見えてくる限界



リーネさんの声に飛び起きたクリスタと急いで屋上に駆け付けてみれば、そこには異様な光景が広がっていた。月明かりに照らされた不気味な城。その周りには、本来ならば日没後はあまり活動しないはずの巨人が無数に歩き回っていた。いや、例外もあるのかもしれない。だけどこれは、例外というには余りにも多すぎる。その全てが向かう先は、私たちのいるこの古城。


「何、これ・・・」


一体どうしろって言うんだ、こんなの。キョロキョロと目を泳がせてみれば、3m級の巨人と目があった。向こうはそんなつもりじゃないのだろうけど、巨人独特の気味の悪い目には確かに私たちが映っている。


「オイ・・・!あれを見ろ!!」


コニ―がさした指の先には、20m程はあろうかという妙な巨人。大きいだけじゃない。その巨体を覆う毛はまるで。


「何かありゃあ・・・巨人って言うか、獣じゃねぇか」


奇行種だろうか。多くの巨人が古城に集まる中、その獣のような巨人は真っ直ぐ壁の方へと歩いている。これからどうするつもりなのだろう。妙な巨人を追っていた目線は、下から襲ってきた衝撃によって下に向けられた。大型の巨人が塔を壊そうとしている。あぁどうしよう、武器も何もない私たちが出来ることなんてあるものか。いくら訓練をしていたって、巨人を前にしては私たちは無力だ。


「ふざけんじゃねぇぞ!酒も飲めねぇじゃねぇか、俺は・・・てめぇらの為によぉ!」


憤慨した様子のゲルガーさんがブレードを抜いた。他の先輩3人も次々にブレードを装着する。あぁそうだ、私たちの傍にはまだこの人たちがいる。


「・・・ちょっとロゼッタ、唇!」

「え、」


こちらを見たクリスタがぎょっと大きな目を見開いた。唇に手をやれば、指に少しだけ赤が付いた。いつの間にか唇を噛みしめていたらしい。どうやら、自分で思っているよりも動揺しているようだ。トロスト区の事とか、最近色々なことがありすぎて慣れきっていると思ってたけど。


「私たちが何をしたって言うの・・・」


次々に巨人の項を削いでいく先輩たちの姿をどこか他人事のように眺める。もし私たちが立体機動装置を持っていたら、あんな風に戦えていただろうか。きっと戦っていた。だって、こんな所で死にたくない。


「巨人が塔に入ってきてる!」


焦った様子で私たちのいる屋上まで上がってきたリーネさんは、私たちに中でバリケードを作れと指示をした。リーネさんが飛ぶのと同時に中へ駆けて行く同期達を横目で見る。出遅れた。立ち止まっちゃダメ。私も皆と一緒に戦わなきゃ。戦わなきゃいけないのに、どうして私はいつも、皆の背を見るしかできないんだろう。


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