Going Under | ナノ
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【Under the sun】

※フルボイス版ありがとうございます
※今更ながらハマりました
※2017年当時何やっていたの自分(あ、バイオ7か)
※処女作なのとフルボイスver.未プレイのため口調いまいち掴めていない部分ありお見苦しい点等あるかもしれません。すみません。優しく頼れる勇者の相棒そしてお兄ちゃん大好きです。

 静寂が二人きりの部屋を包み込む。深い底なしのような夜の闇。まるで今のこの世界や置かれた状況にとてもよく似ている。

 今自分たちを取り巻く現状を忘れる様に、悲しみに落ちたら戻れなくなる。戦えなくなってしまう。明日を生きるために二人は分かち合うように強く強くもう二度と離れないように、境目なんてないくらいに強く抱き合った。
 一度触れてしまえば理性のタガなんて簡単に外れてしまう。

「んぅ、んっ……、ぅ……んん……」

 手を繋ぎただ、見つめ合う。ずっと、こうして、ふたりきりになりたかった。
 2人きりになれる空間を探していた。
 今、お互いこんなことをしている場合ではない、だけど、確かめるにはお互い色んなことがありすぎた。

 みんな一度はバラバラになって。
 それでもやっとまた再会を果たした時。
 彼は仲間だけではなく自分さえも分からなくなって、空腹で傷つき戦い方も全ての記憶を失っていた。

 記憶を取り戻し、贖罪を果たした今、お互いの存在を改めて失いかけて大切さに気付いた。
 求め合う十代の勢いも落ち着きつつ身体は確かに大人になりつつ、でも、子供でもない年代の二人は、もう止まらなかった。

 抱き合い見つめ合うと、お互いにこの旅で静かに秘めていた思いを吐露した。

「悪魔の子」とあらぬ疑いをかけられた勇者と共に追われる日々の中、出会った仲間達との思い出も何もかも、歩んで来た旅の軌跡も、一度本当の自分を失った男は贖罪の果てにようやく思い出した。

 本当に大事な存在を記憶ごと失いかけたからこそ、もう二度と失わないように。
 ようやく贖罪は果たされ、そして彼に後に残ったのは、思いを打ち明けることなく離れ離れになった彼女の存在だった。

 恋や愛の何たるかも知らなかった。いや知るきっかけなど皆無だった。
 たった二人妹と厳しく劣悪な環境で生きてきた自分にはそんな邪な気持ちなど無縁の物だと思っていた。
 この五年間、ずっと自分のせいで呪われてしまった妹への贖罪のことしか脳内になかった。
 だが、いざ恋しいと認識した存在を前にすれば自然な流れで男の脳裏には、もう目の前の彼女の存在を求める事しか頭になかった。

 ――触れたい、今すぐ。剥き出しの肩に触れた時からもっとその服の奥の奥まで。
 激しい衝動の中、周りからまるで隔離されたようなこの空間には自分と彼しかいない。
 確かめるような長い口付けの後、やっと離れたと思えば不慣れな彼からの突然のキスに驚きされるがままの身体は床に崩れ落ちてしまいそうになった。
 ふらついた足取りの彼女を軽々と抱き、そして真っ直ぐに澄んだ瞳は彼女を見つめていた。

「オレは――お前が、好きだ」
「……本当?」

 指を絡ませながら、見つめ合うふたりは誰がどう見ても思いを通わせる二人だった。

「こんな時に、嘘なんかつくか……。シルビアのオッサンから聞いた、オレが記憶を無くした間も、ずっとお前は変わらず支えてくれていたのに、ごめんな、忘れちまってて……」
「いいの。いいの……あなたは何も悪くない……でもね、こうして、私の事を思い出してくれたから、それだけでいいの。何も、いらない……これ以上何かを望んだら、ばちが当たりそうで……」

 記憶を無くしていた時の事を、無くす直前のこと、自分は捕まっていた記憶はうっすらあるが、しかしほとんど覚えていないと彼は話していた。
 だから、記憶を思い出す前までの事は知らないままで居て欲しかった。その時の事は、忘れて欲しかった。
 自分は彼の記憶が戻らないこと、記憶を無くして一番戸惑っていた彼に対してかなり辛く当たってしまった。
 だけど、記憶をなくした彼は優しかった。戦っている自分の目が怖いと言っていたが、それでも少しの旅の間だったが自分に対して許してくれた。

