もう遅い


意味が分からない。誰かこの状況が理解できるなら、今すぐにでも教えてほしい。



ズキズキと痛む足を引きずってなんとか医務室までたどり着いた。ここまでは誰にも会わなかったけれど、もしこんな涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔を見られたら恥ずかしすぎる。涙が止まらない理由なんてロゼッタが一番知りたかった。嫌われてることは前から気づいていたし、それに対してロゼッタだって特に何も思ってなかった。


じゃあなぜ涙は止まらない?足が痛むから?あからさまに拒絶されたから?


「いや違う・・・でも、なんで」


確かに拒絶をされてショックを受けたのは事実。けど、泣くほどじゃない。気にしなければいいのだ。自分が誰にでも受け入れてもらえるような人間だなんて、思っていない。実際に今まではそうして流してきた。性別も違うジャンと話さずに数年過ごすくらいきっとできるはずだ。それだけなのに。何故ここまで悲しむ必要がある?


「変、だなぁ」


ほとんど喋ったこともないくせに、気づけばいつも目で追ってた。たまに合う目に女の子らしくときめいたりもした。第一印象は最悪だったのに、次第に分かっていくジャンの事。意外に強くて、意外に真面目で、意外に優しくて。分かっていたじゃないか、最初に彼の目に惹かれた理由だって。誘われた時、もしかしたら嫌われてなんかないかもだなんてあり得ない期待もした。


こんな簡単なことに気付かない程、私だって鈍感じゃない。本当は気づいてたけれど、どうしても認めたくなくて、それを嫌悪感だと思い込んで拭っていただけだ、その気持ちを。


「・・・ッ」


ジャンが、好きだ。ただ認めたくなかっただけだったなんて、どれだけ私は意地っ張りなんだろう。見ていたからこそ知ってる。その目がいつも誰を追っていたのかなんて。認めたくなかった。自分の初恋が、失恋だなんて。


自分の意志に反して涙は重力に従って落ちていく。足に包帯を巻く作業を進めていた手はいつの間にかそれを中断して顔を覆っていた。


「苦しいよ、失恋って苦しいね。ジャンも、苦しいのかな」


あなたがミカサを想っているように私もあなたを想うだけなら許されるのかな。



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