Going Under | ナノ
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【always be my baby】

日曜日の、柔らかな夕日で暖かく染まる2人の寝室、すっかり朝寝坊を通り越し本当に1日中飽きることなく自分を抱いて眠る彼の腕の中で海はゆっくり微睡み、穏やかに眠るエミリオの幸せそうな寝顔を食い入る様に間近で、唇の乾きを直に感じるくらいに近い距離でゆっくり見つめていた…。

幸せな2人きりの時間に無意識に緩む頬が愛おしくて暫く見つめた後ずっと抱きついて離れない彼の腕の中から何とか這い出ると柔らかな毛布を素肌に巻き付けタンスの中からハイウェストのシフォンワンピースを取り出すと下着を身につけ袖を通して赤いエプロンを身につけ髪をシュシュで横流しに結んだ。

「エミリオっ、帰ってきてくれてありがとう、約束を…果たして、叶えてくれてありがとう、私の為に……ありがとう」

感謝だけでは伝えきれないたくさんの彼への募る想いを伝えたくて、形にしたくて、恥ずかしい気持ちを必死に隠してエミリオの眠る頬に優しくキスをして真っ赤な顔で部屋を後にし、キッチンに向かった。

かなり遅い朝食兼夕飯だ。頭の中でメニューを決め不意に左手の薬指の指輪を見つめ蘇る確かな今も尚鮮明に記憶に残るあの旅の記憶に馳せた…

―…神のたまごへと突入して、そして、たくさんの戦いを繰り返した、入り混ざり仕組まれた過去を克服してエルレインの最期を見届けその彼女さえもを力に取り込んだフォルトゥナ神をついに倒した先に待ち受けていた2人の定められた別れ…。

「海、お前も来い…!」
「エミリオっ…今まで、本当にありがとう…忘れない、ずっと貴方を忘れないから!私は貴方だけを、愛してる…すごく大好き…だったよ、」


海から告げられた別れの言葉に落雷を打たれた気がした。透け行く身体で懸命に仮面を外したジューダスは海を抱き寄せ、海も恐る恐る彼に手を伸ばすも、もう海には触れられないのは頭の中のどこかでは理解していた…。
一生分の愛を2人で刻み合った。光に包まれて消えてしまった彼を海は涙をこらえ精一杯手を振り2人は繋いだ手を泣く泣く離した。

必ず帰ってくる、その暁は、2人で今度こそ本当に戸籍以上の絆で強く結ばれた2人に、夫婦になろう…そう果たされない願いを交わして2人はそれぞれの在るべき場所に身を寄せた。

帰ってきてからも彼の居ない小さな部屋がとても広く感じられて…悲しくて涙が溢れるまで海は彼が残した指輪を抱き締めて声が枯れるまで泣き続けた。泣いて、泣いて、枯れない涙の意味を本当に身体で刻みつけた。それでも彼を思い出せば甘く切なく恋しくて愛しい気持ちがまたじわりと溢れた。

彼とは最初から別れる運命だった、それに気付いたのは…もう彼を好きになった夢中の後だった。
でも、だけれども2人が巡り会えたのは紛れもなく運命で…代わりに別れを最初から知っていたから2人はお互いを強く優しく、何度も求め合った…絆を深めて、許されない恋でも周りが祝福してくれた。そして、小さな結婚式を挙げて2人はその愛を確かな物にして別れたのだ。それからはただ彼を想いを願い、ピリオドの果てに待っていたのは本当に想像すら出来なかった未来だった。…果たされなかった約束を胸に、4年間の沈黙を経て…エミリオは帰ってきてくれた。自分の約束を守ってくれたのだ。
約束を叶えこの世界の人間へと生まれ変わり戻ってきた彼はこの世界で同じ時間を生きている彼…外見も中身も成長し自分よりも大人びた容姿のエミリオが自分を思い出し迎えに来てくれた…

不意に寝室から覗く脚を見つめ海はまた淡く微笑んだ。

「海」

そのカーテンで仕切られた寝室で、ダブルベッドの上でエミリオは枕に俯せで顔を埋め隣にある大切な海の暖かな癒しをくれる温もりを無意識に求めていた。同じく眠っているはずの海はもう起きて活動している事も知らずにエミリオは海の甘い香水の香りを残す枕を無意識に抱き寄せそれを海と寝ぼけ眼が認識し何度もをキスをする、溶けるように幸せそうな笑みだ。

