようで無かった光景。それが手に入る世界。不思議な世界だけど、2人もいるし、アイリもこう言ってくれている。その言葉に甘えても、いいのだろうか。いや、この世界では私は生きていけない。だから、頼るしかできないけど、それでもいいと言ってくれるのなら。

「あの、じゃあ、これからよろしくね、アイリ」

アイリは少しだけ驚いた顔をしたけど、すぐに元に戻った。私が差し出した手に重ねられる暖かい手。あぁ、やっぱり現実だ。

「よろしく、ロゼッタ」





天音様、大変お待たせしました・・・!
淡夢と少女よ〜のコラボ、如何でしょうか。
コラボ物は初めてだったので書けるか心配だったのですが、どうにかまとまって一安心ですー(;´Д`)。
ご期待に添えるような作品になったかは分かりませんが、楽しんでいただけたら幸いです。
私も藍織ちゃんの家にお邪魔になりたいです。

素敵なリクエストをありがとうございました!




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テーマ「人外ファンタジー」
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