企画部屋 | ナノ





心地よい風が吹いて、頭上の木の枝とロゼッタの髪を揺らす。
本を読むのにちょうどいい加減の木漏れ日が暖かくて、気を抜けば眠たくなってしまいそうだ。

「ロゼッタ」

すぐ隣で自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。
だけど本を読む作業を止めたくなくて、「んー?」と気のない返事しかできない。
どうやら声の主はそれが不満だったようで、本から視線を外さない私の顎を掴んで違う方向を向かせた。

「ちょっと、ジャン。何するの?続きが気になるんだけど」
「久しぶりの休日だろ」

視線を合わせた先のジャンは、不機嫌そうに眉をしかめている。

「いつも話しくらいしてるじゃない。本は休日じゃないと読めないの」

我ながら冷たい態度を取ってると思う。だけど別にこれは本音じゃない。
いや、半分本音じゃない、と言った方が正しいか。
ジャンが望むのなら今すぐに本を読むのをやめたっていいけど、
どうにか私の気を惹こうとしてるジャンが面白くて、ついつい意地悪してしまうのだ。

「なぁ、ロゼッタ」

本に目を戻した私に、今度は髪をいじり始めた。
ジャン側に垂らしてある明るい色の髪が、好き勝手に弄ばれる。
たまに首に当たる手がくすぐったくてクスクス笑うと、気を良くしたらしいジャンが少し距離を縮めた。
元から近かったというのに、より一層近くなっては本に集中できそうにない。
仕方ない、と本を閉じて横に置く。その動作に髪を弄んでいたジャンが反応した。

「そんなに近寄られると、本も読めないんだけど」
「なんでだ?」
「なんでって、それはジャンが・・・」

そこまで言ってハッとした。ここで「ジャンが近くて意識しちゃって集中できません」だなんて言えば、調子にのるのは目に見えてる。
ジャンがニヤニヤとしているのを見て気づいた。つくづく気が抜けない。

「それは俺が?」
「、もう、ジャンなんか知らない」

私の顔を覗き込んでいるジャンは、きっと考えてることも確信しているのだろう。
知っていて言わせようとしているのだから、性質が悪い。
カッと熱くなった頬を見られたくなくて、顔を逸らすと不意にお腹に腕が巻きついた。
そのまま引っ張られると、ジャンの足の間におさまった。なんだか、恥ずかしい。

「恥ずかしいよ、誰か来たらどうするの?」
「誰も来やしねぇよ、こんな所。別に見られたって問題ないしな」
「確かに、そうかもしれないけど・・・ひゃ」

でも、と続けようとしたロゼッタの口からは小さな悲鳴が漏れた。
ロゼッタを後ろから抱きかかえたまま、首に顔をうずめたジャンの髪の毛がくすぐったくて仕方ない。

「ちょっと、ジャン、やめてったら」

今日のジャンは一体どうしてしまったのだろう。
いつもなら絶対にしてこないようなスキンシップを取ってくる。
慣れない触れあい方が無性に恥ずかしくて、腕から逃げようとしてもガッチリとお腹に回されて動けない。

「たまにはいいじゃんか」
「・・・、もう」

どうにでもなれ!逃げることを諦めて力を抜くと、途端にジャンの腕に力が入った。
ロゼッタの腰を両手でつかんでグルンと回す。
細く見えて意外とガッチリしている腕は、いともたやすくロゼッタの体を動かした。
先ほどとは逆方向、つまりジャンと顔を合わせる形に座らされたロゼッタは、恥ずかしさからか、顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。

「ジャン、やめ、これ、はずかし・・・」

普段はそこまでスキンシップを行わないせいか、このような行為はどうしようもなく恥ずかしい。

「顔合わせるくらい、いつもしてるだろ」
「それは、そうだけど」

それとはまた話が別だ。それにいつもはここまで距離が近くない。
また無意識に脱出を図っていたようで、ロゼッタが抵抗すればするほどジャンの腕の力が強くなる。

「ジャン、どうして、」
「ロゼッタ、好きだ」

不意打ちで言われた台詞に驚いて一瞬息が止まった。
好きと言われたことなら何度かあるけど、こんな雰囲気のせいか、いつもよりも緊張する。

「私も、好きだよ」

そんな真剣な表情で見つめられたら、逃げようにも逃げられないじゃないか。
ずるい、そんな顔するなんて。

自分から言ったくせに、頬を赤く染めて照れるジャンは、なんだか可愛い。
きっとこんなことを言えば可愛いなんて嬉しくない、と怒るだろうから心の中に秘めておく。
けれどそれは行動に出てしまったようで、ジャンの腕を掴んでいた腕を背中に回した。
胸によりかかると、何ともいえない安心感に包まれる。

「ロゼッタ、」

今日だけで何度名前を呼ばれたのか分からないけど、何度呼ばれたってその声に心臓は反応する。
優しく頬に添えられた手の平に従って上を向くと、すぐにジャンと目があった。
数秒目を合わせて、どちらからともなく唇を重ねる。
顔が離れたあと、やっぱりどういう顔をしていいか分からなくて、困った顔でヘラリと笑うと、またキスされた。

ギュウギュウと抱きしめてくるジャンの腕から、私への愛が伝わって、どうしようもなく幸せだ。

こんなことをしている内に誰かが通ったりしたかもしれないけど、今はそんなこと気にならなかった。
むしろ、この時間がずっと続けばいいな、なんて。






ジャンの甘甘甘ー!でした!
構ってくれない夢主に、ジャンがちょっかいを出す、の図です。
リクエストをいただいて、パッと思い浮かんだのが夢主を後ろから抱きかかえるジャンでした(笑)
甘えるけど、少し意地悪なジャンをめざしてみました。

りぃ様、リクエストありがとうございました^^




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