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【×2021 Valentine's Day】

 冬の終わりがようやく近づいてきたと感じられる二月のまだ寒く灰色の空が余計に寂しさを募らせる今日。
 それでも、最愛の彼の生まれたこの地で、海の記憶の中の懐かしい故郷の凍てつく冬の寒さと視界を埋め尽くすほどに白い雪の粒子のかけらを微塵も感じさせないくらいにここは温暖だ。
 雪かきの為にスキーウェアに着替える必要もない快適な冬。だがその快適な冬の分、こっちの夏はかなり暑いのだが。
温暖な地域故、吹きすさぶ風は豪雪地帯で生まれた海にとっては春になるまでお湯が出ない事もある苦行を幾度も経験してきたから何の苦でもなく、春の微かな息吹さえ感じる。豪雪地帯育ちの彼女からすれば、彼の生まれ育ったこの地域は薄手のコート一枚でも十分なのだ。
 彼とこの地で暮らし始めてから二度目の冬。そして目まぐるしくも忙しく終わりを迎えた昨年が今はもう昔の出来事のように感じるのだ。
 あんなにも早かった師走時の日暮れが記憶に新しいが。しかし、今はもう二月、節分を終え、暦の上では春を迎え、17時を過ぎても外は明るい。
 春の訪れが早いこの地域は自分の居た灰色のあの空の世界とは同じ日本な筈なのに、まるで別の世界に見えた。

「海!! お待たせ、混んで来たからそろそろ行こう?」
「ヒストリア、ごめんね今年も付き合わせて。人ごみすごいね、疲れてない??」
「ううん、大丈夫だよ。私もユミルにちょうど似合いそうなチョコレート渡したかったから!!」
「(ああ……女神様)」

 迎えた今年のバレンタインもどのように過ごすのかをぼんやりと考えていた海。目の前のすこぶる美形の部類に入るヒストリアのドアップと上目遣いにときめきながら、いつも嫌な顔一つせずに乙女の祭日に付き添ってくれる彼女が見知らぬ土地で暮らす自分をいつも癒してくれるオアシス的な存在であることを噛み締めていた。
 恒例となりつつある、大都会で行われる百貨店でのチョコレートの祭典。胸を躍らせ、この期間限定の催事に浮かれてヒストリアとまたまた仕事を休んでの参戦にお目当ての意中の相手へと渡すチョコレート戦争へと繰り出したのだった。彼へのチョコもそうだが、本心ではめったに食べられる機会のないあんなチョコこんなチョコの試食がメインなのだが。

「去年は手作りに挑戦して失敗しちゃったから今年はこれにしよっかなって」
「あっ! リヴァイさんに?」
「うん、っ。そうなの」

 海が購入したのはシンプルな黒の紙袋が年上である落ち着いた雰囲気を纏う彼に似合うとチョイスした、シンプルなごく普通のトリュフ。
 しかし、ただのトリュフではない。無類の紅茶好きでもあり、会社でコーヒーを出されるとその日一日はお通夜状態のリヴァイにはまさにうってつけの紅茶入りのトリュフである。

「へぇ〜紅茶入りなんだね、リヴァイさんにぴったりだね」
「うん。そうなの、後はネクタイにしようかなって思って。喜んでもらえると良いなぁ」

 日暮れ時で会社帰りのOLたちが美味しいチョコ目当てに増えてきたので急いで催事会場を後にし、二人はこのまま一緒に早めのディナーとしてもつ鍋屋を探しながら繁華街を歩いていた。

「あ、ユミルが前に言ってた裸にリボンで「プレゼントはわ・た・し」はしないの?」
「そっ、それは!! しない、しないよ!! まさか、そんなことしたら絶対ドン引きされるって、本当に!! いくらなんでも私だってそんなことしたらどんな反応されるか分かるもん」
「うん、確かにユミル絶対海が純粋にそれ実行しそうな性格だと思ってからかってるよね……」
「リヴァイさんにそんなことしたら嫌われちゃうもの……」

 お互いに購入したチョコレートの話をしつつも花が咲くのはお互いの恋人の話である。ヒストリアとユミルはもうずいぶん前から一緒に暮らしているし、自分とリヴァイも同棲を始めてそれなりのもやもやもあったが比較的穏やかな日々を過ごせているのは間違いなく神経質だが自分に合わせてくれる大人な彼のお陰である。
 今まで付き合ってきた男性は年下が多かったのもあり、甘え下手の自分が素直に彼の前では甘えられるようになったのもまたいい変化だ。
 リヴァイも仕事面では厳しかったがそれ以外のプライベートの彼は神経質ではあるが、やはり経験豊富な年上の男として頼りがいがあり、そしてとても気配り上手で親切だった。元々面倒見のいい兄貴分として慕われているだけあり、自分に対しても良き相談相手となってくれるし、甘い言葉やロマンティックさのかけらもない性格ではあるが、行動で自分に対しての思いをぶつけてくれるのもまた嬉しかった。

「リヴァイさんってやっぱり年上だし、私たちよりもその、いろんな経験知ってそうだもんね。ねぇ、正直気になるんだけど、リヴァイさんってどうなの?淡白そうに見えてやっぱり夜はすごいの!? 体の相性は? ミドサー男のテクニックって正直、どうなの?」
「ブッ!!」

 たまたま見かけたモダンな雰囲気のもつ鍋屋を見つけ、そこで夕飯にする事にした二人は早速今日の打ち上げと称して早めの乾杯をした。
 ヒストリアは出先で飲んだら危ないからダメだとユミルに堅く言いつけられているからとノンアルコールの可愛らしいカクテルをチョイスする中、大ジョッキの生で序盤からいつものようにフルスロットルの海。

「ヒ、ヒストリア……っ、あなたはお嬢様なんだからそんな事言ったら駄目だよ……」
 思いがけずヒストリアの口から飛び出した夜を連想させるヒストリアからの問いかけに海は不意打ちを喰らったかのようにジョッキの中のビールを吹き出しそうになってしまった。

「あっ、海、顔が真っ赤だよ!!」
「も、もうっ……!! ヒストリアが急にそんなこと、言うから……だよっ!」
「海の反応を見ればすごいんだね……」
「う、うっ……そ、それは……うん、37歳、スゴイよ……」
 そうだ、昨晩もそうだったが、彼とのめくるめく夜の事は、想像するだけで本当にもうどうにかなりそうだ。アルコールには強い筈なのに、ヒストリアの口から昨晩の情事を思い起こされて海は耳まで赤くして俯いた。
 いつもの海らしくない反応にヒストリアは仕事でも一番いいポジションで活躍している精力のあるミドサー男の持つ何とも言えない色気や大人の卓越したテクニックに海はすっかり骨抜きなのだという事がその表情を見てわかった。

「えええ!? スゴイ気になる〜教えてよ!!」
「うん……その、まるでジェットコースターみたいなの」
「ジェットコースター!?」
「うん、一度乗ったらもう止まらない。一気にどこかに飛ばされたみたいになって、頭がふわふわして……リヴァイさんの事だけしか考えられなくなるの。どうしよう、私、こんなの初めてでどうしたらいいのかわからなくて」
「そ、それはそれは……っ」
 今まで、それなりの恋愛経験はあるが、表面上のお付き合いで終わった恋愛や、身体の関係があっても恥ずかしい気持ちや痛みが勝りそう言った行為に苦手意識を持っていた海。しかし、彼と出会い、幾度も彼に抱かれた事で彼の触れるまま過敏に反応するように作り替えられた身体は過敏に反応し、順応に彼が求めるまま夢中になったのだ。