 だけど、いざ記憶を取り戻してみて今こうして自分を組み敷く重みは確かに紛れもなく自分が心から求めている彼で、自分に終わりなき苦痛を与え続けていたホメロスではない。

「いいの、いいんだよ……カミュ……」
「ずっと、こうしたかった、」
「わ、たし……も、だよ、嘘みたい、だって、私の事いつも……」
「それは……言わなくていいって」
「わざとだったの?」
「あぁ……っとに、そうだよ。絵の時もお前がいちいちムキになって、その顔が……可愛いから、だから……もう、言うな」

 地下の牢獄での出会いから。そして勇者と名乗るイレブンとの出会いに導かれるがままに国を飛び出し、世界を駆けた。
 そして歩んできた長いようであっという間だった邪神を倒すため大樹を目指した旅。
 出会いを経て同じ気持ちを仲間達と共有して、そして、長い間苦しみ続けていた妹を失った彼の贖罪が果たされ妹を取り戻せたことでようやく、本当の彼が帰って来た。

 優しく、まるで壊れ物を扱うかのようにベッドに下ろされ、靴を脱いだカミュが一緒にベッドに倒れ込んでくると、そのまま向かい合って口付けをする。

 口付けをしたまま、カミュに肩を押されながらゆっくりとシーツに二人分の身体が沈んだ。

「んっ、……ん、」

 唇の隙間から漏れる吐息のの数だけ募る恋情はやがてお互いを求める情欲に変わる。
 彼の舌がぬるりと入り込んで優しく上顎をなぞる。

「ン、っ、……」

 ぞくぞくと腰から下に甘い痺れを覚えつつ海は導かれるまま舌を絡め合わせた。
 手を取り、触れて、絡め合う。そしてお互いの気持ちが同じだと知って、お互いしか見えない世界の中へ二人抱き合いながら緩やかな速度で落ちていくようだった。

 いつもふざけ合い、時に悪乗りしたり、冗談ばかりだった彼と気が合うのはれんけいで戦っている時だけだったと思っていた。
 そんな彼が、今知らない顔をして自分を組み敷いている。仲間ではなく男と女になって肌を重ねようとしている。
 身にまとっていた服は全てずり下げられ、早急にだが決して急かさずに求める手つき、知らない顔、今はまるで別人のように見えた。

 綺麗に光る澄んだ深い海の底のような瞳に見つめられて、自分が望んでいた本心さえもその清らかさに澱んでいた気持ちも浄化されていくようだった。

「あっ、待って……」

 今なら、まだ戻れる、これからも変わらず仲間のままで、それなのに、もう、一度かち合った視線からもう、そらせない。
 本心が叫ぶ、本当はずっと、彼とこうなることをどこかで望んでいた自分がいた。

「あっ、ちょっと……待って、」
「駄目だ。もう待たない、」

 かち合う視線、絡みつくように。目の前の彼はまるで別人のようだ。
 男は皆だと狼、確かにカミュも狼になるが、それはセーニャとイレブンとのれんけいの時の「ビーストモード」状態の時の話で、今の彼は普段の彼の筈なのに。
 本性を剥き出しにした男の荒い吐息に胸が高鳴り、彼が脱がせやすいように腰を浮かせて自分の剥き出しになる素肌を彼に晒した。

「んっ、ふっ……あっ、カミュ……ん、」

 縋り付くように、同じく服を脱ぎ捨てた彼の硬い胸板に自分の柔らかな胸がふにゃりと形を変えた。

「柔らかいな」
「つっ、……はずか、し……」

 夜の帳だけが、こんな不安定な自分達の事を、隠してくれた。
 この闇の中に紛れて、誰かが、来るかもしれないのに見ぬ振りをして。
 深い闇の中で均一に光るお互いの光を見失わないようにただ求めた。

 一度触れた場所から感情が溢れてもう止まらない、もうお互いはお互いしか見えない。
 目の前の彼に、まるごと食べられてしまいそうな深く贈られるキスに酸素を奪われてしまいそう、頭が沸騰してグラグラと揺れて何も考えられない。考える事も奪われた。

