Going Under | ナノ
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【体温】

 ※灰色の続き

 男は久しぶりにマンションに帰り、ほとんど海外で仕事している叔父の飲んでいない冷蔵庫の缶ビールのプルタブを開け、一気に流し込み飲み干した。病弱な母親は入院している。
 家に帰っても迎える人は誰も居らず、余計にやるせなくさせ、男はどんどん荒んでいった。ふつふつと後悔し続け自分を責め続け、夢の中でも安らぐことは無い。それでも、恋の痛手で人は死ぬ事は出来ない。
 生き続ける限り欲求が溜まるのが男の性。もう若かりし頃の女遊びなとはとうの昔に卒業した。店に行くのは潔癖症の男には絶対に体験してはならない禁断の領域、つまり到底無理な事。ならば、
 「しゅ、主任、……んんっ、」
「リヴァイ……さん、」
「んんっ、あっ、ああっ……ダメです……変に、なってしまいます」

 どうせ眠れやしない。頭の中を過ぎるのは……。仕方なく妄想に逃げ、1人で慰めるも白濁した欲望をティッシュに吐き出したあとに残るのはやるせない賢者タイムという名の無価値で、生産性もない無駄な時間。
 自慰行為などモテない年齢イコール童貞の魔法使いか、妻が妊娠中か倦怠期で相手にしてもらえない虚しい男のするモンだと思っていたのに。
「(こんな偽者なんかじゃ、全然気持ちよくねぇんだよ)」
 男はあの日の夜のことをオカズに彼女によく似た女優の出演しているビデオをネットで漁った。しかし、見た目は確かに似てる気がするが、声が違う。海の声はもっと甘くて、たどたどしくて・・・やはり空想でスるのと生でヤるのはまるで訳が違う。これではない、ネットで買ったただキツいだけのアダルトホールではなく、キツさの中に絡み付いてきた海の体温を、甘い声を耳にして、感じたいのだ。



