企画部屋 | ナノ



「わぁ、ベルトルトの手、大きいね!」
「背が、高いからね」

最近、双子の妹がベルトルトにベッタリだ。ベルトルトも満更ではないようで、ロゼッタが駆け寄ってくる度に若干僕の方を見るのを知っている。いいだろうと言わんばかりのその視線に、思わず隣にいたジャンの腕を抓った。

「なっにすんだよ、いてぇよ!・・・って、うわぁ!」

あまりの痛さに驚いたジャンは間抜けなことに持っていたカップを落とした。まだ中身が残っていたらしく、慌てている様子は分かるが、マルコはジャンの方を一瞬たりとも見ようとしない。視線の先には、まだベタベタしているあの2人。

「ロゼッタ、ここ、ついてるよ」
「え?あ、ありがとう」

元々人懐こい性格であるロゼッタだったが、これはあんまりなんじゃないか?ベルトルトの勝ち誇ったような視線が癪に障る。なんで、よりにもよってベルトルトなんだ。もっと他にもいただろうに。たとえば・・・、ジャンとか。

「あ?ロゼッタとベルトルト、またやってんのか」

ジャンの一言に、思わずジャンの足を踏み潰してしまいそうになった。また?また?最近度が増してるなとは思ってたけど、また?いつもやってるの?あれ。

「ロゼッタ、この後の約束忘れてねぇだろうなぁ」

ボソッと呟いたジャンの方に、勢いよく振り返った。突然こちらを向いたマルコに驚いたジャンではあったが、そこはさすがにマルコと付き合いも長いだけあって、何に反応したかすぐに理解した。

「お前、相変わらずシスコンだな。ロゼッタも困ってたぞ」

ピクリ、顔が引きつった。まさか、ロゼッタ、ジャンともあんなことを・・・?2人で行動することも多いのに、全く気付かなかった。もしかして、ジャンもロゼッタのことが・・・?なんなんだ、この男共。お願いだから、もう少しマシな男を選んでくれ。

「なぁ、ジャン・・・。その、約束って、」
「ジャン!お待たせ!」

噂をすれば、と言うやつだろうか。後ろから聞こえてきた声に、いち早く反応したのは呼ばれたジャンではなく、マルコだった。そんなマルコに気付いているのかいないのか、構うことなくロゼッタは座っているジャンの後ろから抱きついた。頼むからやめてくれ、そんなことベルトルトにもしてなかったじゃないか。

「あー、ちょっと待て。まだ食い終ってねぇんだよ」
「うん、待ってる!」

何度か話している所は見た事があるけど、こんなに仲がよかったか?2人は。目の前の光景についていけないマルコは、先ほどロゼッタと一緒にいたベルトルトに目を向けた。そこには先ほどまでのいきいきとしたベルトルトの姿は無かった。例えるなら、そう。死んだ魚のような目をしている。

「ジャン、これ食べたい」
「あ?仕方ねぇな」

また2人へと視線を戻したマルコは、とんでもない光景を目撃した。それは、恋人同士がするようなことだろう。ジャンが使っていたはずのフォークに刺してあったイモをパクリと一口。慣れた様子の2人に、机をひっくり返してしまいそうになる。そんなことをしたらロゼッタにまで被害が行くからしないけど。とにかく、兄としてロゼッタにそれとなく注意しなければ。

「あの、さぁ。ロゼッタ」
「ん?どうしたの?お兄ちゃん」

マルコの言葉を促すように目だけをこちらに向けてくるロゼッタ。あぁもう、頭が痛い。

「皆と仲がいいのはいいことだけど、その、男とそういうことをするのは、付き合ってからがいいんじゃないかな」

マルコが言い終わった途端、ジャンがむせた。そんなジャンの背中を擦りながら、ロゼッタは不思議そうにマルコに顔を向けた。

「それなら、いいじゃない」
「え?」
「恋人なら、してもいいんでしょ?」

あっけらかんと答えるロゼッタに、むせたのはマルコだ。まさか・・・。ジャンの方に目を向ければ、ダラダラと汗を流してここから立ち去ろうと腰を上げている所だった。それにロゼッタも気が付いて、ジャンの後を追おうとする。待て、話はまだ終わってないぞ。

「まさか、ジャン、言ってなかったのかな?少し前にね、付き合い始めたんだよ」

微かに残っていた希望は、ロゼッタの一言によって脆くも崩れ去った。恐れていたことが、起こってしまった。入り口付近でロゼッタがジャンの腕に抱き着くのを見て、自分の顔が引きつったのが分かった。ジャン、後で覚悟しろよ。あまりにも苛立ったので、すぐ近くを通りがかったベルトルトの脛を思い切り蹴り上げた。




マルコ双子妹でしたー!人懐こい子って、可愛いと思うんです。
恋人だけど、性格を知っているから度が過ぎていなければあまり注意はしないジャン。
なんだか、マルコが誰これ状態に・・・。
ベルトルトさん書くのすごく楽しい。

くま。様、素敵なリクエストをありがとうございました^^




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