「それでいいんじゃないかな?」
「そうかな?」
「うん。だって、やっぱり大好きなのに痛いだけで気持ちよくないのじゃツラいだけだもん」
「ヒストリア……そうだよ、ね」
「そうだよ!! だから海もそんなに思い悩まなくても、求められればうれしいじゃん、ジェットコースターみたいに抱いてくれるんだもん、私は海の今までの恋愛事情分かるから余計に嬉しいよ!! それで、思いきり甘えちゃえばいいんだよ」
「甘えちゃう……私が、リヴァイさんに……え、えっと、例えば?? どんなふうに甘えたらいいのかわからなくて……ウザがられたりめんどくさがられるのも嫌だし……」
「そうかな? リヴァイさん海の事すごく大事にしてるんだなってのがわかるから、全然迷惑とかうんざりとか思ってないと思うんだけど。うぅんとね……それこそ、バレンタインなんだからたまには海の方からリヴァイさんを誘ってみるのとか? どうかな?」
「えっ、私、から???」
「そうそう、普段リヴァイさんに雰囲気とか流れを作るのいつもお任せしてるなら、たまには海から行ってみるの!! で、普段とのギャップでリヴァイさんをメロメロにするのよ!! 可愛い……よりかは色っぽい方が三十路男の性欲を掻き立てたりするのかな? いつもより大人っぽい下着とかつけて、こう…… 「今日は私がリヴァイさんを食べてあげる」って…」
「さ、さすが女王さま……っ」

 しかし、見た目での露骨な色気はあんまり好ましくないのか、それを実践したことが過去にあったが、表情筋が死んでいる彼の反応はいまいちだった。そして、何よりも言語力もどこか残念でもある彼はそう言った女性特有の「察してくれ」を察するのが本当に下手糞なのだ。
 獣並みに勘が鋭いくせに、言動より行動でどうにかしようとするそんな不器用な彼が愛おしいと思う反面、遠回しのまどろっこしい色仕掛けをするくらいなら裸でいろと、以前話していたのを思い出し、海はヒストリアのアドバイスを受け止めながらもうんうんと、ただ頷くばかりだった。

 ヒストリアの可愛い笑顔がけしかけ、そして、自分から彼を誘えとアドバイスを促す。
 そんな事、今まで考えた事もなかったのだ。確かに言われてみればいつも夜の営みの時は、仕掛けてくるのは彼からだった。週末の夜はたまに平日の夜だったり、頻度は多い方かもしれない。しかし、彼との行為により開かれた身体は決して苦ではない。
 彼の気持ちが見えなくて、自分からも確かめる事も出来ずにただ重ね合ってたあの日々を思えば、今は自分を求めて抱いてくれる彼が愛おしくてたまらない。

――「海、」
 あの少し掠れた様な低い声が自分の耳元で囁く。
――「オイ。まだ……寝んじゃねぇ。まだ……、足りねぇよ」
 今まで体験した事もないめくるめく快楽、そんなの自分には無縁だと思っていた。しかし、実際にそれを体験したことで夜の営みに対する不安は消え、翌日の激しい倦怠感で下半身に力が入らなくなるまで求められることで、女としての経験が浅かったが、見出され、そして悦びを確実に開花させていた。
 最後は骨抜きになりヘロヘロの自分を起こすように真上からたたき起こされるように突き上げられてまた覚醒させられた意識が何度も何度も高みへ向かうのだ。
 女は男と違って射精しないし、絶頂の明確なゴールが無い。だからいつまでも延々と啼かされ揺さぶられるがまま。
 だが、そんな普段冷静な彼の見せる激しさと力強さに自分は既に虜なので嫌とは思わない。
 そう、彼の為ならいくらでも捧げるのだ。
 この身がどうなっても構わない、どんな恥ずかしい事も、未知の経験だって受け止めたい。
 そう思えるほど、自分はもうとっくに彼の虜である。彼は周りからも怖そうだとか、笑顔が無いとか、強面の人には恐れられ、犬には吠えられ、子供には泣き叫ばれる始末だ。
 確かに言語力も表情も乏しいが、その分何時も行動で愛を示してくれるから不安はなく、あの力強い腕の中に強く抱き留められるだけで忽ち自分は骨抜きにされて。理性と本能の境目も、記憶さえも。何もかもが揺さぶられれば曖昧になるほどにいつも自分は彼の重みのある身体に押しつぶされるように激しく抱かれ、翻弄され、そしていつの間にか朝を迎えているという状態。

 男性から求めてくれるうちが華だと、求められなくなったら女として一巻の終わり。そして行く先はそのままずるずるとレスになる悲惨な末路。そんな未来など訪れて欲しくない、彼の前では常に女性で居たい。だからこそ、自分も他の女性のように常に最愛の彼から愛される努力はそれなりにしているつもりだ。
 全身脱毛をしたり、きちんとした下着をつけたり、可愛いパジャマを着たり、肌の手入れから爪まで。
 しかし、最近は自分がホルモンの関係で無性に身体が疼くときも、彼がいつでも求めてくれるから、それに甘えて自分からは何もせずただ彼からの愛を享受してばかりいたのもまた事実であり、指摘してくれたヒストリアに感謝した。

 そうだ、たまには自分からも行動しないと。海は自分の生まれ故郷の銘酒を煽りながらぼんやりと考えていた。
 しかし、やはり世間一般は嬉しいものなのだろうか。意中の相手から積極的に求められるというのは。どうなのだろう。

「あっ、もうこんな時間だ、リヴァイさんのご飯作らないと!! お会計しないとね」
「待って、海、今日はちゃんと私の分は私が出すから」
「でも……今日また催事に付き合わせちゃったし」
「いいの、いつもご馳走になってばかりだし、二人のラブラブな話が聞けてとっても楽しかったよ! また何かあったら相談してね」
「うんっ、ありがとうっ、ヒストリア……!!」

 ヒストリアと今日の分の代金はきっちり割り勘をして、海はレジへ向かうとバレンタイン限定と淡いピンクのリボンが結ばれた可愛らしいパッケージの割にはアルコール度数の高いウィスキーボトルが売られているのを見つけた。

「どうしたの?」
「えっと、すみません、これも一緒にお会計で……」

 追加で五千円札を長財布から取り出すと、海はこれまたそのボトルに似合うショッキングカラーの派手派手なピンク色のウィスキーを購入していた。

「これからは毎年祝うイベントの度にいちいち金かけんじゃねぇってリヴァイさんには言われるんだけど、さすがに紅茶のチョコだけじゃ味気ないかなって、」
「そうだったんだね、リヴァイさんウィスキー飲むもんね」
「そう、ビールは糖質が含まれてて太るからNGなんだって。蒸留酒が好きみたい」