 忘れもしない、あの日の夜のことも、あの日も、それに、あの飲み会の夜がこれまでの行為の中で1番だと思った。
「それじゃあ俺はこっちから帰ります〜」
「ったく、途中で寝るなよ」
「お疲れ様でした」
 海が幹事を務めた暑気払いの帰り道、すっかり酔っ払った一同と別れて、男はまだほろ酔いにもなっていない海を連れてそのまま二次会だと行きつけの居酒屋に連れていった。
「幹事もやってもらって悪かったな」
「いいえ。幹事なら慣れっこですから」
 この居酒屋はペトラに相談事だと言われて行ったこともあったが、海を連れていくのは2度目のこと。美味しい日本酒を一緒に飲んでくれる酒豪のザルは海だけだった。まともに自分と対等に飲める女だと嬉しさもあり。ついつい財布の紐を緩めて海を飲ませすぎてしまったのだ。そして、閉店間際、初めて海にキスをしたあの日の夜を男に思い出させていた。
「海……」
「えっ、リヴァイさん……?」
 帰り間際、フラフラとした足取りでタクシーに乗ろうとした海を引き止めたのは男だった。今夜は離したくない、酒の効果もあってか男は大胆にも海を連れ、誰が寝たか誰の体液が染み込んでるか分からない汚いホテルではなく、自分のマンションに連れて帰ったのだ。
「リヴァイさん、あの……私っ、んんっ」
「なぁ、酔ってるんだよな?そんなフラフラの足で、今にも倒れちまいそうなのによ……大人しく家に帰すと思ったのか?」
「そ、それは……あの……」
 どうしていつも海は脱がせやすいワンピースタイプの服ばかり選ぶのだろう。ふんわりした雰囲気の海によく似合うし、可愛いと思うが、これでは簡単に他の男にも脱がされてしまう。
「あ……っ、だめです……」
「嫌ならこの格好で帰れ」
「っ……意地悪、しないでください……」
「悪い。嘘だ」
 背中にあるチャックを下げて、ストンと足元に落ちる海のワンピース。そして、キャミソール1枚のストッキングから透ける柔らかいが、筋肉質のしなやかな足や下着姿に男は猛烈に興奮した。海の涙目で今にも自分に捕食されるのを、待つだけの庇護欲を煽るだけの表情さえも愛しくて。
「つ……んっ、そ、そういえばあの、ここって……?」
「今更か? 俺の家に決まってんだろ。」
「で、でも、確か、おじさんと一緒に暮らしてで、ほとんど寄らないんじゃ……」
「あいつは気にしなくていい。どうせほとんど日本にいねぇ」
 薄暗い寝室の真っ白にピンとシーツが張られた清潔なベッド。1人で眠るには余るクイーンサイズの寝台でリヴァイは海を抱き締め何度もキスをしつつ下着姿にさせると、海は清楚な見た目には不釣り合いな下着姿で男の視覚も楽しませてくれた。
「あっ、ああっ! リヴァイさ……ん、っ、んんっ!」
「相変わらず、顔に似合わずなエロい下着だな。紐か」
「ん、だって……リヴァイさんが……つけてこいって」
「ああ、そういえばそうか」
 そうだ。従順な海は何でも言われた通りにこなしてくれる。今夜の飲み会の後の話も、恥ずかしそうに俯きながら。それでも、自分なりに考えてきたのか清潔さを好む男の為にこさえた白レースに縁どられた薄い桜色の可愛らしい下着。無理やり自分に合わせようと背伸びしたいじらしい黒など、海には似合わない。
 プレゼントの包みを解くように無骨な手は海の下着の紐を解き開くと、クロッチの部分からは既に期待を込めた愛液が糸を引いていた。
「は。何だ、お前も期待してたんじゃねぇか」
「っ……」
「泣くな、俺もだ」
「あっ、や……っ、」
 恥ずかしそうに俯く海の小さな手を取り、スラックス越しの既に熱を持ち始めている自分自身に触らせた。凶器にも似た自身は今までにないくらい張り詰め、今からこれでお前を抱くぞと、予告し、その熱い感触に頬を赤らめながらも自分を見つめる潤んだ瞳が離れない。
「あっ、んんっ……!」
 身につけていたホックを外し、全て自室のホコリひとつないフローリングに落とすと柔らかな胸に桜色の双丘があらわになって、相変わらずの肌の美しさとブルーベースと呼ばれる海の肌の白さに驚きながらも男は果実のような頂きに吸い付いて自分の手に収まるサイズの柔らかな美乳をゆっくり揉みしだいた。
「あ、あんまりおっきくないので・・・……触らないでくださ……あ……んっ、んんっ、」
「大きさなんか関係ねぇ、こんな真っ白で綺麗な胸じゃねぇか。美味そうにビンビンにして赤くして……早く触って欲しそうにしてるのによ」
「あっ、ああっ!」
「もっと寄せてろ」
「えっ……!?」
