「行ってきます、父さん!」
12年間住んだ家を、今日から離れなければいけない。幼いころに落書きをしてしまった柱を見ることも、少しの間見ることが出来なくなってしまうと思うと少し寂しい。けれど、これから私は兵士になるんだ。
「ロゼッタ、くれぐれも気を付けるんだよ」
「そんな悲しい顔しないでよ。きっとお姉ちゃんみたいに立派になってみせるから」
母が病気で亡くなって以来、父と姉と3人で暮らしてきた。姉は4年前に訓練兵に入団するために家を出て行ってしまった。私や父に宣言した通り、訓練兵を卒業した後は迷いなく調査兵団へと入団した。あの危険だと名高い調査兵になったのだ。勇気があって強い。そんな姉のようになりたいと、私も調査兵団に入団するつもりで訓練兵団に志願したのだ。姉に続き私も家を空けることになるのだから父さんもさぞかし寂しいことだろう。
「家には大分戻れなくなるだろうけど・・・手紙、送るから」
「あぁ、待ってるよ」
どんな生活になるのか分からなくて、緊張半分期待半分。きっと、今まで知らなかったことをたくさん知ることになるのだろう。姉が見た風景を、私も見ることになるのだろう。見えない未来に夢を見る私の足は軽かった。
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