 蒸留酒はカロリーを機にする人には最適だがアルコール度数は高い。そして、海が普段から愛飲している日本酒は酒類の中でも糖質の塊で一番カロリーが高い事を海は知らずになみなみとお猪口に注がれた熱燗をまた飲み干した。
 彼も三十代後半に差し掛かり体型のたるみが気になるのだろうか、ジムでのトレーニングは欠かさない。その努力もあってか三十後半の年相応には感じさせない有名な彫刻像のような肉体を持っているが、そういった日々の並々ならぬ努力の賜物なのだろう。
 年下の自分に幻滅されたくないと若々しく在ろうとする彼に対して自分はこれ以上何が出来るのだろう。
 やはりヒストリアの言うその作戦を実行すべきだろうか。そうだ、酔った勢いで今ならいけそうな気がした。

「ヒストリア!」
「わっ! いきなりどうしたの?」
「私、決めた。例の作戦、やってみる! 確かにいつもリヴァイさんからばかりだけど、飽きられてしまわないようにたまには女の色気ってのを出してみる……!!」
「そ、そう……(結構冗談のつもりで言ったのにな……海って本当に素直だからユミルもついついからかうんだ)じゃあ……今度のパジャマパーティーで今日の結果を楽しみにしてるね!」
「うん! 任せて!!」

 突然やる気になった海に相変わらず空回りしそうな彼女が心配そうなヒストリア。駅前で別れ、海はバス乗り場、ヒストリアは地下鉄でそれぞれ愛する人の待つ暖かな家へ向かった。
 スマホを操作しながらリヴァイに「今から帰ります」
 とメッセージを送信すればすぐに既読になり、「もう家にいる」と彼らしい相変わらずの飾り気も素っ気もない返信が来て、ついつい盛り上がって彼が帰る前には帰ろうと思っていたのについつい長居しすぎたな。と、反省しつつもバスに揺られ帰路についた。



「ただいま。リヴァイ、お仕事お疲れ様でした!」
「ああ、お前も」

 買ってきたチョコレートを見つからないように隠そうとしてる間に廊下の明かりが灯り、リビングで既に風呂を済ませて黒のルームウェアを着たリヴァイが迎えてくれた。
 アルコールが入っていたのもあり、先ほどヒストリアへ話していた宣言通りに彼へそのまま抱きつこうとすると、リヴァイは真っ先に「先にうがい手洗い消毒だ」と遮る。しぶしぶと洗面所へ向かった。
 買ってきたチョコとウイスキーは見つからないように風呂を済ませたならもうここに用はないはず。と、紙袋を脱衣かごへ隠しておき、海は満足そうにリビングの彼に後ろから抱き着いて微笑んだ。
 普段自分からスキンシップなどしてこない恥ずかしがり屋の海が自ら抱き着いて来て甘えてくるなど天変地異でも起きそうな勢いだ。
 しかし、普段甘え下手の女が甘えてくるのは男としては嬉しいものだ。まして年下の愛しい恋人。まんざらでもなさそうにリヴァイも彼女を抱き留め、ふわりと漂う神からの香りを噛み締めた。

「遅くなってごめんなさい」
「そうだな随分遅かったじゃねぇか、知らねぇロリコン野郎に誘拐されたか、はたまた女のくだらねぇ話で盛り上がったか」
「ふふふ、誘拐は大丈夫ですよっ。お酒も美味しくてお店の雰囲気もいいもつ鍋屋さん見つけて、美味しくて盛り上がってしまいました。今ご飯温めますね」
「相変わらずよく飲むな。あぁ、頼む」
「今日はリヴァイさんの好きなハンバーグですよっ」

 正直こんなに夜遅くまでと言いつつも、まだ19時ちょっと過ぎだが。
 リヴァイはこんな自分が誘拐されたりナンパされる程人目を惹く容姿はしていないと思うのに、いつも自分をちゃんと女性扱いしてくれて、心配してくれていたのか、そんなに長く出かけるつもりは無かったが、先にリヴァイが帰ってきて海の中でも申し訳なさが勝る。

 しかし、先に食べてていいと言いつついくらお腹を空かせても自分の手料理を楽しみにしてくれている彼は自分が出かけてもずっと帰ってくるまで何も食べずに空きっ腹にアルコールを流し込んで大人しくリビングで待っててくれているのだ。
 風呂上がりの彼からはいつも以上に清潔な匂いがする。
 普段セットされたクールな印象を際立たせている前髪は垂れ下がり、どこか幼げに見える姿に庇護欲をそそられ、二人は見つめ合うとうがいをしたのも確認し、抱き合いながらそのまま唇を重ねていた。
 その先の行為を連想させるようなキス。離れる唇が名残惜しいが、夜はまだまだこれからだとして。
 海は慌てて出かける前に調理していたワンプレートのお皿に盛り付けたキノコのソースのハンバーグや付け合せの彩りのいい冬野菜などをてんこ盛りにしてダイニングテーブルへ並べた。
 ふと、リビングの黒い革張りのソファで寝そべっていたリヴァイのテーブルの前に鎮座した箱に目がついた。見慣れたパッケージに海の中で嫌な予感が脳裏を駆け巡った。

「リヴァイさん……あの、それは……」
「あぁ、会社から毎年の義理チョコだ」

 どうやら今年のバレンタインは休日という事もあり、
 会社で毎年配られる義理チョコを貰ったらしい。しかし、例え会社のめんどくさい古臭い習慣の義理チョコだとしても、本命の自分より先に会社の女性たちが彼に一番に今年のチョコを渡したと言うその事実に海はずきり、と内心胸を痛めた。

 ただの義理チョコならそこまでで良かった。
 しかし、見覚えのある黒くシックな箱に刻まれたブランドチョコの刻印に海は思わず食い入るようにその箱と一粒だけ食べて残りは手付かずのトリュフを見て、今日自分が14日に彼に渡すために購入したあの紅茶入りのチョコだとすぐに分かり、ますます表情を暗いものにした。

「それ……紅茶入りの……」
「あぁ、こいつか。お前も知ってたのか」
「はい……多分会社の人たちも同じ催事場で買ったんですね」
「そうか。あの無駄に混んでる……クソまずかったから残りはお前にやる」
「えっ、」
「紅茶とチョコレートをこうやって混ぜちまうとはな、邪道だと思わねぇか?」

 大の紅茶過ぎで紅茶の専門店の会員でもあり会員しか入れない毎年夏前に開催される無料の試飲会にも参加している無類の紅茶好きで紅茶マニアの彼からして甘ったるいチョコレートと紅茶の組み合わせはどうやらお気に召さなかったらしく、ふんぞり返って変なものよこしやがったのに女全員に来月お礼するのかとイベント事に疎い彼には大迷惑なイベントでしかないバレンタインの洗礼にうんざりしているようだった。

「(どうしよう……別の買えばよかった……)」
「海、オイ、何ボケっとしてんだ」

 海はエプロンの裾を握りしめつつも、顔に出やすい自分の性格と察しのいい彼に気付かれぬようにと笑顔で誤魔化し、そのチョコレートを受け取って食べてみた。
 自分が試食した時は美味しかったのに、紅茶とチョコレートという組み合わせなら紅茶を寄越せばいいと口にする彼の文句に頷きながら内心肩を落としていた。
 彼に見つかる前に自分が買ったあのチョコレートは処分しないと。
 ――そう、心に決めて。



 ヒストリアと話していた例の、今夜はバレンタイン、自分から彼を攻めるという企み話はさっきのチョコレートショックにより海の脳内からすっぽり抜け落ちていた。
 やはりサプライズとはなかなか上手くいかないものだ。まして彼の意見を聞かずに紅茶味だからと安易にチョコレートを勝手に決めたのも自分が悪い。
 しかし、去年は散々だったバレンタイン。彼のために今年は料理も気合を入れて準備しようと思っていた矢先にまさか出鼻をくじかれるとは思わずに海はため息をついていた。