 彼は恋愛には完全に無縁な人だと思っていた。
 きっとそれはずっと妹への罪悪感や贖罪の道を歩んでいて、一人その良心の呵責に苦しんでいたからだろう。

 これまでの旅でわかったことがある。
 本人は自覚があるかは知らないが、雪国育ちで白い肌に人目を惹く綺麗な容姿をしていること。
 そんな妹も彼に瓜二つで、初めて黄金城で対峙した時はこんなに美形な兄妹だなんて、お世辞でも人並みの容姿でしかない自分はずるいと凄く羨ましいと感じた。
 街を歩けばぱふぱふのお姉さんに声をかけられるし、メダル女学院では女生徒からちゃっかりラブレターを貰っていたことも聞いた。
 だけど、彼はそんな女性たちの目線を受けても動じることは無かった。
 意中の相手がいるのか、理想がものすごく高いのか、それとも単に女性に興味がないのか、まさか男性が好きかと問えば「お前何言ってんだよ」と言いたげに思いきり嫌な顔をされた。

 だから、男とか女とか、そういった関係を疎んじていると、面倒くさいと思っているだろうなと、感じていた。
 ここにたどり着くまでの厳しい戦いに疲れ果てた身体を癒すためのベッドが明らかに重量オーバーである二人分の重みを受けてギシギシとまた軋んだ。

 ベロニカとカミュほどでは無いが、自分もカミュにはからかったりからかわれたりした。
 そんな彼と今は同じ気持ちを分かち合う恋人として抱き合う事、しかし、不思議と違和感や嫌悪感は感じない、あるのはただ男と女としての本能。

 肌を重ねること、とても幸せなことなのに、記憶を失った彼、だけど彼は元の彼として帰ってきてくれた。
 とても嬉しかった、お互いの気持ちをそして確かめるように。

「あっ、……っ、んっ、くる、し、っ」
「海、静かにしねぇと聞こえちまうから……」
「っ、んっ……」

 なら、今すぐ離れればいい、ゆっくり深く息を吸わせてほしい。
 深く呼吸して酸素を取り込まないと思考が咥内をかき回す舌に翻弄されて滅茶苦茶にされてしまうから。

「あ……っ、」
「海……」

 カミュも、本当は、分かっている。今はまだ恋人同士として甘い空気に浸っている場合ではないと。だけど、悲しみが止まらない、いつも明るくて、元気印だったベロニカの真実に、誰もが失意に暮れていた。
 こんなにも悲しくて、今は彼に縋り付いていないと、戦う事から逃げ出してしまいそうだった。

 ――優しくしなくていいから、どうかお願い。
 だけど、こういった行為とは無縁だった自分を彼は手ひどく抱いたりはしなかった。まるで普段の戦闘とは真逆のように、自分はそう簡単に壊れたりなんかしない。

 だけど彼は壊れないようにと優しく抱いてくれた。いつの間にか緊張は解け、一度の痛みを抜ければ後はもう底なし沼に落ちるだけ。

 未開通の部分を貫く痛みに涙を流しながらそれでもようやく繋がれた。
 ヒリヒリと擦り切れるような痛みが襲うが、それ以上に幸せと仲間を失った悲しみの方が大きかった。

 ▼

「あ、あっ、んッ、かみゅぅ……っ、んっ、」
「ッ――お前な……そんな、声で、呼ぶな、止まらなくなるだろ……」
「っ、んっ、あっ――」
「海……っ、痛いよな、苦しいよな、ごめんな……」
「あっ、んっ、っ……!」
「ああ……っ、」

 ――止めないで、大丈夫、大丈夫。
 痛いのも苦しいのも全部我慢する。あなたにあげるから。
 だから、もうどこにも行かないで、私を忘れないで。

「っ、んっ、はあっ……あ、っ、んっ」
「あ……声聞こえんな」

 ギチギチと締め付ける彼女の媚肉の柔らかさに彼はすっかり夢中だ。
 痛みを紛らわすように引き抜いた熱、きちんと慣らすべく下肢の間に埋め込まれた鮮やかな青が揺れる。舌で嬲られ、戸惑いながらも甘い声が止まらない。

 膝を抱えられ、これ以上は耐えられない。真っ赤な顔でいやいやをする度に柔らかそうに揺れる胸が視界に映る。
 あまり意識したことは無かった、普段はコルセットで潰しているらしく、海の形のいい両胸、こんなに柔らかいことも知らなかったから。

