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【Behind the scenes28 side heroin】

浜辺で倒れていたエミリオと出会ってから半年が過ぎて、季節がふたつも流れてこのまま彼とずっと一緒にいられると思っていた。
リオンからエミリオと呼ぶことに慣れてきた。違和感もなくて、当たり前のように教えてくれた本当の彼の名前を呼べばエミリオはいつも振り向いてくれた。
いつからだろう、初めは生意気な年下の男の子、そう思っていたのに。私のために走ってくれたこと、助けてくれたこと、本当は優しい笑顔を知れば知るほどもっと知りたくて、寂しい瞳を隠している背中を追いかけるようになったのは。

あの日の夜のことが今も忘れられなくて、思い出すだけで身体が疼いてたまらなくて。彼の居ない1人の広いベッドで自分で自分を慰める日もあった。

好きだと、思いを打ち明けてそれから・・・、でも、私の求める答えをどうしてもエミリオに同じように要求できなかった。
私のことなんてきっとなんとも思っていない。だって、思いを打ち明けた時に見せた悲しい瞳が今も忘れられないし、私を抱いたのも、きっと若い盛りだからそういうことにも興味のある年頃だから、手頃な私を抱いたのだと思っていた。
きっと今もエミリオはマリアンさんが好きできっと私をマリアンさんの代わりだと思って抱いたのだと、だから私は姿の見えないリオンが唯一思うきっと美しい女の人に嫉妬していた。

それなのに、どうして私は断ち切れないのだろう。また簡単に流されてしまうのだろう。身体だけの関係なんて虚しいだけだと、偽りの恋なんていちばん嫌だと分かっているのに拒めなくて。嫌なら突き飛ばせばいい、私のことを好きじゃないのなら期待させないで、出て行ってとそう言いたいのに。

でも、でも、今だけは・・・今だけは。マリアンさんの代わりだとしても構わない。私のことを好きじゃなくてもいい、
痛くても辛くてもエミリオに抱かれたことが今も夢みたいに幸せだったから。あの夜をもう一度だけ。

友里ちゃんに教えて貰って着付けた浴衣は簡単にエミリオの手で解かれて、合わせ目を開かれて浴衣用の肌着が露になった。深く深く絡み合うようなキスをして、ビールを飲んだから、その熱に浮かされ視界もグラグラと回る。残暑の残る部屋の暑さに汗も止まらない。そのまま玄関を抜けて辿り着いたのはリビングで、冷たい床に押し倒されるとリオンは早急な手つきで私の身体を触る。


こういう風にエミリオに組み敷かれて、見上げるように見つめるなんて思わなかった。あの夜は乱暴にするとか酷くすると言ったのに20歳すぎても行為をしたことがない私を馬鹿にすることもなく初めての私を気遣うように優しかったエミリオは次の日には冷たくて、今まで背中を向けていたのにまたこうして見つめ会えたことが嬉しくて。幸せで。

暗闇の中でエミリオが私を見つめている。微かな街灯が昼間から開けたままのカーテン越しに射し込む中で黒いふたつの光が見えた。
私を見つめる目線にそれだけでも身体の芯が疼き、あの時感じた痛みの中に見つけた快楽をまた彷彿とさせた。

「ん・・・っ、」

エミリオの骨ばった手が私の下着をたくしあげて露になった両胸を掴んでゆっくり、優しく溶かしてゆく。決してお世辞には大きくない胸をまじまじと、暗闇の中で見られて恥ずかしいのに、彼はそれだけじゃない、もう既に硬くなっている先端にそのまま吸い付くと舌で転がしたり、指先でつつくように触るからますます羞恥を煽る。
恥ずかしくてたまらないのに、身体が疼いて止まらない。エミリオを思って1人慰めた夜も見透かされていたのかと思うくらいの手つきに顔を隠そうとするとそれはダメだと無言で両手首を簡単に片手でまとめあげると頭上に掲げて。

「待っ、て、せめて、お風呂に・・・」

初めてだったのにお風呂も入らないでエミリオとあの時行為に踏み切ったことが今更ながら悔やまれる。潔癖なエミリオが私とこういう風になるなんて。まだ年下の若い男の子のエミリオにはまったく縁遠いものだと思っていたのに。

