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【my sweet?】

無理矢理足を広げさせられ、力付くで押さえつけられて、乾いた其処に鋭利な指先で何度も往復されても潤いなんて感じないんだ、苦痛しか感じない…
自分は愛されてなんていない、ただ性欲の捌け口にされているんだと感じて涙を流しながら瞳を閉じていた記憶。
海が身体に覚えた痛みを思い出して微かに今でも強張って震えているのが足先から伝わり、強く指を締め付け、頑なに拒んでいるのがありありとリオンにもわかった。

「痛いか、」
「へ、いき…っ!」
「もう少し力を抜いてみろ。これでは痛いままだ。」

痛みを与えられたまま植え付けられた海の記憶がどうか癒えるなら、リオンは指を少しずつ埋め込み、優しく動かし、胸の頂きにまた口付け、優しく、壊さないように泣きたくなるくらいに丁寧な手つきに海は怯えながら、リオンの言葉はまるで魔法のように安心して彼の背中に両腕を回し、瞳を閉じて次第に力を抜いていった。

「どうだ?」
「…えっ、あの…!私、どうしたらいいの…?」
「そのままでいろ、お前はなにもしなくていい。」

早急で若さのままの勢いで異性の身体や悦楽に興味を高めている例えるなら盛りついた猿のような世代である彼がこんな風に、もしかしたら経験を重ね相手を追い詰める余裕すらある成熟した男よりも落ち着いて求めてくれるなんて。

リオンは同世代の男子校生たちとはまったく違う人生を歩んできた、また情や快楽に流されない確固たる意思を持つだけある。
まして、一緒に暮らしてきてよく耐えた方だと思うほどに。
海はリオンに我慢をさせているのではないか、そんな不安に駆られた。

「エミリオ、…」
「増やしてもいいか?」
「うっ…うん、」

次第に力が抜けてゆき、海はリオンの人差し指と中指をを受け入れると睫毛を震わせ、ぎゅっと大切そうにざらついた入り口に締め付けた。

「あっ…!」
「痛かったか?」
「ち、がうの…ちょっとびっくりしただけ、」
「無理はするなよ。」
「うん…」

潤う内部を満たすように、リオンは海の脚を持ちながら優しく開くとタオルケットをふわりと羽織り、そのまま海の裸体を隠すように抱き締めた。
はじめはとまどうばかりの海、鋭い痛みも今は微かな不快感へと溶け込んで…恍惚にまどろむ視界の中で見たリオンは見たこともないほど穏やかな眼差しをしているから…
海は次第に口から我慢できずに甘い吐息を漏らし、リオンに泣き付くとリオンはそのまま海の唇を奪い、吐息を封じ込めていた。

「海、もう少し、声を我慢してくれな、隣に聞かれたら海は気にするんじゃないか…?」
「…っ、…な、んでだろ…涙が、出るの…しあわせ、すぎて…」
「あぁ、僕もだ…こんな風に満たされるなんて…海、愛してる。凄く、可愛い…」
「エミリオ、そんな…っ」
「海、…」

両胸をゆっくりと柔らかくリオンに溶かされて海は幸せそうに甘い吐息を重ねた。
痛みで強張っていたのが嘘みたい。何度もキスを重ねてふたりは熱帯夜のなかクーラーが効いた涼しい部屋で抱き合っていた。
しかしいつまでも自分ばかり丁寧に扱われてもリオンも辛いのを感じる。

海は暗闇に慣れてきた瞳で羞恥からリオンを見ないようにぼんやり真っ黒い天井を見つめていた。
リオンはいつも自分のことよりも海を誰よりも気遣い、無理やり下着を剥ぎ取り暴いて怖がらせないようにタオルケットでくるむように裸を隠してくれている。海は愛しくてリオンを抱き締めてやりながら瞳を伏せた。

「エミリオ、…」
「海、痛かったら」
「職場では右手をあげるよ?」
「そうだな、」

リオンは海が怖がらないように必死だった。何度も会話を繋げ、暗闇のなかで細い割には大きくて柔らかな脚や臀部を撫でながら肢体をくまなく見つめていた。

確かに内腿に感じた脈打ちを海は理解して無意識に膝に力を込めてしまう。
あの夜の記憶がよみがえる、痛み、引き裂かれる皮膚の感触も感じる。思い出す、

「っ―…」
「エミリオッ…?」

電気を点けてもっと眺めていたい、暗闇で見た海はとても昼間の無邪気な笑顔で歩き回る海にはない魅力を感じたから。タオルで巻いていたからよく見えなかった無駄な毛のない、まっ白い肌、桜色に火照る身体が愛しくて、リオンは夢中で海を抱き締めた。

「痛かったらすぐに言うんだ。」
「ん…」
「緊張しなくていいから、最初からそうはうまくはいかない、」

右手をあげる余裕なんてきっとないのは自分が理解している。陣痛よりも貫かれる痛みの方が断然軽いとわかっていても海が驚くほどリオンは慎重だ。
柔らかく潤いに満ちていた指を抜き自身を其処に宛がう、海には悪いがはじめて感じる海の内部はとても柔らかく、温かく濡れてリオンを必死に受け入れようとしている。
しかし、気持ちと裏腹に身体は時間をおけばまた乾いてしまう。
海はリラックスした気持ちから次第にあの痛みをまた呼び覚まし、微かに足が震えていた。

