企画部屋 | ナノ




「なぁ、ロゼッタ。ミカサ先輩の好きな物教えてくれよ」

ガラになく頬を染めながら聞いてくる男を、内心気持ち悪いと思いながら適当にあしらう。
最初こそはちゃんと答えていたけど、もう何度目にもなるこの質問はもう聞きたくもない。

「お姉ちゃんは、あんたたちみたいなタイプは嫌いだと思う」

腹が立ってそう言い返せば姉に比べてお前は可愛くないな、と非難の声を浴びることになる。
何度も繰り返されてきたやりとりだけど、いい加減嫌になってしまう。

「ロゼッタのお姉さん、本当に人気だよね」
「別に、珍しい顔立ちってだけじゃない。何がいいのか分からない」

ついそんなことを言ってしまうけど、本音は違う。
姉はすごく綺麗だと思う。顔だけじゃなくて、艶やかな黒髪はきっとどこに居ても目を惹く。
106期生にもこれだけ人気があるのだから、姉は同期の間でも人気があるかもしれない。
いや、事実姉に好意をもっている人を知っている。

「あれ、ロゼッタどこに行くの?」
「ちょっとね」

隣にいた友人に一言声をかけて食堂から出ていく。向かった先は、あの人がいるところ。

「こんにちは、ジャン先輩」
「おう、ロゼッタ。訓練はどうしたんだよ」

昼寝をしていたらしいジャンはロゼッタの声に目を開けたが、隣に座ってきたロゼッタを特に煩わしいと思うことなく迎い入れた。
元はと言えばこの場所はロゼッタが気に入ってた場所なのだが、
ある日を境にジャンがこの場所を見つけてしまい、結果的に2人の昼寝場所になっていたのだ。

「午後からはないんです。先輩たちもですよね?」
「まぁな、午前は立体機動だったからもうクタクタだ」

気だるそうに起き上がるジャンと目が合って、ドクリと胸が高まった。
少し前から抱き始めたこの感情を打ち明けてしまいたいけど、私にはできそうもない。だって。

「聞いてくれよ、ロゼッタ。ミカサがな、」

嬉しそうに姉のことを話し始めた彼は、姉に一目ぼれしたんだそうだ。
だからこそかもしれないが、私がミカサの妹だと知った時の彼のリアクションはすごかった。
全然似ていないのだから、仕方ないんだけど。

楽しそうに話している彼の機嫌を損ねたくなくて、一生懸命話を聞く。
彼がそんなことで人を嫌うとは思えないけど、私は楽しそうに話をしている彼が好きなのだ。

彼の気持ちが私に向かうことはないと知っているけど、この空間にいる間だけは私をちゃんと目に写してくれる。
この時間はいつの間にか私の中で大きなものになっていた。


「おっと、俺はこれから用事があるんだった」
「そうなんですか。私はしばらくここにいます」
「そうか。暗くならない内に戻れよ」

頭をグシャリと撫でる彼は、きっと私のことを妹のようにしか思っていないんだろう。
私が姉のように綺麗な黒髪を持っていたら、少しくらいは意識してくれたのだろうか。
答えは多分ノー。彼が姉を思い続けているのは、一目ぼれだけが理由じゃないと知っている。

だからこそ辛い。こんな醜い感情を持った私のことなんて、きっと彼は好きになってくれない。
勝ち目なんてない。その事実がロゼッタの胸を締め付けた。

好きになってしまったけど、もう既に彼が私を好きになってくれるかもしれない、なんていう期待をするのはやめた。

だって、彼は104期生だ。もうすぐ卒業してしまうだろう。
そうすれば成績のいい彼はきっと憲兵団に行ってしまう。もう、会えない。


だから、このほんの数分の間、彼と話せるだけでも幸せなのだ。
彼が最後にここに来るまで、私は笑顔でいられるだろうか。






かず様、大変お待たせいたしました!
ジャン夢でミカサ妹です。

外見はミカサにまったく似てないけど、中身は多少にてるんじゃないかな〜
と思いながら書いてみました。
特に指定がないようでしたので、勝手にシリアス調にしてみたり(;´Д`)

リクエストありがとうございました!







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