やっぱり、エミリオも男なんだと、実感させられた。でも、それなら下着だって香りだって、もっといいものを着けていたのに、お風呂に入りたいと促すとエミリオは一瞬動きを止めた。ああ、浴衣で汗もたくさんかいたから、止めてくれると思った、けど、エミリオは何を考えているかわからないまま、始まった行為を中断することなくむしろ理性を奪うように深くキスをしてきた。

深い深いキスを受け止めきれず呼吸もままならない。
酸素を求めて息継ぎをすると暗闇の中でエミリオが微笑んだ気がした。

その表情はよく分からない、今だってどうしてリビングのソファに私を押し倒してるのかも良く分からなくて。
着ていた浴衣はフローリングの冷たい床に散らばり、素肌が皮の冷たいソファに当たる度にひやりと感じて身じろぐとエミリオにするりと履いていた下着を脱がされて、そのまま入口へ触れる。

「っ・・・!」

お願いだから、どうか気付かないで。
さんざんあの夜を想い出して夜な夜な1人で慰めてたこと、エミリオが触る前に期待と胸の高鳴りにそこは容易にエミリオの指をしとどに濡らしていた。

「海・・・っ」
「やっ・・・んんっ・・・」

低いエミリオの声が耳を掠めてゾクゾクした。声だけで濡れるなんて、糸引くそれを太ももに擦りつけられ、卑猥な音と無意識にエミリオに触れられるのを望んでこんなに濡らしていたことを見抜かれて羞恥に目をそらすも逃げ出せない。初めてエミリオと繋がった時、あんなに痛くて、血も出たしまるで火傷したみたいにヒリヒリしてたまらなかったのにでも、それを拒むことも出来ない。
痛みでもいい、エミリオにまたこうして求めてほしいと願い続けて私は身体の力をなるべく抜いて身を委ねる。

違和感と微かな痛みとともにそっと中指が私の中に入ってくる。それは私を気遣うようにぎこちない手つきでゆっくり動く。でも、ちっとも気持ちよくない。ただ痛いだけで、
微かに眉にシワがよる。そうじゃない、もっと、欲しいのは・・・

するとエミリオはそれを理解したのか無言のまま私の太ももに両手をかけてそっと開かされ思わず息を呑む。そうして、エミリオは当たり前のようにまた私のそこに、顔を埋めてきたのだ。

「んんっ!やぁっ・・・!」

胎内には指を埋め込まれて、その上の突起はエミリオの舌がねっとりと絡んで、強すぎる刺激に目を見開き、余計に愛液が増した気がして垂れた冷たいそれは私の愛液かエミリオの唾液か考えたくもなくて、耳を抑えて首を振ると余計にエミリオはそこを一点集中して攻めてきた。

「っ・・・んんっ!」

下の突起をねっとり舌で絡めてそのまま扱かれ、無意識に力の入る太ももも押さえつけられ、その細身なのに強い力にも男らしさを感じて、身震いした。

「んあ・・・っ!だめぇ、だめっ、」
「っ・・・」

そこは自分の身体では無いみたいに熱く燃えるようで、ジワジワと、汗が滲んで噛み締めた唇から漏れる声も止まらない、さっきまで何も感じなかったのが嘘みたいにエミリオが突起を舌で転がす度、胎内に突き立てた中指を往復させる度に乾いていたそこは潤いを増して暗闇の中で聞くに耐えない卑猥な音を奏でた。エミリオはどんなに私が声をあげても行為を止めることはなくて、無言で私の下肢を重点的に愛撫した。あんなに痛かった前戯が行為に不慣れでも容易に快感を感じる突起を舌で転がされる刺激は心地よくて気持ちよくてたまらない。
中指の他にいつの間にか人差し指も加わり、エミリオは下肢への愛撫を続けながらも空いた手で胸を持ち上げるように揉みしだき、先端の硬くなった突起への愛撫も忘れない。

「あっ・・・ダメ、だめっ・・・エミリオ、っ、おかしくなっちゃうから、あっ・・・んんっ・・・!」

自分で慰めてたのもあり、そこはエミリオの指が往復する度に濡れて粘着質な音を立てる。往復する指の刺激と突起へ同時に愛撫されて、突如鋭い閃光に貫かれるように意識が一瞬飛んで弓なりに背を反らして力なくソファに崩れた。脱力しながら私は自分の指でなくエミリオの指先で初めて果てたのだった。

