Show must go on!


二人の男(キャべバル、ハクバル)
2014/07/22 02:28 (0)



ときどき、知らない誰かがやってくる。


そいつは、俺の胸に額を押し付け、血がこびりついた手に顔を伏せ、苦しげな呻き声をあげて泣いている。
きれいに整えられた爪がつけた胸の深い傷は、まだ血が乾ききらずに滲んでいる。その傷に額を押し付けるもんだから、その白い額は血で汚れている。金の巻き毛だって、血が付いてところどころカサカサとした赤茶色に染まってしまっていた。

(俺が男でよかった)

胸の傷口に落ちてくる塩水に、ぴりぴりとした痛みを感じながら、俺はぼんやりと窓を眺めた。

(痛みへの忍耐力は、女の方が強いらしいが、男の俺は頑丈な体をしているし、喧嘩にも慣れている)

窓を眺める−−−ってのはおかしいと思うかもしれない。普通は窓から外を眺めるもんだからな。でも、カーテンが引かれた窓からは、外を見る術なんてなく、本当に窓を眺めるしかなかった。
カーテンの隙間はやけに明るい。
夜明けはまだ遠いはずだが、月がやたらに明るいのだろう。青いカーテンと重なる白いレースのカーテンが、月明かりを受けて発光したように白く輝いている。


べろりと鼻下を舌で拭った。
鉄錆の味が舌の上に広がる。
鼻血は止まったが、まだ乾いてはいない。シーツに垂らすくらいなら、舌で舐めとった方がいい。血は落ちにくいってことは、あいつと会ってから学んだ。

知らない誰かは、まだ俺の上で泣いている。
肩を震わせて、呻き声をあげて、亡霊のように泣いている。俺はいつも、「怒ってないべ」と、抱いてやりたいと思ってはいるのだが、体はちっとも動いてはくれない。
今日もまた、痺れた右腕と、腫れた左手は思うように動いてはくれなかった。

泣いてるこいつは誰だろうか。
泣いてるお前はどこだろうか。

(会いてぇな)

思いカーテンの向こうの、夜明けはまだ遠い。





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