 急に下腹部へ降りる男の顔に海は戸惑い頬を赤らめて。俯きながら男のされるがままに翻弄され、何度も男の指と舌でイカされてしまった。ビクビクと痙攣し、あまりの快楽に恐怖さえ覚えるのか怯えた涙を含んだ大きな瞳から睫毛の先が震えて・・・目の端も赤く染まって、男の真下で広がるその光景があんまりにも卑猥で・・・身体の柔らかい海はどんな体勢でも痛くはないのか無防備に広げられた両足の間はこちらから見ても赤く色づいて尻の方まで愛液をトロトロと垂らしていた。
「っ、ああっ、はぁっ……ああっ……も、無理です……」
「無理じゃねぇよ。これからだろうが」
「ああっ! あぁ……んっ! だめぇ! だめええっ!」
 敏感な赤い粒を剥いて、舌で吸い付くと海は仰け反らせていやいやと身をよじらせるも逃がさないように海の下腹部にのしかかりながら男は思い切り吸い取った。
「お前、挿れるとすぐダメになっちまうからな、だから、もう少しコッチで慣らしてやるからな」
「ひ、んうっ……あぁあっ!」
 散々、甘い声が枯れてしまう迄。清楚な見かけと淫猥な姿とのギャップ。AV女優顔負けの乱れっぷりにずっと行為に不慣れだと言っていた恥ずかしがりながらも大胆な海をここまで淫乱にしたのは男だと言う暗い優越感。海が強い刺激に耐えきれず達したことにより顔に飛んだ愛液さえも決して穢いとは思わなかった。
「っ……ああっ、深いいっ!」
「っ、く……ホントに……いつも狭いな……動かねぇとイッちまう」
 メリメリとめり込ませながらも腹まで反り勃った自身を埋め込み、男は相変わらず締め付けてくる胎内の締め付けに眉を寄せた。海の両膝を抱えると胸まで押し付け、真上から叩きつけるような挿入のまま律動を開始すると、そのまま激しい水音を立てて一気に高みへと持っていく。
「ん……! んんっ! あっ、あっ、ああっ!」
 避妊するのが男の義務なのに無垢な海の家や潔癖で汚すのが何よりも嫌いな自分の家にそんなものがあるはずもなく、中断してコンビニにひた走る。そんなシュールな光景、そんなことしたらお互い途中で萎えてしまう。
「海……っ……出して、いいか?」
「あっ、んんっ、いい、ですよっ、来て……来てくださ……っ、ああっ、んあああっ!」
 それなのに、そのまま避妊もせず続行してしまい溜まりに溜まった欲を全部吐き出し今も反省している。しかし、海が悪いのだ。海も男に期待を持たせるようなことばかりしたから。
 婦人科の病気の治療の為にピルを処方していると馬鹿正直に告白したり、それでも性感染症は防げないし、確実に妊娠しないわけじゃないから避妊は必要なのに。
 甘い声で「ナカに出して」なんて。海の麻薬みたいに染み込むような普段とのギャップに当てられて続行してしまった。ナマで性行為をしたのは初めてだったが、ナマがあんなに気持ちいいなんて知らなかったし、海の胎内は入口の上がザラザラしててそこに自身を擦りつけると頭が一気に真っ白になり早漏並みに達してしまって、海の胎内に余すことなく注いでしまって。
「っ……くっ……は、っ、あっ、」
 さっきから、振りたくる腰が止まらないのだ。そう、全ては海が悪い。今まで色んな女と関係を持っては見たが、どれも付き合うまでに至らなかった。幼い頃から一緒だったペトラはとてもそう言った欲望の対象になりはしなかった。
「盛りのついたガキかよ……」
 だからこそ、自分がこんなに、女に夢中になったのは初めてだった。海が処女じゃないと知り、多少頭にきたが海も自分と同じく顔は幼いが決して子供ではない。それなりの年齢を重ねてるし、ましてこんなにも世話のやける海を放っておく男はいないだろう。危なっかしくて守ってやらないと簡単にどこかに連れていかれそうなのに。
「(ああ、……ヤリてぇ、ヤリてぇ思いっきりガンガン突きまくってアンアン言わしてぇな……ヤリたくてたまらねぇ)」
 吐き出したティッシュや使用済みのオナホールをコンビニのゴミ袋に全部投げ込み固く口を縛るとリヴァイは静かに浴室に消えた。
 あの夜自分の家に海を招き入れたのは失敗だった。未だにどこもかしこも海の記憶が染み付いていて離れないし、行為の後に一緒に入った風呂場も抱き合ったベッドも冷蔵庫の前で飲ませた飲むヨーグルトを持ってニコニコ笑う海。何度吐き出しても胸のモヤモヤも頭の中の煩悩もとても消えてはくれなかった。存在を忘れるなと部屋が男を責め立てる。そう、これが罰ならば。許された安息の場所など、海をズタズタに傷つけた男には、もうどこにもなかった。

 Fin.
 2018.09.15
 2021.01.08加筆修正
【体温】

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