「ん・・・エミリオ・・・っ」

落ち着かない思考の中で息も絶え絶えになった頃、エミリオも暑いのか分からないけれど沈黙の中で甚平を脱ぎ捨てた。言葉なく私を抱くからどういう心境なのかさっぱり理解できない中、私はもう何も衣服をまとっていないのにエミリオは着慣れない甚平を着たまま行為に及んでいる事に、あの夜初めて繋がった夜もそうだったことを思い出す。

甚平を脱ぐエミリオの手を静止して、脱がせるのを手伝ってあげるとエミリオは何も言わずに私の手に引かれるように甚平をフローリングに投げ捨て、汗を吸収するインナーもボクサータイプの下着も脱ぎ捨てると細身の筋肉質な身体が露になった。暗闇でもわかるボクサーのように引き締まり凹凸のある綺麗に鍛えられた胸板から腹筋のラインに、腕の筋に、無性に胸の内が熱くなって思わず目をそらす。下半身は恥ずかしすぎてとてもじゃないけど直視出来ない。エミリオは私の裸をまじまじと見つめるけれど、わたしは男の人の裸なんて見慣れないのもあって目のやり場に困った。

「っ・・・」

どうしよう、ピルは生理不順を治すために飲んでいるから大丈夫だけどもこんな時にゴムなんて持ち合わせてない。まして元彼とはそういう行為には痛みの恐怖でなかなか本番まで踏み切れず前戯だけの行為を繰り返して結局繋がりあう前に別れたから、でも、エミリオの世界はきっと避妊するためのモノなんて存在しないのかもしれない。内腿にぴたりと当てられたそれは紛れもなく猛るエミリオの熱で。求められてるなんて勘違いしてしまう。馬鹿な女だってわかってる。

「エミリオ・・・っ、」
「海・・・」

でも、でも、私も欲しい、エミリオがどうしようもなく欲しいの。好きじゃなくても抱かれるだけで嫌な仕事も宙ぶらりんな関係も満たされる。
ゆっくり、遠慮がちに挿入ってくるエミリオの熱。でも、あの時に裂けたそこは今も痛い・・・。

「っ・・・」

思わず開かれた足に力がこもり、余計にエミリオを拒んで締め付けてしまう。エミリオも苦しげな呻き声をあげている。その声がセクシーで、身震いするとエミリオはゆっくり気遣うように胎内を掻き回していた指を引き換えに自身を埋め込んできた。

「んんっ・・・」

下腹部の違和感が拭えない。痛い、今すぐにでもエミリオを蹴り飛ばしたくなるくらいの痛みが勝り、気持ちいいとは決して思えない。幸せだけど、それでも痛いものは嘘もつけないくらい痛くてたまらない。
でも、ここで彼を拒んだら・・・。彼を拒みたくないからと、私の上に跨るエミリオを優しく抱き締めて口付けるとエミリオも同じく口付け返し、2人でどちらともなく舌を絡め合い深く深く繋がりあったまま私は意識をエミリオに委ねた。

それからのことはよく覚えていない。
ただ、起きた時には私はベッドで、身なりもきちんとしていたし、エミリオはエミリオで、何も変わらないまま相変わらずクールで、とても、あの夜熱い吐息を漏らして私を抱いた人とは別人のように感じた。

あの行為は夏が見せた幻だったのかもしれない。
そう思うことにしたけれど、朝着替える時に自分の首筋にちらりと見えた赤いそれは紛れもなくキスマークで、それはだれが付けたものかなんて明らかで。エミリオの熱い眼差しも鍛え抜かれた体も、今も鮮明に残っている。

忘れようと思えば思うほど忘れられなくて、私は今夜も1人で自分の熱を慰めるのだろう。

fin.
2018.04.27
※ピルにはいろんな用途がありますがピルを飲んでいるから生でセックスしても妊娠しないから大丈夫ではありません。
妊娠を望まない方は性感染症予防の為にもしっかりコンドームを併用しましょう。
【Behind the scenes28 side heroin】

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