企画部屋 | ナノ





夕食前だというのに、少し離れたところで動いている影が見える。
呼んでやろうと近づくと、手前の影は見慣れた後ろ姿だった。

「お、エレンこんなとこにいたのか。もう夕食の時間だぞ」

声をかけると、エレンの影に隠れて見えなかった人物が肩を揺らした。
アルミンかミカサあたりだろうと思っていたのだが、そこにいたのはロゼッタだった。

何やら顔を赤くして顔を俯かせている。
エレンに対してひきつった笑みを浮かべている所を見ると、エレンと何かあったのだろうか。

ジャンはエレンが食堂に向かって歩き出したのを確認すると、ロゼッタの方に少し近寄った。
まだ距離が少しあるせいか、ジャンが近づいてることに気が付いてない様子のロゼッタは
手の平に乗っている何かをひたすら見つめている。

「おい、ロゼッタ。いつまでそこに突っ立ってるんだよ」

いい加減気づけと、声をかけるとロゼッタは一瞬驚いた表情をして、慌てて手の平に乗っているものを隠した。

「あ、いや。その、夕日がきれいだなって」

間違いなく嘘だろうが、今はからかってやる気にもなれない。
そういえばこいつは、いつもボーっとしてるときは空を眺めてたな。
オレンジ色と相性がいい黄色の瞳が印象的だった。

「お前の目も、夕日に照らされると反射して太陽みたいになるな」

ジャンの言葉に目に見えて動揺するロゼッタが、チラチラとこっちを見る。

しかしそれに動揺したのはロゼッタだけではなかった。

おい、俺は今なんと言った?
何でこんな恥ずかしい台詞吐いたんだ。
その前に、なんでこいつが空を眺めるのが好きだなんて知ってるんだ。

頭の中に、一瞬でいくつもの自問が繰り広げられた。

あんな恥ずかしい台詞を口にしたのはミカサの髪を褒めた時以来だと思う。
でも、勝手に口から出てきた言葉は確かに本音で。

いくつもの自問の答えが段々と浮き上がってくる。
微かに頭をよぎった答えを振り払うように、ジャンは踵を返した。

「ま、綺麗だとは思うが、夕食の時間だし、またあとで見ろよ。ほら行くぞ」
「まって、」

ロゼッタの制止を振り切るわけにはいかず、振り向いてロゼッタが何か言うのを待つ。
くそ、今すぐにでもここを離れたいのに。

「あの、これ、今日作ったんだ。あ、いや、みんなの分!友達に、これ、作ったの!」

そう言いながら差し出されたロゼッタの手の平には糸で編まれたアクセサリーが乗っていた。
先ほど見つめていたのは、これか。

本来なら女が好みそうなそれは、どこかで見たことがある。確か、ミサンガと言った。

「ジャンにその色は似合わないかなって思ったけど、捨てるのはもったいないし、だから、あげる!」

照れ隠しで言ったのだろう。赤く染まった頬が物語っていた。
それがなんだか急に愛おしく感じた。まさかとは思ったが、やっぱり。

一生懸命作ってくれただろうミサンガのお礼を伝えて頭を荒く撫でる。
俺なりの照れ隠しにロゼッタが気付く様子はない。

いや、まだ気付かなくていい。

情けない顔を見られないように、ロゼッタの前を歩いた。




Lys様のリクエスト、ジャンが夢主ちゃんを好きになったきっかけでした!
ジャンが夢主のことを好きだと自覚したのはミサンガの時、という設定です。
如何でしたでしょうか・・・
ジャンは意外と大胆だったらいいなと思ってます!

Lys様、リクエストありがとうございました^^




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