「っァ、んん、っ……ン、あ……」

 柔らかさを堪能するように揉みしだかれ、先端の淡く色づいた部分に口付けられて海はたまらず仰け反った。
 ひっきりなしに彼女の恥ずかしそうに、だが漏れる声を聞かれるのが恥ずかしいと堪えるように口元に拳を当てながらも、だんだん訪れる痛みの中のちゃんと快楽を引き出され、甘く漏れる声が普段の歌で戦闘を補助する彼女の喉に痛みを与える。

「喉、あまり使うなよ」
「ん、ンンっ……」

 まるで、彼なりに自分へ気遣うように。ぬるっ、と海の口内にカミュが二本指を入れれば海の舌をそっと挟んでくりくりと、咥内をまるで先程まで慣らしていた膣口と同じような巧みな手つきで動かした。

「は、あっ、んっ」

 ――その喉を酷使させているのはあなたじゃないか。
 悔しげな海の訴えるような眼差し。その顔を見て満足気に。にこりと優しく笑みを浮かべると、きようさを増した彼の指先はそのまま海の口内をくまなく刺激する。

「ひ、あぁああうっ、んあ〜〜っ!」

 敏感な粘膜、全てが彼によってどんどん知らない自分の姿へと変えられる。
 その強い刺激に海は今までに感じた事の無い心地よさを感じた。

「あ、んっ……っ、」
「気持ちいいのか?」
「っ、はっ、あっ……」
「あぁ、なら、よかった……」
「う、ぁうっ……かみゅ、かみゅうっ……」

 グルグルと、咥内をかき回す彼の思ったより太いその指の感触にまるで先ほどから腹部に感じるのしかかった彼の熱よりも熱く期待に高鳴る。

 鷲掴みにされた両方の胸、高鳴る鼓動はあらゆる気配に敏感な彼に丸聞こえなはずだ。
 もし自分の指の代わりに海の咥内へ自分のこの猛るような熱を受け入れたら、どんな反応を示すのだろう。
 そして、どれだけ気持ちがいいか。

 胸でも下肢の間に触れられた感覚や場所も違うのに、彼の指が咥内を掻き回すのが気持ちよくて、彼も自分の感じている顔を見つめる目を止まらない。

「ああ――結構クるな、ッ、オレだけ……そうか、海」
「あっ、ああ――ッ!!」
「っ、ン……っ、」

 と囁けば、首にキスをし、その首に落ちた唇から広がった彼の温度に胸を高鳴らせて、ぎこちなくも本能のままにまた甘く啼いた――瞬間、

「あぁああうっ〜〜!んあ〜〜っ、ああっ、ああ〜っ」

 予告無く痛みに余計な力が入り余計に痛みを感じるその前に。ズブリと、深く奥まで彼の猛る熱が海を貫いたのだ。
 擦り切れるような激しい痛みを覚え、今までに感じた事の無い女になるための痛み。声なき声で破瓜の痛みに海は涙を散らした。

「すまねぇ……もう、」

 しかし、一度貫いてしまえばもう止まらない。
 普段口にもしないようなことを口走ってしまった気がする。
 だけどもう、止められない。自分の下に組み敷かれ、惜しげも無く投げ出された肢体、両足をカミュの肩に軽々担がれら奥の奥まで何度も何度も突かれて海は痛みしか感じないのにそれでも潤いに満ちた粘膜が彼の律動を助けてズコズコと激しい律動がついさっき処女膜を引き裂かれた海にのしかかる。

 しかし、痛みを覚えながらも彼は的確に海の気持ちいいと思える自分も気持ちいいと思うザラザラした粘膜部分を狙い定め、突かれる度にふるふると揺れる胸、仰け反る喉の白さ、思わず口付けて赤い華を散らして海は甘い悲鳴をあげて涙を流した。

「は、っ、……んっ、つ――ッ」
「あ、はっ!んっ、かみゅ、っ、あっ、あっ、んぁ、っ、ごめんな、さ、」
「いいって……それくらい、なんともねぇよ……いいから、背中に爪立ててもいい、」

 痛むのだろう、下肢の間から伝う濡れた感触に触れると、暗闇に慣れたカミュの視界に赤く見えたそれは清らかな海の乙女だった証が流れ出た合図だった。
 その痛みに比べたら背中へ食い込む爪の跡などどうでもいい。