「うぅん、困ったなぁ、どうしよう……」

 お風呂の中で一人考えながら湯船に肩まで浸かり洗面所に置きっぱなしのチョコレートをどうにか処分しないといけないと、悩んでいた。
 どうせならばお風呂で今のうちに食べてしまえばいいんじゃないか。むくむくと膨らむのはそんな妄想。確かにその通りだ。そして包みはちょうど明日の燃えるゴミで出してしまえばこれでいい。
 もう一度明日催事場で別の商品を買い直さないと。
 海のバレンタインのプランはまた変更を強いられながらも確実に実行へ向かう。
 確かにまたあの女の戦場へ向かうのは骨が折れるが、だが最愛の彼に、
「まさかお前もうちの会社の女たちと同じ催事場で同じモン買ったのか」
 と。ガッカリされる姿をさせたくはない。
 彼に見つからなければ彼に呆れられることもないだろう。現在世界中で今自分だけである彼の妻でもある自分が彼の会社の人たちと同じチョコを買ったことに対してのショックもだが、そんな彼がボロクソに言うほど美味しくないチョコを買ってしまったことに対しての落胆も激しかった。

「どうしよう……去年もだけど今年も何もチョコレートも何もなし、じゃあさすがにリヴァイさんが可哀想だよ……はあああ」
「オイ、俺のナニが可哀想だと?」
「リヴァイさん……?」

 ふと、膝を抱えて湯船に今にも沈みそうなテンションの自分の背後から聞こえた声に振り向くと、そこに居たのは紛れもなく今の悩みの種でもある素っ裸のリヴァイだった。
 もちろん風呂場なので腰にタオルなど巻いていない。予期せぬ時に彼のそれこそ板チョコレートのように筋肉で凹凸のある剥き出しの裸体に海は素っ頓狂な悲鳴をあげた。

「うるせぇな、いい加減慣れろ。風呂もすぐ冷めるから一緒に入ればあったけぇじゃねぇか。それに裸なら嫌ってほど見てんだろ」
「そ、それとこれとは! 話が! わ、私! 出ます!」

 肌を重ねる時と明るい光の注ぐ浴室で彼の裸を見るのとでは全く意味が違う。
 どこに目線を向けたらいいのか分からず混乱し、あたふたと狼狽える海に目の前の裸一貫の男はどこか加虐的な笑みすら浮かべている。
 そう言いつつも本当は海が浮かない顔をしているのを見越してわざわざ一度浴びたシャワーなのにもう一度海とそれこそ裸同士の付き合いに至り、予告無くまるで忍者のように気配もなくいつのまにか風呂に侵入してきたのだ。

「ひえっ! 待ってください! あっ、見ないで!」
「うるせぇな、毎回見てんだろ。いい加減慣れろ」

 一番無防備な姿を彼に見られた羞恥に慌てて背中を向けたが掛け湯をし、湯船に入ってこようとしたリヴァイと入れ違いに逃げ出そうとするも武骨で逞しいその手の力にいつも翻弄されて二の腕をがっちり掴まれて逃げられない。
 完全に彼に囚われた。恥ずかしそうに控えめに揺れる胸元を隠す海の姿もリヴァイは余すことなくその鋭い眼差しが狙い定めるように凝視している。
 両胸を包むように隠したことで余計に細いのに柔らかさを引き立たせて胸の谷間が強調されて視覚的にリヴァイを満たしていることを知らない海、その自覚のない無防備さがより愛おしさを募らせた。

「たまには風呂もいいじゃねぇか。ガキじゃねぇんだからワーワー騒ぐな」
「で、でもっ!! 一緒にお風呂に入るとお互いの裸に慣れてトキメキが無くなるって、マンネリになるからダメってよく雑誌でも……!」
「うるせぇな。10代のガキのエロ雑誌の読みすぎだ。世間一般のご意見ばかり気にしてんじゃねぇよ馬鹿野郎、」
「あ、ひんっ、」
「もう少し色気のある声は出せねぇのか」
「っ……だって」

 勢いよく同じ浴槽に肩まで身体を沈めたリヴァイ。筋肉の鎧で重量のある彼が浴槽につかったことでなみなみとあったお湯が一気に溢れて床の泡が回転しながら一気に排水溝へと吸い込まれていった。

「あ……っ、リヴァイ……」
 そのまま背後から逞しい腕が自分を抱き抱えて離さない。彼の腕に湯船の中自分の胸がふにゃりと潰れるくらいに抱き締めてくるからときめいて仕方なくさせる。
 これ以上ないってほどに、その腕に彼に抱き締められ、素肌と素肌を重ねて。
 恥ずかしいのに、何度もこうして優しくも激しく淫らに肌を重ね合ううちに惹かれあいそして、あるべき所へ収まるように彼の腕の中は海の先程までの不安をかき消してくれた。

「はぁ……っ……んっ、」
「何だ、顔が赤いな……熱でもあんのか」
「多分、お酒飲んだから……」
「またしこたま熱燗でも飲んだか? この飲兵衛女、いい地酒はあったか」
「あ!! それがですね、聞いてくださいよ、私の地元の銘酒があったんですよ!!」

 いい大人なので、自分の限界も分かっているのもありアルコールも程よく入りそしてすっかり冷えた体を温め合うように寄り添い、たゆたうように。
 湯船の中で最愛の人と身を任せ瞳を閉じればそこは自分の何よりの楽園となる。

「そうか、」
「次は一緒に行きましょうね」
「道覚えてんのか」
「あっ!! お店の名前難しい字で読めなかった!!」
「馬鹿、」

 お互いに一糸まとわぬ姿で浴槽に浸かるこの光景ははたから見たら夫婦としてもごく自然なことのように見える。
 そのうちに子供が授かれば家族で一緒に裸の付き合いでもするようになるのだろうか。
 背後から自分を抱き締める彼へ向けて海が振り向けば間近に濡れた髪の毛をかきあげた彼の綺麗な額と眉間のシワが間近に迫る。
 無防備な状態で見つめ合えば、リヴァイの端麗な顔が迫り、先ほどよりも濃厚な口づけが送られた。
 彼と交わすキスは本当に気持ちがいいのだ。不快でしかない筈の彼の口から洩れた唾液も余すことなく海はごくりと口腔内へ吸い込み、そして――飲み込んだ。

「んんっ……」
「甘いな、」
「ひ……っ」
「それに、いつもより柔らけぇ」
「っ、それは……お湯の、中だから……」

 彼の唾液はまるで甘い媚薬のようだ。アルコールで浮かされた思考の中、温かな浴室は曇りながら裸で絡み合う二人の男女の情欲を駆り立てる。
 キスが深まれば深まるほど、リヴァイの舌が恥ずかしさから逃げ惑う舌を引っ張り出す。

「っ、んっ、あぅ……っ……」
 お湯の中で温められた海の柔らかな胸は重量のない温かなお湯の浮力でふにゃふにゃとまるで別の生き物のようにその姿をリヴァイの手の中で変えている。
 先端のぷっくり色付いた赤い実をリヴァイの指先が両手で挟むように摘めば、ビク、と身じろいだ海の長い髪が揺れる。
 ヘアクリップで無造作に束ねて濡れた後れ毛が張り付いた背中から項のラインをつうッと彼の舌がなぞり、リヴァイの薄いい形のいい唇が当たり前のように埋まっていた。