離れていた時間が2人をもっと大人に変えて、見かけも顔つきも体格も、名前を呼ぶ甘い声も変わり果てたまだ馴染めない彼の姿に戸惑いながらもありがとう、そう呟いてまた笑った。君に出会えた、それが何よりの喜びと至福の時を君と味わえる幸せを抱き締めた。

「エミリオ、起きて」

洗濯物を片づけ、掃除を終わらせて料理も後は彼が起きてくるのを待つのみ、それなのに彼は全く起きる気配がないらしい、寝室のダブルベッドで長い睫毛を伏せてすやすやと眠るあどけないエミリオの寝顔を愛しそうに見つめて彼の剥き出しの背中にゆっくり触れた。

結婚をした実感が未だ馴染めなくて恥ずかしくて、でも、もう彼と別れが付きまとう不安な夜はもう二度と訪れないから…気配に敏感で、些細な物音にすら怯えすぐに飛び起きてしまっていた昔の彼とは違う、無防備な姿、それが何よりも安心した。

「エミリオ、ほら、ね…」
「う……んん…海」
「もぅ、エミリオ、それは私じゃなくて私の枕、だよ…」

何度も、何度でも
永遠に恋をしている大好きな彼の名前を呼ぶ。枕に抱きつく彼をゆっくり揺り起こすと不意に海は何かを思いつくと、さらさらと流れる肩まで伸びた彼の黒髪を耳にかけると眠る彼の耳元に唇を近づけた。

「にゃ〜…」

そして、頬の緩みを押さえきれないままそっと悪戯で猫の鳴き声を真似して見せたのだ。

「にゃ〜ん」
「ん……海…猫か、」
「にゃ〜ん…ん゛にゃ゛ーん」

すると、彼はどうしたことか、本当に寝ぼけているらしい、海の鳴き声を本当に猫と勘違いしてしまったのだ。

「…うぅ…隣の猫、か…海…」
「もぅ、起きて…!」

枕に頬をすり寄せたまま幸せそうな笑みを浮かべるエミリオに海は発情期特有の猫の鳴き声でもこりなかった彼をやっと起こした。

「海!?何だ…!」
「もぅ、エミリオったら、もう夜、だよ?早く、起きて。」
「…そうか…貴重な休みが…あぁ……」
「きゃっ、」

不意にエプロン姿の海を力強い腕が抱き寄せた。広い胸に顔を埋めて、エミリオは寝起きの眼差しを擦り愛しい女性であり同じ指輪を填めた可愛らしい奥さんを見つめると優しくおはようのキスをした。

「おはよう、エプロン姿も…可愛いな、」
「……!
っ…おはよう、エミリオ、」

昨夜さんざん海を抱いて満足したのかエミリオは上機嫌で火がついた様に赤くなる海の頬に愛しさを込めてキスをした。

「まだ、酔ってるの?」
「いや…違うさ。お前の夢を見てお前に会いたくなったんだ、改めて実感した、お前は可愛い、とな」
「っ…!」

あぁ、何て甘い言葉をこの人は言ってのけてみせるのだろう…昔の彼からは全く想像がつかない、否、これが本来の彼なのだ。幼少の頃からずっと殺してきた感情、信頼する人にしか見せない笑み…孤独に傷ついた心に導かれ運命的に出会った二人。もう離れない、強く抱き合い2人はまたキスをして暫しベッドでまた子猫の様にじゃれ合って笑みを浮かべた。
それから、エミリオがシャワーを浴びている間に海は夕食の支度を終え、彼の靴下と下着と着替えを持ち脱衣所に顔を覗かせた。
2人で仲良く彼の靴下を履かせあいシャツのボタンまで丁寧に留めてあげるとエミリオは感謝の意を込め海の左の瞼にそっとキスをした。

はにかんで笑いあって頬を染めて俯く幸せな雰囲気に満たされてゆく。心から慈しみを絶やさずこの瞬間を切り取り手放してしまわぬ様にアルバムに収めよう。もう前とは違う、日々を重ね相手を思うだけで狂いそうな甘く切ない名の知れぬ思いは高まるのに近づく別れに互いに交わすキスをどれだけ惜しんだろうか…もう数え切れない。迫る別れに涙を流す必要のない当たり前ではない幸せを噛みしめた。

