企画部屋 | ナノ





「・・・わりぃな・・・せっかくの休日に」
「仕方ないよ。他に看病できる人がいないんだもん」

昨晩熱が出たことはロゼッタには言うなと言ったのに、どうやらライナーが言ってしまったようだ。

「だから昨日、元気なかったんだね」
「気づいてたのか・・・」
「まぁね。でも、熱が出てたなんて気づかなかった」

ごめん、と申し訳なさそうに謝られるけど、こっちは必死に隠してたのだから、逆にバレては困る。
せっかくの休日なのだから、ロゼッタに余計な心配をさせたくなかったのだ。
・・・そういえば、

「お前、今日ミーナ達と出かけるんじゃなかったのか?」

ジャンの問いにロゼッタは少し考えた後、ポリポリと微かに赤く染まった頬を掻きながら口を開いた。

「だって、ジャンが熱出したなんて聞いたら遊んでなんていられないし・・・」
「・・・すまねぇ」
「いや、謝らないでよ!私が勝手に決めたことだから!」

それに、ジャンには看病してもらった恩があるし。と照れたように言うロゼッタを見て思いだした。
あぁ、懐かしいな。

「あの時、ロゼッタが寝ぼけて口滑らせたよな」
「ちょっとやめて、恥ずかしいから思いださないで!」

掘り起こしたのはロゼッタだろ、と言うと反論できないようで赤くなってる頬を掌で包んだ。

「次の日朝食当番で朝早かったのに、夜中お前の傍に居てやったんだぜ。約束通りな」
「え、やっぱりあの時ずっといたの?寝顔見た?恥ずかしい・・・」
「あぁ、お前の間抜け面を眠い中眺めることになった」
「ちょっと、間抜けっていいすぎでしょ」
「涎垂らして寝てる姿を間抜け以外の言葉でどう表現したらいいんだ」
「・・・」

悔しげにこちらを睨みつけてくるロゼッタも可愛いと思ってしまうのは熱のせいだろうか。
いや、多分正常でもそう思ってただろう。
きっと周りからバカップルとか言われるだろうが、可愛いものは可愛い。

「傍に居てとは言ったけど、別に寝ればよかったじゃない!」
「お前、告白みたいなことをされた後で、その本人の近くで寝れるのか?」
「それは・・・無理」

実際気になって眠れなかった。
そのせいで料理の手順を間違えて、マルコに軽く注意された。

「おまけにお前がその事を覚えてなかったからな。新手の嫌がらせかと思ったぜ」
「い、いや、あれはホントにごめんなさい・・・」

好きな女に期待してしまうようなことを言われて、それを気にしないやつがこの世界のどこにいるというのだ。
気になって気になって仕方なかったというのに、当の本人はすっかり忘れ去っていたという。
付き合い始めた後に聞いた話だが、それなりに虚しくなったのを覚えてる。

「でも、私が告白しようとしたときのジャン、酷かったよ」
「あ?・・・あー、あれか」
「あれか、じゃないよ!人を軽い人間みたいに言うなんて」
「俺なりの照れ隠しだったんだよ!お前が俺を好きなんて、勘違いだったら恥ずかしいだろ!気付け!」
「そんなの誰も気づかないに決まってる!その照れ隠しで私がどれだけ傷ついたと・・・」

およおよ、と泣きまねをして顔を覆うロゼッタを面倒そうに見やる。
まぁ、確かにあれは言い過ぎたと自分でも思うが・・・。

「まぁ、過去のことはいいじゃねぇか」

泣きまねをしていたロゼッタが「は?」と言いたげな表情でこちらを見た。
仮にも病人に蔑むような視線を向けるなと言いたい。

「過去のことはどうでもいいと?」
「別にないがしろにしろって言ってるわけじゃねぇよ」
「・・・というと?」
「だから、今は俺とロゼッタは恋人同士だ。過去に何があったからと言ってこの事実が変わることはないだろ?」

してやったりな表情で見てやるとロゼッタは先ほどとは打って変わってぽかんとした顔でジャンを見ていた。

「確かに、そうかもね。なんかくすぐったいなぁ」
「意味わかんねぇよ」
「いや、だって。そんなに前のことじゃないけど未だに信じられなくて」
「付き合ってることが・・・か?」

ジャンの問いにロゼッタを大きく頷いた。
まぁ正直、ロゼッタのことを好きになるとも思ってなかった。ましてや、こんな関係になるなんて。

「うん。今を大事にするのはいいことだけど、たまにはこういうのもいいんじゃないかな」
「こういうことって、過去を掘り返すことか?」
「何か言い方が嫌だけど・・・2人で思い出を語ること、とか」

はにかんでそんなことを言うものだから、こっちまで照れてしまいそうになる。
こういう表情の時、妙に可愛らしくなるから困る。

「まぁ、そうかもな」

でもそんなロゼッタの表情が見れるんなら、恥ずかしい昔話をするのも悪くないな。



櫻井舞香様のリクエスト、長編番外でした!
お任せと言うことでしたので、勝手にジャンと夢主に思い出を語ってもらいました!
番外編ですと2人ともデレることデレること・・・
ジャンは夢主の表情を見逃しません。夢主は百面相。

櫻井舞香様、リクエストありがとうございました!




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テーマ「人外ファンタジー」
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