「ひ、あっ、リヴァイ……ンっ、」
「甘い匂いがするな」
「多分、それです」
「それ?」

 震える指先が示したのは海が愛用しているガラス瓶のボディスクラブだった。ガラスで出来ており、蓋は金属なのでそのまま濡れた状態で湿気まみれの浴室内に置きっぱなしは錆びるから早く使い切ってしまえと嫌がるが、海にとってそれは至福の週末の楽しみでもある。
 確かにこれを使ったあとの海の肌はいつもより滑らかで自分の筋肉でまとわりついている素肌へピッタリと餅のように吸い付くのだ。

「リヴァイさんも使ってみます?」
「俺が?」
「はい、私ごしごしやってあげますから」

 つい、先程まで会話していたヒストリアと接するような口調でさりげなく。海が自らボディスクラブをやると申し出たのだ。

「お前がやんなら……悪くねぇ(こいつ……普段恥ずかしがっていちいち待って待っての連発なのに時々とんでもねぇこと口にしやがる……)」
「じゃあ、やりましょうか……」

 あれよあれよという間に。その流れで湯船から出ると、裸同士で互いに見つめ合った。海は極力リヴァイの下半身の方は見ないよう、目線の少し上の、自分より上背のある彼の顔を見つめる。
 瓶の蓋を回し開け、ボディスクラブと一緒についてきた木で出来たスプーンでざらざらしたソルトスクラブを掬いあげ、まず一番彼の身体に触れても恥ずかしくない腕に触れた時、真顔でリヴァイは首を振った。

「ちげぇよ」
「へ?」
「胸、胸だけでやってくれよ」
「むっ、胸、ですか??」

 彼はアルコールを飲んでいない筈なのに。そしてよく見ればつい見てしまったが彼の下半身が先ほどのキスで確実に反応して硬くなっていたのだ。そして真顔でとんでもない事を海に命じた。普段の海なら恥ずかしがって無理だと、言うのに、このバスルームに漂う空気に毒されたのか、言われるがままにそのスプーンを奪われ、そのまま自分の両胸にスクラブが垂らされたのだ。火照った肌にひんやりしたソルトスクラブの感触が気持ちいい。
 まるでどこかの店のよくあるサービスを連想させるような卑猥な光景だ。しかし、そんなことは一切に口にせず、もちろんそんな性的サービスの店を利用した事もないリヴァイは無言で柔らかな両胸が自分の胸板に沈む感触にお互いの胸の先端をすり合わせるように、恥ずかしい筈なのに、普段の海はこんなことをするような子じゃないのに、懸命に自分の身体をその柔らかな両胸で必死にすり合わせてマッサージをしてくれるのだ。
 その光景だけで普段は静かな情欲がふつふつと湧き上がり、堪らなく興奮する。

「あっ、でも、どうやったら……」
「良いからそのまま続けろよ、勿体ねぇだろうが」
「はっ、んっ、」

 寄せた胸の谷間に、落ちた水滴が流れていくのがまた卑猥に映る。戸惑いながらも両胸でくまなくスクラブを塗り付ける海にリヴァイは完全にこの空気に呑まれており、下半身は熱を持ち、海が誤魔化そうとしても無言で目線を贈るものだから余計に腹に届きそうなくらいに反り返っていた。

「っ、んっ、っう……、」
「(あぁ、クソエロイな……乳首までビンビンにして)」

 すりすりと、脂肪で出来ている真っ白い血管の透けた海の両胸が持ち上げるように。部分が筋肉で完成された彼の肉体を擦りながら触れて、すでに硬くなった先端をかすめるだけですっかり彼の好みに開発された未開発だったはずの身体は今はもう触れて欲しくて仕方ない。
 リヴァイも意地悪だ。それを見越して手を使わせずにその柔らかな胸だけでスクラブを自分の身体に塗りつけろというのだ。
 適度に粘度のあるソルトスクラブだからこそ尚更卑猥だ。ローションを使ったことは無いが、一度使ってみて海が見せる今まで見た事のない卑猥な反応を見てみたいと、湧き上がる加虐心、そして、試したくなる自分が居た。

「っ、リヴァイさん、きもち、いい、ですか……?」
「海……あぁ、(イイに決まってんだろ。ヨすぎて堪らねぇな、そのまま、俺のも挟んでくれよ……)」

 彼の板チョコのようにバキバキの逞しい胸板から割れた腹筋をなぞるように。筋肉で覆われた身体を柔らかな脂肪で出来た胸で撫でていく。欲望に忠実な男は本能を剥き出しにして、屈むように俯いた海は先ほどヒストリアに言われた事を、実行に移したのだ。
 まさか思っていたことを見抜かれたのかと思うくらいにリヴァイは突然の海からの行為を仕掛けられたことに対して快楽よりもまず驚きの方が勝った。

「オイ、ッ、……っ、あ」
「(リヴァイ……ひっ、声が……気持ちいいのかな……)」

 既に完全とまではいかないが硬度を増した彼の反り返る自身を海は言われるがままスクラブのついた両胸の谷間にそのままむにゅうっと、効果音があるならそんなマシュマロみたいに自由自在に形を変えるふわふわの胸を両手で持ち上げるとその中心に彼自身を包み込みそのまま両胸で挟んで、擦り付けてきたのだ。
 海が達して力が抜けた後にまだ満たされずに落ち着かない暴れん棒を落ち着かせようと胸だけ借りて快楽に耽ったことはあるが、まさか意識もまだ定まった状態で海から胸を使って愛撫を申し出てくれるとは。これは男としては嬉しくないわけがない。

「あっ、リヴァイの、硬くなってる……」

 一体目の前のこの子はどこから仕入れてきたのだろう。またあの二人の入れ知恵か。まして、恋しい女が懸命に胸を使って収まりきらない自分の愚息を擦るってくれるとは思わず、リヴァイは踏ん張りながら真上から見渡せる絶景に浸る。
 ぬちゃぬちゃと音を立てて両胸で擦られ、硬くなるのも無理はない。

「海……」

 その光景だけで一発抜けそうだ。だが、それで抜くならやはり……リヴァイは暫し堪能した後、もういいからと彼女の胸を洗い流そうとしたその時、海は思いもよらぬ更にとんでもない行動に出たのだ。

「今日は……あの、ダメ。私が、リヴァイを気持ちよくしてあげたいの……」

 ぽつり、恥ずかしそうに、そう告げた海がシャワーで彼の身体に付着したスクラブを洗い流すと、そのままリヴァイは屈んで来た海の小さな口が開かれ、赤い舌がのぞくと、迎えるように、招く様に。そのまま下生えをかき分けて自分の既に臨戦態勢の愚息を頬張るように口にしたのだ。

「なっ、て、めっ、海……っ、く!!」
「んっ、あっ、むっ」

 いきなり自身を熱い咥内へ招かれるように吸い込まれ、思いがけない海からの愛撫にリヴァイは腰をびくびくと震わせながらもすっかり舌で傘の部分を舐められ、先端の敏感な部分を擦られて、咥内へ収まらない部分を手を使い懸命に奉仕してくれる海の姿に胸が高鳴る。海の小さな口いっぱいに収まる自分自身。それだけで猛烈にいろいろと爆発しそうだ。