ようやく遅めの朝食…ではなく夕食の時間になった。向かい合って海が用意したのは焼肉の具材、小柄な細身で聡明と愛らしいふたつの雰囲気を纏う彼女だが割と男前な食事を好む。

「…焼肉か、」
「うん、いや…だったかな?」「いや、お前に焼いてもらえるから好きだ。」
「もぅ、お肉くらい自分で焼けるでしょう?本当に甘えん坊さんなんだから、」

からかうような口振り、エミリオは興味津々にホルモンをつつきながら海を見つめ瞳を細めストレートすぎる思いの丈をぶつけた。

「勘違いするなよ、僕はお前にしか甘えないからな。」
「…っ、もぅ!」
「お前、可愛いな。」
「そんなこと…ないわ。
エミリオってば、ホストみたいにあま〜いこと、言うんだから…調子狂っちゃうじゃない、ふぅ…んしょ、っ」

なんてことを、素面だが彼からは何の前触れもなくとびきり甘い言葉が次々と飛び出してくる、冷蔵庫の上に置いたホットプレートを取ろうと手を伸ばすが止まったままの小さな体躯ではいすを踏み台にしても重くて難しいだろう…精一杯背伸びをしてがんばる姿もエミリオから見ればもう至極幸せで可愛くてたまらない姿だろう。
箸を並べ用意されたハイボールを見つめる横目でひらひらと揺れる海のエプロン姿に胸をときめかせ、自分と同じ瞳をしているから好きだと言う海の大好きなリキュールのバイオレットフィズもある。

海の姿を見ているだけなんて耐えられない、もう、我慢しなくていい、生まれたときからずっと手に入らないと信じていた温もりが今目と鼻の先にある、海の前で…海がくれた本当の真実の愛を求め続けたい、自分も有りっ丈の思いで答えて抱き締めるから。
こんなに愛しいと想うのは…自分でも驚くくらいに彼女に夢中になった。ゆっくり立ち上がるとエミリオはスラリと伸びた腕を伸ばし海を軽々と抱き上げると小柄な彼女の代わりにホットプレートをテーブルに置きまた笑みを乗せた。

「ありがとう、エミリオ。」
「何て事はないさ、」

海は高いものにある物品が届かないときやジャムの瓶を開けるときでもそうだ、遠慮がちな性格だから男である自分をなかなか頼ってくれない、昔とはもう体躯が全く違うのだ、背も伸びたし鍛え抜かれた体躯も、もっともっと気を遣う必要なんてないから素直に頼ってくれても良い気がするが…プラグを差し込みホットプレートを温め始める、油を敷き肉を焼き始めると海はエミリオの分もきっちり含めて丁寧に皿に取り分けていく。

「はい、エミリオ。」
「あぁ、」

ぎこちない箸の使い方もいつもよりはかなりマシにはなった方だ。皿に取り分けてくれた色とりどりの野菜から順に口に運んでゆく。昔から、大嫌いだった、これだけは二度と口にしないとあんなに誓ったはずの緑色に艶めくピーマンも、オレンジ色の人参も海の視線を痛いくらいに感じながら一気に飲み込み無理矢理後からこみあがる特有のあの苦みをハイボールで流し込んだ。荒波の様な激しい嘔吐感に襲われながらも無理して口に含むのは…彼女からよく食べれました、と柔らかな笑みが返ってくるあまりにも単純だが彼にとって単純では片付けられない理由だ。

「エミリオがピーマン食べれるなんてびっくりだね、」
「フン、何年前の話をしている。」

クールで落ち着いた男の素振りをして好き嫌いを克服したフリをする…少しでも年上の海に相応しい男になりたい、それと食卓を囲める、それが何よりの幸せで…だからこそ、海と過ごせる時間全てを有りっ丈の愛で包み込みたい。

ハイボールのグラスをからりと鳴らし、テーブルに肘を付き頬杖を突くと不意に何かを思い立ったらしい。

ゆっくり五本の指でグラスを、皿と箸を手に向かい側の彼女の隣にどっかり座り込むとニヤリと口角をつり上げ長い前髪から覗く瞳を細めニヒルに笑って見せたのだ。

テーブルを挟んで見つめ合う形で食事をするのが普段なのだが今日は違う、リビングの対面式のテーブルは1人ずつ座るタイプのイスではなく隔たりのない2人分が丁度肩を並べて座れる長椅子なのだ。だから肩を並べて座れる事ができる。