「ひっ…あ…!」
「くっ…」

腰や硬度の勢いで壁を突き破るには皮膚は裂けて必ず痛みが伴う、巣ぼまるそこに無理矢理捩じ込むのだ、痛みは和らいだりはしない。
しかし長引かせても痛い、腰をただ突き進めてもきっと海は受け入れない。

「ああっ…!」
「海…」
「っ…駄目、あっ、いた…っ!」

苦痛に顔を歪めて…普段の穏やかな海は最早其処にはいなかった。
何かあるはずだ、痛みの元が。
リオンは何度か腰を突き詰めてみたが、このままでは裂けてしまいそうだ。

海はトラウマから襲う痛みがさらに痛みを呼び起こし、身を起こすと痛みから逃れようと抵抗した。

「エミリオッ…っ…あっ!いたっ...!裂けちゃう……」

リオンは夢中で海と繋がる意思を貫くなかで海の苦悶の声に次第に冷えて行く熱に海の身を抱き起こし優しくまた胸に抱いて頭を撫でてやった。

「海。」
「エミリオ、…うっ…ごめんなさ、い…ごめんなさい…やっぱり私、おかしいのかな…みんな誰だってしてるのに...なんで...?なんでだろう...」
「謝らなくていい、僕は…別に、いい。お前を責めたりはしない……海があまりにも可愛くて、どうにかなりそうだった。」
「えっ…!」
「まだ時間はある…僕はもうお前からたくさんの気持ちをもらえた、手に入ることのないものを貰えたんだからな。
だから、無理にお前の身体まで欲しがりはしない…」

そうして、リオンは裸の海を抱き寄せるとうなじにそっと口付けを落とし、軽く吸い付いて痕を残してやった。
独占欲とでも言うのだろうか…海と思いを通わせてからは強がるところや未だ自分がどれだけ背伸びをしても子供なのは理解しているつもりで…
だが、明日あの水着を着るつもりでいる海が心配なのだ。これを見れば誰もが気付くだろう、海に見つかって怒られなければいいが。エミリオは辛くないだろうか、結局ふたりは最後まで均衡を破ることはできなかった。
自分のせいで、未だ若い彼にいつも我慢させてしまって…やはり、今まで受け入れたことのない体験に痛がってばかりで、はじめての自分では彼を満たせないのではないか。
潤いに満ちていた筈の皮肉な身体は痛みに引き起こされ乾いたままだった。

「エミリオ…」
「お前のせいなどではない……気に病む必要はないからな。
…海。」

海は如何に自分が彼に釣り合わないか、さらに思い知り余計に落ち込むのだった。

こんなにも彼を愛しているのに、どうして身体はこんなにも痛みに耐えきれない、愛しい彼を容易く受け入れてくれないのだろう。
泣き出す海をリオンはせめたりせず、何も言わずにただ、抱き締めた。

「海…ありがとう。」
「エミリオ、そんな…ごめんね、本当はエミリオだって…」
「今までだって我慢してこうしてお前と寝ていたんだ、僕のことは気にする必要はない。もう、お前を離したりはしないから……はやく寝よう、」
「う、うん……」

暗がりでよく見えないままお互いに手探りで衣服を着せあい、ふたりは身を寄せあい夢みたいに抱き合うように深い安息をもたらす世界へとまた誘われた。

何よりも自分を大切に慈しむように抱いてくれたりオンの優しさ。それが何よりも海の涙腺を刺激した。
泣いたらまた彼に心配をかけてしまう…わかっているのに海は頬を伝う喜びと哀の入り交じる涙を堪えることが出来なかった。
海の瞳は涙でにじんでいて…それはリオンの紫紺の瞳にも同じ涙が浮かんでいた。

「(エミリオは…どんな辛い過去を抱えているのかな…私なんかにはわからないくらい、たくさん…エミリオ…私は、エミリオを少しでも癒せているの…?)」

見かけより大きな彼の手を絡めるように重ねて…海は2階の窓から少し明るみだした空を見上げていた。
早く寝ないと運転に支障が出る。

しかし、わかっていても自分が先に眠り目を覚めるよりいつも後に眠って早く起きていたエミリオだからその滅多に見ることのできない寝顔を彼が目を覚ますまで…
いつまでも海は飽きるまで眺めていたかった。
本当に彼はCGゲームのように整った化粧も映える美しい、玲瓏な顔立ちをしていると思う。
睫毛も長く、クールでセクシーだ。

「(私、…こんなに素敵な人に愛されてる…勿体ないくらい…こんなに幸せで、いいのかな?
いいんだよね……エミリオ…。)」

両親もこうして自分達と同じように結ばれてそうして自分は愛されて生まれてきたことを海ははじめて顔もわからない両親に感謝の気持ちを抱いた。

何よりも彼の低いテノールボイスが海には甘い媚薬のように身体に染み込んでいくようで…海はより一層高なる胸を押さえることができなかった。

fin.
【my sweet?】

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