「は、っ、ん……ひもち、いいですか……」
「あぁ、悪くねぇ……が、急に、っ、どうした、っ」
「こんな私は、いや、ですか……?」

 嫌なわけがない、むしろ大歓迎だ。支えを求めてくしゃりと真下の海の柔らかな髪を掴むと海は不慣れながらも懸命に自分をヨくしたくてした事の無い口淫をしてくれる姿に胸を打たれた。
 本当はあまり他人の雑菌だらけの咥内に自分のを加えさせるこの行為自体あまり好きではないのだが、恋しい女がこうして懸命に胸や舌を使って愛撫してくれる光景を明るい浴室でまざまざと見せつけられるとは思わず、いつも以上に興奮して止まらない。
 ただ、後でそれ相応の礼をしてやろうと企みながらリヴァイは達する寸前まで彼女から贈られる行為にただ、酔いしれていた。

「あっ、っ、海……も、いい、から、止せ……っ」
「っ、はっ、んっ、らめ、ですよ……私が、気持ち良くしたいの、いつも私ばかり、良くしてもらってるのは、いやっ……んむっ、ふっ」
「なっ、ンッ、ってめぇ、っ」

 膨張してますます膨らむ自身に苦し気に眉を寄せながらも歯をしまい、唇をすぼめて海の胎内を突くときのような動きを連想させるもんだから、それだけで達してしまいそうになる。

「んっ、んっ、」
「っ……ン、(十代のガキじゃねぇんだからよ……)」

 自分でも堪らなく興奮しているのが分かる。しかし達するにはまだもう少し刺激が足りない、だからといって、海の口の中で達するよりも自分は。
 ごちゅごちゅと、ぶちゅぶちゅ、と濁音交じりの音を発しながら愛撫をやめない海だが、慣れない自分からの行為に苦し気に眉を寄せている。

「んぅっ、ああっ、ン……!!!」
「っ、んっ……」

 とろついている先走りの苦いそれを喉を鳴らして飲み込みそれでも鼻息で懸命に愛撫する海の真っ赤な顔を見たリヴァイは我慢できずに海の髪を優しく掴むとそのまま前後に腰を動かし屹立を扱き始めたのだ。

「むっ、んむっ、あっ、んっ、ンンン!!」
「は、あっ、海……ッ! 悪ィ、も……出してぇ……っ」

 果てるなら海の中で果てようと思ったのに。しかし、目の前の欲望に本能が支配され、リヴァイは自分のイキやすい速度で海の頭を抱えるように前後の動きで腰を振りながら一気に海の咥内へ包まれるように達したのだった。

「っ、ンッ! ……っ、う、あっ、馬鹿っ! 飲むんじゃねぇよ……!」

 海のぷにぷにした柔らかい唇がぴったり吸い付きながら上下し、リヴァイ自身を扱きながらこくりこくりと注がれた白濁を制止の言葉もかけることなく、余すことなく飲み干しそのまま腹の中へ収めたのだった。
 まるで生き物のように喉を突き抜けるそののどごしは決してお世辞にも気持ちのいいものでは無いのに。不快感に眉を寄せながらも腹の中で逆流するように自分の吐き出した白濁を受け入れる海。
 かばりと口を開け、ダランと萎えた自身が出てきたのを見届け、海は舌を出し自分の細胞を余すことなく飲み干したと彼へ見せつけるようにへにゃりと力なく項垂れる。

「っ、は、お前は……馬鹿か……飲むなって言ったのに……腹壊したらどうすんだ……」
「ん、いいの、リヴァイの……お腹壊さない、別に、汚くなんか、ないもん……」
「お前な……」

 ヒストリアに言われたのもあるが、普段のクールで大人な雰囲気を纏うリヴァイがこんなにも頬を赤く染め感じ入るその姿に自分もその淫猥な光景に下半身を疼かせ、たまらなく夢中になってしまったのだ。

 自分の愛撫で最愛の男が感じてくれてるのが嬉しくて、海は夢中で彼自身を貪ってしまい、そして自分の中で受け止めたのだ。

「……っ、嫌、でした?」
「……嫌じゃなきゃ、こうはならねぇよ」
「あっ!」
「どうしてくれんだよ……なぁ、いつもイキよがってるのはお前なのに……そんなお前にイカされるなんて……」

 ズリ、と、いつの間にかまた緩く起ちあがる彼の屹立を押し当てられ、海の下肢の間から一切触れられていないのにくちゅりと音を立て愛液が満ちているのを感じた。

「海……何もしてねぇのに濡れてんぞ」
「あっ、それは……っ、ん、っ、」
「俺のチンコ咥えてたらそうなっちまったのか? なぁ、……海よ」
「っ、んっ、」
「お前、すげぇエロいな……こんなに……あぁ本当に……」
「っ、あっ、はっ、」

 ヌルっ、ヌルっ、と自身を緩くすりつければそこは何もしていないのにぬちゅぬちゅと卑猥な音色を奏で、海を誘う。
 早く、早く、許容範囲をとうに超えてる彼のサイズを受け入れるのならいつもみたいに彼の指と舌の愛撫でロトロに慣らさないと痛いかもしれない。だけど、今夜はもうこのまま一思いに突き上げて欲しい。
 それが海の素直な気持ちだった。

「海……このまま……挿入っちまっても、構いやしねぇのか」
「っ、んっ、あっ! い、っ、いい、よ」
「あ?聞こえねぇな……もっと、でけぇ声で、いやらしくお願いしてみろ……そしたら、もっとすげぇことしてやる……」
「あっ!すごい、こと、んっ」
「お前の大好きな奥までガンガン突いて……お前のナカに全部出してぇ……」
「っ、ああっ、」

 浴室の鏡に押し付けられ、そのまま片足を抱えられて彼自身が自分のナカにピッタリその亀頭を押し当てているのがわかる。
 こんなにも熱く脈打ってうねるナカに彼の逞しい身体に逞しいソレが……想像するだけでこれまで幾度も貫かれた身体はしとどに濡れてしまう。
 欲しい、彼が、欲しい。ずっと求めていた。
 身も心も全て愛してくれる人、満たしてくれる人。
 一方的ではない、独りよがりではない愛を注いでくれる。

 海は彼の頭を掻き抱くように腕を回すと必死に、途切れ途切れの声で懇願するように申し出た。

「お願い……っ、リヴァイ……っ、あっ、っ、んッ、私、のナカに……来て……っ、」
「あ? ナカってどこだよ?」

 しかし、求めてる答えを言わないと、リヴァイは絶対に与えてはくれない。代わりに中指がグチュリと音を立てて埋まり、海は甘く背を仰け反らせながら中指を締め付けながら恥を忍んで小声で、彼の耳元で囁くように懸命にお願いした。

 純粋無垢な海の雰囲気をぶち壊すあまりにもド卑猥な単語。リヴァイは満足そうに普段笑わない男が見せる笑顔にまた海は胸を疼かせ、そして鏡に押し付けられたまま、おなじみとなった両足を逞しい腕に抱えられて、されるがままに。彼の腰に足を絡めるとリヴァイの逞しい腰がそのまま真下から一気に……海を貫いた――。

