白薔薇姫の赤薔薇を摘め!
2012/01/13 20:30 (2)

長野まゆみさんの『左近の桜』を読んだ。すごくきれいだった。文章はときに景色を越えるんだね。
「一目瞭然」の言葉通り、視覚の与える印象はとても強いのだけど、まゆみさんが描写する景色を写真で用意しても、まゆみさんの描写の方が美しいと思うかもしれない。
大衆文学の躍動感も好きだけど、ピアノの一音だけを押し続けてるような静かで淋しい文章もいいものなんだねぇ。しみじみ。

その作品で、主人公が、肌に蝶の群がいる謎の男に出会い、蝶の燐粉を転写される話があるんだけど、これキッドにもやりたいな。背中に数匹、内腿に一匹。色白いから絶対映えるね!

キッドには蝶より蛇が似合うかなとも考えた。動かないときはただの鮮やかな蛇のタトゥーみたいだけど、そいつはキッドの肌で生きてて、自由に体全ての皮膚を這いずり回れる。キッドの肌で生きる二次元ヘビ。
そいつに餌をやるために、彫物師のローのところに通う日々。

「今日の餌は蝶にしよう」
「わかった、蝶ね。鮮やかなのにするか?かわいいのにするか?」
「大きな黒アゲハにする。黒に近い紫と緑が混じる綺麗な羽がいい」

彫り終えると、キッドの肌で羽ばたいてくるくると飛び回る。ついでに彫った花にとまるのだけど、蛇は花ごと蝶を食べてしまう。
「ああ、ちょっと勿体ねぇな……きれいだったのに」
「また彫ってやる」
「そんでまた食っちまう」
「いつかお前の蛇も食べるのが勿体ねぇと思うような蝶を彫ってやるよ」
「……待ってる」

ローがキッドに手を伸ばすと、鎌首もたげて威嚇する蛇。ローがキッドを抱きしめると、ローの体を嫌がって避ける蛇。二次元ヘビだから咬みつこうとするけど咬めないよ。

ローとのセックスのとき、ローの肩に乗せられたキッドの足には、膝から下の肌には大きな色鮮やかな蛇が絡みついてる。極力ローに触れないように逃げてたら行き着く先はいつもそこ。

かわいいなぁ。
何がかわいいって、ローがキライで逃げ回る蛇さんがいちばんかわいい、ね。







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