離れた4年の沈黙が2人をもっと大人に変えた。願いは果たされた、もう離れない…結婚をするのにもう永遠を誓い合った彼らに躊躇いもマリッジブルーもなかった。
2人はもう永遠の別れを知りながら愛し合い戸籍では縛れない強い絆で堅く結ばれていた、夫婦としてもう遮る物はなにもない。

「海が食べさせてくれないか、」

甘えた口振りで、エミリオは海を膝の上に乗せると耳元で今にもとろけそうな声で囁けばは蜘蛛の巣に掛かった蝶と同じ、二度と切れない糸に絡み取られ彼に翻弄されまた構築されてゆく愛に歓喜するのみ。

哀れか、確信犯だとお前は怒るだろう、しかし、そんな姿すら愛しくなる自分は末期の恋愛中毒かもしれない。それでもいい、いっそ海と言う名の海で溺れてしまいたい、馬鹿と恋に効く薬など要らない。自分は一生彼女に狂う愚か者だ。エミリオは秀麗な顔をあどけない笑みに切り替え彼女の柔らかな髪に顔を埋めた。

「はい、」

仕方なしに、そう自分に言い聞かせてみるがたっぷりレモン汁をかけた肉を箸で器用に掴み彼の口へ運ぶ毎、胸が弾み心が揺らぐのは何故だろうか自分でも分からなくなってくる、時折恋と言う名の魔物を末恐ろしく感じる時もある。

「おいしい?」
「あぁ…」

恥ずかしそうに自分の開いた足の間にちょこんと座り食べさせてくれる、首を傾げて問いかけてくる海が可愛くて仕方がない。まん丸の頭を撫でると恥ずかしそうにそれでも気持ちよさそうにいつもより薄い化粧に映えた長い睫毛が影を濃くし淡く微笑み胸にすり寄ってきた。
嗚呼だからそんなに無防備な綺麗な笑みを容易く見せないでくれ…弱いのだ、惚れた弱みがエミリオの静かな欲情を引き出してゆく、もう鼻先には愛らしい海の笑み、抱き締めれば華奢な体に感じる柔らかな女性特有の丸みを帯びた身体。もう、堅い理性は容易く紐を切り、この性が抗う事を許さなかった。

「じゃあ次はね…」

豚肉も焼肉のメインのひとつだ。箸で摘みそのままエミリオの口の中に放り込もうとした矢先…不意に、更に彼が自分に密着してきた気がして海は真っ赤な顔で身体を硬直させ息をゴクリと飲み込んだ。
勘違いではない、横目で肩を見やれば長い睫毛を伏せ自分の肩口に顔を埋めたエミリオの長い睫毛、端麗な顔を感じダイレクトに衣服越しに彼の熱を感じる、曲線的な海と対照的な筋肉質の逞しい成熟した男の身体を。

「あ、あの、エミリ…ん…え…?」
「飲め、」
「っ…!」

次に感じたのは…いつの間にか脚の間から彼の開いた膝の上に移動され座らされると顎を捕まれドキッとする位に色っぽい彼の表情が飛び込んでくると甘くない、ハイボールを口に含んだまま唇を開いた、

「ん…んん!」

柔らかい彼の薄い乾いた唇が触れ苦しそうに頬を赤らめる海の仕草がエミリオはそれすら愛しいのか、軽くキスをしてそのままハイボールを流し込み時々舌が触れるのにまた頬に熱を帯びる。飲み込めと鋭い紫紺が合図を促し海は舌が触れ合う恥ずかしさをぐっと堪えごくりとハイボールを飲み込むとアルコールが身体を火照らせてくれる。

「ふ…はぁ、はぁ…」
「…美味いか、」
「うん、」

漸く息継ぎを許され海は酸素を必死に胸に吸い込む。飲みきれないハイボールがエミリオの開いた胸元にばたりと零れ落ちた。

「お前のも、飲ませてくれよ」「…あ、あのっ!」

しかし、抵抗する余裕すら奪われてしまえばもう目の前に飛び込んできた彼の綺麗でセクシーに浮き出た鎖骨にうっとりと釘付けだ。男の女とはまた違う筋肉の筋がくっきり浮かぶ綺麗な鎖骨に海はそっと垂れたハイボールをふきふきと近くのふきんで拭いてあげたが…エミリオは直接口で拭いて欲しかったらしい、