 決してその身体を傷つけたくないのに、痛いのも苦しいのもどうして彼女だけが。
 自分はただ、ただ、……このうねりと強い締めつけに言葉にならないのだ。

 互いに誰にも見せた事の無い顔を晒した。吟遊詩人として歌を使って戦う海、これから激化する戦い、彼女の歌はまさに盾。防御役でも攻撃役としても必要だ。
 そんな彼女の喉を酷使しないようにと彼が投げてよこした彼が先程まで着ていた衣服。
 鼻腔いっぱいに吸い込んで、どうにか縋り付かないと思考がかき回されて、神経が焼き切れてしまいそうだった。

「はっ、あっ、んっ――すきなの、カミュ、が、あっ、すき、すき……痛くないっ、あぁああっ、」
「オレ、も……海が好きだ……っ、 あっ、……ッ、無理だ、っ、我慢……出来ねぇ…… お前の中に、出したい、いいか」
「あっ!いいよ、っ、カミュ、っ……ん、アアっ、」

 激しくも温かな熱を求め合って。彼が達したことでその熱を受け止め海も仰け反りながら痛みの中に確かに注がれる熱を必死に逃さないよう逆流しないように、緩やかに甘くズルンと抜け落ちた彼の熱を追いかけるように締め付けた。

 ▼

 これまで過酷な旅をしてきたから体力には自信があった。最後に仲間になったマルティナやグレイグよりは遥かに劣るが、それでも腕っ節なら負けないし戦うことも不得意ではなかった筈なのに。
 初めての不慣れな経験にへとへとになっていた。息も絶え絶え、終わる頃にはいつの間にか自分は彼よりも先に寝入ってしまっていた。
 足元に絡むシーツはひんやりとしてどこか冷たい。

 後処理を簡単に済ませると眠りに落ちた筈の海がカミュの暗闇の中でもはっきり分かる大きな瞳を見つめていた。
 どこかここではないような目をした海、普段の太陽の下で微笑む海とはまるで違う人に見えて、まるで心臓を鷲掴みにされたような錯覚に陥った。

「カミュは……」
「なんだ、起きたのか?身体は……辛くないか?」
「うん……大丈夫……、その、こういうことに、興味無いって思ってた……」
「はぁ……? いきなりなんだよ……ったく、まぁ……確かに、妹が……マヤがあんな事になって、寒い場所に一人きり、置き去りにして逃げたオレがこんな風に……誰かに、自分だけが幸せや安らぎを求めちゃいけない。そう思っていた……けど、」

 ――お前が好きだと自覚して、
 けど、贖罪を果たすまではお前には打ち明けないと決めた。
 記憶を無くした間、俺は随分お前を苦しめた。

「大丈夫です。記憶を無くしたカミュはとっても、優しかったよ」
「ああ、そうかよ」
「痛っ!」
「どーせ普段のオレは、優しくねーもんな?」
「そっ、そうだ、そうだもん……もっと!優しくして欲しいよ」
「そうだな……記憶無くしてた時のオレより思い切り、めいっぱい、優しくしたかったんだけどな……ごめんな、」
「っ……」

 頬に触れたグローブ越しではない素手のカミュの温もりに酔いしれながら、

「もう……!本当に本当に、心配したの……本当に記憶がこのまま戻らなくて、あのままだったらって、」
「ごめんって」
「だから……よかった、カミュが、帰ってきてくれて、」
「ああ、ただいま」
「おかえり、なさい……」

 もう離さない、離れない。
 この先にどんなに苦しい痛みや悲しみが待ち受けていたとしても。
 それでもこの世界を取り戻して、また太陽の下で。

 痛みでもなんでもいい、彼の熱を受け入れる前まで、与えられたのはただの苦痛でしか無かった。捕らえられ、与え続けられた未知の苦痛を伴う快感が全てだった、終わりなき苦悶に恐怖心を抱いていたのに、今はもう違う。
 ずっと、その目に自分だけを映して欲しかった。

「カミュ……んッ、ン、っ、あっ、はあっ、」
「声、」
「んん〜〜〜!!」
「しっ。声、もう少し抑えて、なぁ、……聞こえちまうから、」
「んっ、んんっ、」
「こうして塞いでおけばいいか?」
「んッ、ん、して……」

――あなたがすき。
 そう。心の底から、海は彼を望んだ。本能が、魂からそう求めてる。最初からあなたとは、まるでひとつの個体だったように。

 Fin.
【Under the sun】

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