ドクドク、心臓がこれでもかというくらいに激しく鼓動する。
それは紛れもなく緊張している証で、隣にいるマルコに聞こえるんじゃないかと言うほど。
「ジャン、どうした?」
冷や汗をかいているジャンを不思議に思ったマルコが問いかけたが、ジャンは何も答えない。
くそ、昨日あんなこと言っちまったせいで会うのが気まずいじゃねぇか。
泣きやむ気配のないロゼッタをあやすように抱きしめて、結局数分はそうしていただろう。
思いだせば思いだすほど自分のしたことが恥ずかしく思える。
あんなの、俺のガラじゃねぇ。
でも、ロゼッタが嬉しくて泣いてるんだと思うと、どうしようもなく愛しく思えて、そんな自分の行動も気にならなかった。
その反動か、朝起きて昨晩のことを思いだして、思わず枕に顔を突っ込んだ。
あぁ、どんな顔して会えばいいんだよ。
こんなに緊張してるのは俺だけで、案外あっちはケロっとしてるかもしれない。
どきどきしながら食堂を覗くと、そこにはまだまばらにしか人がいなくて、もちろんロゼッタもいなかった。
そのことに安心したような気もするし、がっかりした気もする。
複雑な気分だ。
先に中へ入ったマルコの後に続こうとするジャンの服を誰かが後ろから引っ張った。
「ジャン、おはよう」
その声を聞いて弾けたように振り向くと、そこには頬を微かに染めたロゼッタが立っていた。
「お、おう、はよ」
出来るだけ平常心を保とうと、裏返りそうになる声を抑えたらなんだか素っ気ない声になってしまった。
しかしロゼッタはそんなことは気にしていないようで、少しだけ俯いていた顔を少し上げて微笑んだ。
「今日も訓練、頑張ろうね」
「ッ!」
何を言われても、いつも通りを装って答えようと思ってたのに、
ロゼッタから予想外の表情と言葉をかけられて、ジャンの思考は一瞬止まった。
これは、反則だろ
「ロゼッタ、何してるの?」
「あ、ミーナ。今いく!じゃあまたあとで」
手を振ってジャンの目の前からロゼッタが去ったことを確認すると、
人が通る通路にも関わらずズルズルとその場に座り込んだ。
「可愛すぎだろバカ」
普段見せない姿に魅力を感じるのだと誰かが言ってた気がする。
その時は理解できなかったが、今ならわかる。
チラリと視界に入ってきた誰かの靴。
その持ち主は最近ロゼッタと仲がいい、無愛想なアイツ。
「なんだよ、アニ」
今は余韻に浸るので忙しいんだ。
「・・・感謝しなよ」
ボソッとそれだけ呟いて食堂の中に入っていくアニに、ジャンの頭は疑問符でいっぱいになった。
ジャンとロゼッタが付き合い始めたという噂が訓練兵全員に行きわたり、
2人がコニ―に冷やかされるはめになったのはこの数分後の出来事。
如何でしたでしょうか!
付き合い始めた次の日は、夢主とジャンは同じことを考えていたのではないかな、と。
ジャンはきっと、好きな女の子の表情はどれも可愛く思えるんでしょうね。
きっとそうです!
真奈美様、リクエストありがとうございました!!
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