もっと欲しい…海は促されるままに互いに成人済みの、リキュールカクテルのバイオレットフィズをトクトクとグラスに流し込みサイダーを注ぎ箸の持ち手の方を逆さにしてくるくるとかき混ぜカクテルを作るが彼の膝の上では思うように作れない。

「え……っ!」
「何がだ?」
「何、って…や、エミリオ……恥ずかしいよ…」

カクテルを作ろうとする度にあちこちの部位を彼の指の背がなぜ、その度に彼の手により敏感な身体に甘い吐息が無意識に漏れてしまう…海は気付けばまるで魔法の様に自分の服がとてもいい感じに肌蹴ている事に気が付いたのだ。しかも、彼女が柔らかなスカートを履いているのを良いことに小細工は要らないーエミリオは彼女の顎を掴むとそのまま瞳を閉じ睫毛が先にキスをする、その次に重なる唇を何度も何度も優しく挟み込む様なキスをする、鼻と鼻をくっつけてはにかみ合った。恥ずかしいのはお互い様だ、何時まで経ってもときめきは無くならなくて…好きがますます加速して居るみたい、そんな錯覚に陥った。

「お前の腕の中に…僅かで良いんだ、」
「え…??」
「居場所だ、お前のあの時の言葉が今の糧だ…」
「私の言葉?」

海は肌蹴た胸元にたくしあげられた下着を一生懸命小さな手で隠しながら不思議そうに首を傾げる。エミリオは彼女をそっと抱き上げるとテーブルの端に座らせ、そうして一気に中途半端だった服を彼女の悲鳴と共に一気に引き抜いてしまったのだ…それは昔の記憶だった。出会ったばかりで名もない頃に海も覚えていないのはだいぶ前に本人はなんの気もなしに無自覚で口にしたものだからだろう。

「大丈夫。貴方の居場所なら、ちゃんとあるよ、…ここに。」

あの瞬間が思えば全ての始まりだった…憐憫も無い瞳が真っ直ぐにこちらに手を差し伸べてくれていた。その手を戸惑いがちに取れば彼女は優しく微笑んでくれた、その優しい涙の温度を決して忘れはしない。海の笑顔が、本当に求めていた全ての温もりと愛しさだった…柄にもなく涙ではなく笑顔がこみ上げたのを今も忘れない。

視界が遮られると柔らかなエミリオの口唇を食み次第に熱を帯び広がってゆく…ホットプレートや皿を次々に退かしてゆくエミリオはもう海しか見つめていない、混ざりあったバイオレットフィズを迷うことなく海自身すら味わうかの様に真っ白できめ細やかなそのもち肌に垂らしたのだ、肩を抱き寄せる腕に力が篭もってゆく吐息すら奪う様な甘いキス、バイオレットフィズに濡れた身体が恥ずかしくてたまらないのに彼しか見ていない静かな夜。

その手つきは驚くほどに力強くて荒々しいのに、嫌じゃない自分がいた。

「〜っ…やめて!」
「……止めたいのは山々だがな…身体が止まらない」
「っ…!」
「大丈夫だ、恥ずかしいのはお互い様だろ?」

昔の様に、どんなに外見が変わったとしても中身は、2人を取り巻く愛の形は変わらない。
心細げな声で海が頼りなく彼を呼ぶ、見上げた視線の彼の澄んだ海の深いバイオレットフィズの様な瞳には底知れぬ怖いくらいの欲望が形を潜めており海はゾクリと震え上がった。
テーブルの上で、怯えた様な##NAME1##を優しく抱き締めてやり柔らかな唇が離れると今度はそのまま下へ下へと下降してゆく。甘く、酒で火照った身体が焼ける様に熱い、

「、あぁ…っ…く、くすぐったい!」
「こうか…?」
「っ…ふふふっ…!…」

不意に悪戯に彼の指先が海の括れた柔らかなウエストを擽った。甘い痺れが隈無く全身に広がってふわふわと宙を浮かんでいるような気分になった。柔らかく胸を押し上げエミリオの熱い吐息が二人が離れていた心の空白を埋めて行くようだった…

