Show must go on!


ボツになったやつ
2016/01/06 12:37 (0)

傭兵ロー(ゲス)
少年キッド

「お前が五体満足で向こうまで渡りきれたら、ご褒美に抱いてやるよ」


赤い髪の少年に、肩から提げた銃を突きつけた男が、煙草をくわえた唇を歪めて言った。

「ひ、っく、う、く、うっ、うっ、…ろして、」

枯れ草ばかりの乾いた大地を、少年は震えながら歩く。
継当てだらけの服と、薄汚れた体、痩せた腕。難民の子か、孤児だろう。真っ赤な髪と目、生白い肌が目につく、十歳前後の少年だ。少年のつり目がちの目は、薄く涙の幕が張り、頬を涙が伝っている。
少年の後ろに並び、背に銃を突きつける男は、カーキ色の軍パンに、同じ色のジャケット、リュック、ヘルメットという軍人のような格好だ。しかし、ヘルメットから溢れる黒髪も、目の下のクマも、冷たく淀んだ気怠げな瞳も、くわえた煙草も、どれも軍人のような規律さは感じられない。
「は、はぁ、っう、はぁはぁ……!」
少年の足が止まった。ぶるぶると震える足が、次の一歩を踏み出さない。
「何を止まってんだ」
男が少年の背を銃身でつつく。
「ギブアップか?構わねぇぜ。お前をこの場で殺し、俺は足跡を辿ってまた引き返す。そうしてお前のスペアを連れて再スタートするだけさ」
だるそうに首を傾げる男の唇は、皮肉に歪んでいる。
少年は顔を上げた。右にも左にも、前方にも、枯れた草と乾いた土が続いている。この先にある川の水と、その先の、ここよりはわずかに豊かな国を求め、この土地に足を踏み入れ、死んだ仲間が何人もいる。
ここには、数年前の紛争の際埋められた地雷が今なおあちこちに点在している、立ち入り禁止の地雷原だ。
地雷原の境目にはひ弱なロープが張られ、「Danger」の看板がぶら下がっている。

「ちくしょう、、うっ、こ、殺してやる、ひくっ、う、殺してやる……!」

少年は唇を噛み締め、足を踏み出した。この地雷原の手前で一緒にこの男に捕まり、木に縛られた仲間の姿を思い出す。自分より幾つか年上の、頭のいい兄のような存在を。自分が動かなくなれば、いま男が言った通り、躊躇いなく自分を殺して、代わりにその仲間をこの地雷原に進ませるだろう。
少年は前を見据える。涙を流しながらも、その目には強い光があった。自分が生きてこの地雷原を抜けるってことは、仲間を救うことにもなる。少年は恐怖を殺し、進んでいく。
「いいぞ。その調子だ。憎しみってのはいい。一番強い感情だ。感情は強く持て。生に執着しろ。この広い地雷原にお前の活路を見つけだしな」
少年の背後で、死神のような笑う男が、煙草をふかしている。

(殺してやる)



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