大きな心



次の日は早速、適正を見るテストが行われた。体に張り巡らされたベルトを使って体のバランスを取らなければならない。


ロゼッタは最初の方に受け難なく合格したものの、あの巨人を駆逐すると豪語していたエレンは不合格だったようだ。 明日に再テストがあるらしい。


夕食後に星を見ようと食堂から少し離れた建物の階段に1人で座っているとエレンが近づいてくるのが見えた。用件は大体わかる。コツを教えてほしいと頼みに来たのだろう。絶望的な顔をしたエレンは、初歩で躓くというのは予想外だったようで、明日の再試験のためにコツを教えてくれ、と周りに頼み込んでいるのを見かけたから多分間違いない。


「なぁ、ロゼッタ頼むよ!お前、なかなか筋が良いって言われてたろ?」

「コツ・・・と言われても・・・なんというかなぁ」

「やっぱり、ダメかぁ」


正直こればかりは言葉で表せるものではないのだ。おそらくできる人は感覚でやってるのだから、説明しろ、と言われてもできる人はあまりいないだろう。

エレンはひどく落胆しているようで、少し罪悪感を覚える。いや、嘘はついていないし悪いこともしてないけど。

ロゼッタからコツが聞き出せないと分かっていても、エレンは去らなかった。エレンの話が終わってないかも知れないと思うと、ロゼッタも立ち去るわけには行かず、何を言うでもなくただ空を眺めていた。
 

「そういえば、お前調査兵団に入りたいんだろ?」 


どれくらい時間がたったのかは分からないが、そろそろ宿舎に戻らなければいけないと思ったころ話を切り出してきたのはエレンだ。


「うん、そうだよ。エレンもでしょ?」


知ってたんだ、と漏らす彼に「食堂で騒いでたのは誰?」と聞くと申し訳なさそうに「ごめん」と言って苦笑いを浮かべた。彼には特に嫌悪を抱いてないけど。


「でも、調査兵団に入りたいなんて言うやつ、珍しいよな。ロゼッタはなんで入りたいって思ったんだ?」

「姉がいるの!調査兵団に。憲兵団に行かずに調査兵団に入った」


それにはエレンも驚いたようで、食いついてきた。


「そうなのか!へぇ、その、立派な人なんだな」

「うん。すっごく優しくて、強いんだよ。お姉ちゃん」


エレンは巨人を駆逐したいんだっけ?と聞くとバツの悪そうな顔をした。聞いてはいけないことだったのかもしれない。


「ロゼッタは、笑わないのか?」

「え、何が?」


きょとんと返すロゼッタにエレンが言いにくそうにしながらも答える。


「巨人を駆逐するとか豪語してた俺が・・・その、今日の適性を見る訓練であの様だったんだし」


エレンの方に視線を向けると、思いだしてるのか苦い表情をしている。


「夢は大きく持てって言うじゃない。大きな夢を叶えようと努力する人を笑うのは小さな夢を叶えて満足する人だけ。大きなことができるのは大きな夢を持つ人だけだと思うんだ」


エレンは弾けたようにこっちを向くとすぐにそっぽを向いた。


「そう・・・だよな。なんか、明日は出来る気がする」

「そっか。じゃあ明日のためにも今日は早く休みなよね」


星がきれいでもったいないけど疲れたから早く寝ないと・・・。

ロゼッタがその場で立ち上がるとエレンも引っ張られるようにして立った。それを横目で確認すると宿舎へ帰ろうと歩き出す。


「あの、ロゼッタ」


5歩ほど歩いたところでエレンに呼び止められた。振り返って見るとエレンは顔を赤くして目を泳がせながら大きめの声で言った。


「ロゼッタと話せてよかったよ。その、明日、頑張るから!」

「・・・うん、頑張ってね。私もエレンと話せてよかったよ」


嘘じゃない。彼は大きな志を持っている。きっと立派な兵士になれる。

その証拠に次の日彼は、壊れている装備だというのに一瞬成功してみせた。


ちゃんとした装備で挑戦すると当然のように成功して、空中に浮いたまま私の方をみて汗を掻きながらもしてやったりな表情を浮かべていた。




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