「エミリオ、思い出したよ…あのね、貴方が私の居場所なの。」
「……海…そうだ、お前が、僕の居場所だ。」

愛撫を受けアルコールに染まった身体はもう今にも焼き付きそうに燃えていた…綺麗に笑うとエミリオは優しく彼女に口づけを落とし腰を掴まれふわりと身体が浮くといきなり貫かれた。首筋に、胸に、甘く口づけを落とされ執拗に揺さぶり海を追い込む、何度も何度も海は高みに追いやられ彼をもう離したくない、必死に縋り付くように抱き締める、意識が白く弾け飛びやっと彼が満足した頃にはもう海は息も絶え絶えだった。不意に喉を潤す生暖かな液体が流れ込む感覚と肌寒さを感じて目を覚ますと、いつの間にかリビングの冷たい木製のテーブルからベッドで眠っていたことに気が付き洗い物や片づけを思い出し起きあがったがそれを力強い腕に遮られた。

「料理なら全て片付けておいた、ほら、飲むか…」
「あ、エミリ…んっ!」

エミリオが口に含んでいたミネラルウォーターを海の口に流し込んだ。そのままごくりと飲み込むと、渇いた喉が瞬く間に潤いで満たされる。頭が割れそうにいたい、髪をふわりと揺らめかせ海は不思議そうに頬杖を突いてすっきりした様な笑みで次に見つめるエミリオのさっきの激しく求めていた姿は消え穏やかな眼差しに海は安心して身を委ねた。

「エミリオ…あれー…私」
「…すまない、あれからお前、気を失っていたんだ。こう言うのが嫌なのを分かってて、ごめんな。」
「うぅん、」

どうやらあの後に気を失ってしまたらしい…火照った身体が熱くてまだ彼に抱かれた余韻がじんわりとシーツに広がる肌を温めた。そして、指輪を見つめて海はあるひとつの決意を固めていた。

「私、…ピル飲むの、止めることにしても良いかな…?」

それはつまり…2人で決めた約束だった、飲み続けた経口避妊薬を飲み止める。それはつまり裏を返せば、頬を染めて自分に身体を寄せて甘えてきた愛しい存在にエミリオも目を見開いた。

「本当か…?その意味を、僕が受け止めていいのか…?」
「うんっ。…赤ちゃん、そろそろ欲しいな…だめかな、」
「そんなわけないだろう…お前が、望むなら…」

優しく髪を梳く手つきに微睡みながら海は淡く笑みを浮かべ彼の胸板に顔を埋めうとうとと微睡みながら枕元にあった経口避妊薬を見つめてぽつりと呟いた。無意識に口にした願いは胎内に埋まる彼の熱が未だ温かい、睦みながら下腹部がしっとり潤んでいるのを確かめるとエミリオは海を招いて更に引き寄せた。

「……子供を産むお前の身体がどうにかなるのは怖い…だが、お前が子供を、妊娠を望むならむしろ、僕もそのつもりだ。」
「エミリオ…」
「改めて、僕の子供を産んで欲しい。この手が子供を抱くには汚れきっていることは分かる、だが…お前を抱いてもお前を傷つけて汚れてしまう気がして怖かった。でも、僕を…お前が受け入れてくれた…お前となら、幸せな未来を作れる気がする、」
「…私も、私が今こうして生きているのはお父さんのおかげで、エミリオに出会えてこうして本当に結婚が出来て子供を2人で作れる、これを奇跡だと思いたくないよ。」
「このまま眠ってしまいたくない…海をもっと抱きたい。」

今の2人ならば…離れることは不可避だと認めて。

「駄目、だよ…エミリオ、明日からまたお仕事だよ、もう寝なくちゃ」
「…嫌だ。まだお前とこうして抱き合っていたい…
海、愛している…このままずっとお前と抱き合っていたい、」


不機嫌そうに眉を顰めたエミリオに海は彼の黒髪をかきあげそっとキスをして優しくまたキスを落とす。

「私も、エミリオを愛してるから。」

愛してるだなんて口にするだけで涙が溢れるような思いなんてきっと彼だけ、彼だけへの言葉だから。

「ありがとう、エミリオ…帰ってきてくれてありがとう…私と結婚してくれて…」

耳元で囁くとエミリオも幸せそうににっこりと瞳を細めて笑ってくれた。疲れているのに離れがたくて、もう新しい今日が始まった今も、昨日も今日も明日も明後日も…2人は甘いキスを飽きることなく交わし微睡んだ空気に酔いしれた。

Fin.
【always be my baby】

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