 「あっ!ひ……ぁ、……んあぁぁんッ!!!」

 深い。あまりにも暴力的な彼の猛ぶりが、慣らしもせずに一気に真下から海の胎内を貫いた。微かに痛みを覚えたがそれも直ぐに無くなり、奥まで愛液で満ちていたのかぬぷぷぷぷ……と海の膣口はすっかり彼の、形になっていた。招き、受け入れた衝撃に海は仰け反りながらヘアクリップで束ねた髪を乱して、いつもの控えめな声ではなく、行為終盤の本気で感じている余裕のない鋭い声で叫んだ。

「んぁッ、あッ、んあああ〜!!! リ、ヴァイの、あっ深いッ、奥当たって、あ、いいっ、気持ちいよぉッ……あッ、あぁんッ!」
 一度達したはずなのに、むくむくと質量を増した屹立が、いきなり奥にあるコリコリした唇のような形状の子宮口を抉るように激しく突き上げてきたのだから休む暇もなく喘がされ、気が狂うほどの快楽に海はリヴァイに縋り付き思わず爪を背中に立ててしまうが、リヴァイは構わない。
 服を着てると分からないくらい小柄で細身なのに、脱げば逞しい筋肉を纏った身体はそこにどんなパワーが秘めているのか、海からの唇から送られた愛撫に応えるかのように性欲を増した彼は容赦なく下から何度も何度も突き上げて来るもんだからたまらない。
 海は我慢出来ずに浴室内で髪を振り乱しあられもない声を上げた。

「海……っ、すげぇ、な、何もしてねぇのに奥まで濡れてる……」

 その言葉のとおりにリヴァイが真下から貫く度にごぷッ、ごぷッと空気の混ざった愛液がリヴァイの亀頭に引っかかるように溢れて卑猥な音が止まらないのだ。
 ガクガクと震える膝を抱え直し、華奢な肢体を壁に押し付け、真下からの叩きつけるような激しい律動。
 痛みを無くすように普段の優しいストロークは最初からフィニッシュに向かう時の腰さばきになり、海は髪を振り乱して身悶えるしかない。

「ひ、ん!! いああッ、あ、やっ、も、そんなに下から激しくしちゃ、あぁんッ、だめッ……も、壊れちゃうからぁッ、あ、来ちゃ、……んアッ!イッちゃううッ……んあああぁーーッ!!!」
「は、イキたいなら、イケ、おらっ、俺にお前のイキ顔見せて、そのまま、ぶっ飛んじまえよ……っ」

 一度達したら何度でもイッてしまう。しかしリヴァイは止まらない。達してもなおも自身が達するまで容赦なく海を貫いた。
 リヴァイの下生えが海の控えめな恥毛に絡んで奥深くで混ざりあう。
 隔たりの無い生の彼の温度。膣は温度を感じないが、でも確かに温かい、彼が生きてる。それがたまらなく嬉しくも愛おしく。「あなたを愛しい」離したくないと、海は必死に縋り着いた。

「んぁ、っいくっ……また、い、っちゃう……っの、っ、あ、ひ、きもちい、ああっ!! いく、いっちゃう、あ、っ、ああっ!あんっ」
「あぁ、可愛いな、海……本当に、お前ってやつは……」

 どんどん、日増しに、自分に抱かれて開発されてしまった身体はもう彼無しでは生きていけないのと心から訴えている。
 それを証拠にそのすぐ上、淡い恥毛の中で隠れるように既に勃起し、突起を覗かせる海のさっきから自分の顔の前で律動の度にプルンプルンと揺れる控えめな海の可愛らしい両胸の頂きよりも皮が露出してむき出しの赤い粒を摘む。

「ひっ! あっ! んああっ!!!」

 すっかり硬くなり芯のある秘芽をヌルヌルとした愛液を纏いながらも二本の指で擦り合わせるように捏ねると、元々そこも愛撫されるのが大好きな海は嬉しそうにビクビク、ビクン!と身体を震わせまた弓なりに仰け反る。

「ひあぁッ……、あ、やぁ!! また、いって、る! っ、あっ、いやぁっ、だめぇっ、んぁあ!!」
「嫌、じゃねぇだろうが……嘘つくんじゃねぇよ……クリ摘まれんの大好きだろ、なぁっ?」
「ひぅ! あ、んぅ……っ!!! ひぁ、あぁ――、ダメっ、ダメえっ!! いやっ、あっ、みない、でっ、ダメっ、また、あうっ!」
「俺しか……見てねぇ……っ、だ、から、恥ずかしくねぇ、何度でもイケ、もっと俺を満足させろっ、」
「あああっ! んああ――っ!!!」

 リヴァイに言われた通りに海は何度でも達してしまった。決して軽くはないのに軽々と抱き抱えられたまま、好き勝手に揺さぶられて。かくかくと腰を震わせて、まるで生き物のように胎内が狭まって思い切りリヴァイ自身を締め付けてくるのだ。
 浴室ということで海も遠慮せずに潮を吹かせて既に半乾きの髪を振り乱して快楽に顔を歪める姿はあまりにも卑猥で、度重なる強い快楽で潤んだ視線の定まらない目をした海の中を突く度にぱちゅ、ぱちゅんと水っぽい音が撥ねる。

「あ――……っ!! ン、っ……!」
 リヴァイも余すことなく掠れたうめき声と共に白濁を今度こそ海のナカへ惜しみなく注いだのだった。
 くたりと自分の腕の中行き過ぎた快楽で今にも寝入ってしまいそうな海の頭らお湯をぶっかけられ混濁していた意識を強制的に覚醒させられた。
今度はお返しにとリヴァイから全身くまなくマッサージを施され骨抜きになった身体は彼のなすがままに再び浴槽に沈む。
 お湯はすっかり冷めきっており自分たちがどれだけいままで肌を重ねていたか。浴槽のお湯はその時間の流れを物語っていた。



「なぁ、今日は特別らしいな。まだまだ俺をヨクしてくれんだろ?」
「あ……ん、はい、……?」

 彼に容赦なく真下から貫かれて、ベッドではない浴室での交わりにすっかりヘロヘロの足元もおぼつかないまま。
 浴槽の縁に突っ伏すように凭れて休んでいた海へ、何を思ったのかリヴァイが嬉しそうな顔で突然湯船から姿を消した。
 そして、浴室を後にし、脱衣所から持ってきたものは。

「あ、それは……その」
「しらばっくれでも無駄だぞ。わざわざご丁寧にメッセージカードまでつけてくれたのか」
「っ!」
「「世界でいちばん大好きなリヴァイ、あなたは私のお日様です。これからも夫婦仲良く「ひゃあああああ!!」「うるせぇな、鼓膜破けちまうだろうが」

 先程海がリヴァイに購入したウイスキーの瓶だった。
 脱衣かごに隠したままにして彼目ざとく見つけられてしまったのだ。派手なショッキングピンクの色が先程の行為の余韻もあり、余計に卑猥に見える。
 こっそり処分しようと思ったのに。
 間に合わなかったと、隠す前に見つかってしまい落ち込む海にリヴァイはメッセージカードに書かれた丁寧な海らしい言葉の方が嬉しかったようだ。

