勇敢な兵士

「巨人がどこまで来てるか見てくる!お前らは板でも棒でもいい!かき集めて持ってきてくれ!」
「ライナー!」
「待てよライナー、待つんだ!」

一番に階下に向かい走るライナーを心配するクリスタ。その声を遮っていつにもなく切羽詰まった様子のベルトルトが制止の声を上げながら追いかける。いつもみんなの兄貴分だったライナーはこんな時でも自ら真っ先に危険な場所に飛び込む。どこまでも勇敢なその行為はどこか死に急ぎという言葉も当てはまりそうな気がするとロゼッタはその背中を追いかけながら思った。

「いつも真っ先に一番危険な役回り引き受けやがって、あいつ・・!」
「あぁ、悪い癖だ・・・」

隣にいるコニーに対して小さめの声でそう答えたベルトルトは真っ先にライナーの元へ追いつこうとしている。でもリーネさんはもうこの塔に巨人が侵入していると言った。例えこの塔に入れるほどの大きさの巨人だとしても武器を持たない私たちにとっては十分脅威だ。ライナーの言う通り何か使えるものも探さないと。そう周りに目を向けたときクリスタとユミルが足を止めてるのに気が付いた。

「クリスタ!どうしたの?」
「ロゼッタ!これを見て!」

私の声に気付いて足を止めたコニーと共に近づいてみればそれは大砲だった。ここは城の跡地だ、そういう物があっても確かにおかしくない。だけど。

「でもこれ相当古いし、整備もなしに使えないよ!」
「んなことやってる時間ねえよ!これごとくれてやるんだ、小型の巨人なら十分だろ!」

確かにそれはそうなのだが入ってきた巨人が一体とは限らない。でもとてもそんなことを考えてられる状況ではなくて、その大きな大砲を急いで4人で移動させる。早くしなければ、ライナーとベルトルトが巨人と遭遇してしまうかもしれない。そんな時下から響く居場所を伝える声、ライナーだ。その声に焦りを覚えながら次の扉を開ければ階段下で巨人を抑えるライナーとベルトルトがいた。

「ライナー!ベルトルト!そこをどけ!」

驚愕した様子の2人に向けて大砲を蹴りおとす。そうすれば階段に沿って走る大砲はそのまま巨人に激突した。

「上手く行ったみたいだな、奇跡的に」
「あぁ、起き上がれないだろ、あいつのサイズじゃな」
「よかった、ライナーもベルトルトも無事で」
「お前たちのおかげだ、助かったよ」

安堵の表情を浮かべた私にライナーはいつもの笑顔で答えた。やっぱりライナーはすごい。

「どうする、こんなナイフしかねぇが、うなじをそいでみるか」
「やめときなよ、どうせ動けやしないし、万が一近づいて掴まれでもしたら怪我じゃ済まないかもしれないし」

まだ死んでいない巨人にとどめを刺そうとするコニーを止めた。そう、確実に動きさえ止めればいいのだ。

「とにかく上の階に後退しよう。入ってきた巨人が一体だけとは限らないし・・・」

すぐ上にいたクリスタが振り返って不自然に動きを止めた。不思議に思ってその視線を辿れば今突き破った扉の瓦礫の上を巨人が乗り越えてきていて、そのことにコニーは気づいていない。

「コニー!」
「ッ!」

クリスタの叫びと同時に背後にいる巨人に気が付いたコニー。助けなきゃ。咄嗟に思うのと裏腹に動かない私の体。そんな私の目の前を駆け抜けたのは誰だったか。


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