「俺がマズイといったチョコも買っちまって、そんで隠してたのか」
「そうなの。その、ごめんなさい……処分しようと思ってて……」
「構いやしねぇ。お前のなけなしの金で買ってくれたんだろ?それだけで十分だ、なら一緒に食えばいい」
「あ、でも会社の人から貰って、マズイって……」
「会社の女共とお前が買ってくれたのは別だ。お前ならな、道端に落ちてるガラクタみてぇなモンだろうが、な、何くれても、嬉しいモンなんだよ」
「リヴァイ……」
「だから、今日はお前の言う通りにお前を貰うぞ。おら、さっさと座れ。そんで足を閉じてお前はそのままでいろ」
「え?」

 突然、リヴァイは足腰立たない海を浴槽の縁に抱えるように座らせたのだ。
 先程の激しすぎた行為により寒くはないが少しひんやりした浴槽の冷たい感触が臀部に触れる。
 何を考えているのか分からないうちに購入したピンク色のボトルのウィスキーの蓋を開けると、芳醇な蒸留酒の香りが浴室に溢れ、リヴァイの無骨な手が、そのボトルを傾けると、それは足を閉じた自分の太ももと彼の白濁を幾度も注がれた膣口へ、トクトクトク……と音を立て、太腿と下腹部の間に注いだのだ。

「えっ、あの……っ! それは……あっ、冷たい!」

 一体何をするつもりなのか。海は突然自分の下腹部の三角地帯に注がれるウィスキーに驚き、その冷たさに思わず足を開きかけるが、リヴァイの片手が自分の柔らかな太ももに沈むほど押さえつけられ力を入れて彼の言われるがままに零さないようにするしかなくて。
 アルコール度数の高いウイスキーの海が出来上がり、ゆらゆら漂う自分の控えめな恥毛が蒸留酒のオレンジの中で靡いていた。
 あまりにも卑猥な光景に海はたまらず足を開こうとしたがリヴァイがそれを許さない。

「あっ! やっ……だ、何、っ」
「一度試してみたかったが……ああ、悪くねぇ眺めだな」
「っ、怖い……滲みちゃう……!」
「怖くねぇよ、ちゃんといつもみてぇに舐めてやるから」

 あっさりと、とんでもない言葉を口にしてリヴァイの黒髪がそのまま蒸留酒の溜まった三角地帯へ唇を寄せてきたのだ。

「ひっ……あっ、あぁんっ……」
 彼の見た目より長い睫毛と瞳がフッと伏せられて。みるみるうちに内腿の隙間から逃げていくウィスキーをズズズズッと音を立てて飲み干していく光景はあまりにも淫らで。
 海はそんな淫猥な光景を見せつけられ思わず身をすくめ、弱々しく声を上げた。

「ひ、……あっ」

 リヴァイのザラザラとした、刈り上げの部分を掴むように、きゅううと下半身が切なく疼く。今日は自分が彼を気持ちよくしたいとヒストリアと約束したのに、結局は自分は彼のされるがままで。
 彼のサラサラの普段とは違うノーセットの黒髪がお腹を掠める感触や自分の太腿を抱えるように抱き締める腕の逞しさ。ごつごつした感触に敏感に反応してしまった。

「んッ、あっ……リヴァイ、」
「ん……」

 徐々に股の隙間から流れていくウィスキーを余すことなく喉を鳴らして飲み切ったリヴァイが顔を上げた時に彼の目線とかち合い、その獰猛な猛禽類のような、目つきの鋭さと欲を孕んだ眼差しに海は恥ずかしくなり、また目をそらす。

「何だ、」
「っ、あの……っ、」

 目を逸らしたのが気に入らなかったのか。飲み終えたリヴァイが海を睨む。顎を掴んで無理やり目線を合わせてきた。

「お前、細いからだいぶ隙間から溢れたな、もっと食って肉付けろ」
「っ……そんなの、あっ……っ、」
「お前はそうだ、知らないままでいいんだ……分からねぇことは俺が全部教えてやるって言っただろ?」
「っ、んっ、ああっ、」

 口移しでリヴァイが自分の恥毛に注いでグラス代わりに飲んだウイスキーが口腔内へ流れ込んでくる。お酒には強い海でも、さすがに激しく揺さぶられた後の飲酒はいつもより酔いが回るのが早い気がして。

 リヴァイの、口から注がれたウイスキーは何処か卑猥な味がした。さすがにもうこれきりだろうと思っていたのに。そこから深まるキスは止まらず。リヴァイの舌が自分の情欲をまたさらに引き出してくる。

「は、……あっ……んっ、」
「可愛いよ、お前は……俺だけの、」
「っ、あっ、わた、し、可愛くなんて……」
「お前はいつまでも可愛い俺の嫁だ、ホワイトデーはこんなもんじゃねぇよ……楽しみにしてろ、」

 浴槽の縁に腰掛けた海と激しく舌を絡ませあい、そして引き出された欲望の中で海は潤んだ目でいつも以上に甘い言葉をくれる彼の姿に泣きそうになりながら、そしてまた今度は背後から彼を受けれていた自分がいた。

「あ、っ、ヤダ、っ、なんで、また、元気になるの、ぉっ、あっ!! ゃ、あぁ、っ、きもち、いっ、おく、きもちいっ、だめ、いっちゃ、あぁん!」
「っ、く……あぁ、すげえな…持っていかれそうだ…っ」
「いく、いっちゃう、やあぁっ!」

 アルコール混じりの下腹部。彼の自身を受け入れた粘膜からもダイレクトにアルコールを吸収し、海はすっかり酩酊していた。
 そんな海の淫らに乱れた姿に酷く興奮したのか、男はまたもや雄々しく勃起している自身に「幾つのガキだ」と、苦笑しつつも、甘い甘い買ったチョコレートをお互いの口の中で溶かし合うように一粒、また一粒と、味を確かめる。
深く、味わうかの様に互いの口で溶かし合い、普段の潔癖症の彼しか知らない人間からすれば驚くほどに、ドロドロにとけるくらいに。海を求めていた。

「なぁ、見ろ、お前の中でチョコも溶けてくぞ」
「あっ、はっ、んああ〜〜ッ!!」
 海の中でチョコも溶け合うくらいに。これまでにないほど、二人は隔たりを無くし、愛を激しく求めあった。
がっちりホールドされ逃げられないまま自分の

「ああっ、あああ〜〜〜っ!!」

 今度は背後から。交尾をする獣のように繋がり合う。肌を打ち付ける音、ぐちゅぐちゅと結合部から漏れる濁音、ひっきりなしに止まらない海の嬌声が浴室に反響し、アルコールを摂取しグラグラとした思考の中で律動の度に激しく頭を揺さぶられ本当に思考が混ざり合いおかしくなりそうだ。

「もっと、気持ちよくしてくれるんだろ?」
「あぁ、っ、あっ、んっ、ちゅ、っ、んっ、」
「っ、本当、にお前は、キスが好きだな、」
「んぅ、すき、リヴァイ……すき……もっと酷くして……私のこと、あっ、めちゃくちゃにして……」
「お前……明日どうなっても知らねぇぞ」
「ンンン〜!!」

 結局、彼を私が気持ちよくしたい。と申し出ておきながら、彼に心から愛され満たされているのは自分なのだ。何度高みに達しても決して腰を振る事を止めない彼に心ゆくまで抱かれ、海は結合部から彼の吐き出した欲を溢れさせ、互いの汗と体液にまみれながら、バスルームでの夜は更けていく。また仰け反りながら尽きるまで彼の腕で甘く果てるのだった。

Fin.
2021.02.12
【×2021 Valentine's Day】

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