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「17th.secret Dearest-ALBEL-」


マントを羽織り姿を漆黒の蝙蝠に変えて街を飛び回れば素直に感じられる。

探し求めて居た存在は思わぬ場所に居た。

そして隣に居た男に目をやれば…あいつか、
過去に刃を交え確かに二度とハンターをする自信すら無くなるほど奪い仕留めたダンピールのヴァンパイアハンターの男が見慣れない町並みに戸惑うウミの隣を我が物顔でエスコートしている。

…分かってはいた、あいつも年頃の女だ、あのハンターの男と…デキているのか??
分からない、なのに何故この胸は痛むんだ。
周囲を旋回しながらウミの周りを飛び回るもウミは今の俺の姿には全く気付かない。
何やらあのダンピールと楽しそうに、仲睦まじげに鮮やかなリボンを選んでいた。

「うーん…どれにしようかな」
「本当にあの男に…ですか。」

男、だと?
あの男はただの執事と言う事か?じゃあ、あのダンピールが言うあの男は誰だ。
誰の話をして居やがる。

執事はさぞや良い身分だろうな、何の権利すら要らない、いつもあいつの傍で…あいつの全てを独占出来る。

人間ならまだしも呪われた俺には到底叶わねぇ夢だってのに…。

「うぅん…赤と黒がいいかな、アルベルさん、赤とか黒とかが似合いそうっ…!」

…?

俺の…名前…!?

「あぁ、あの鬼畜な戦闘狂には返り血が似合いそうですね」
「ラルヴ、…駄目。」

自白剤の様な、無言のウミの眼差しには誰もが素直に思いを引き出す恐ろしい魔力がある。
本人は無意識だから尚更タチが悪い。
「すみません…」
「うん、」

不意に、眩しく花が綻ぶ様な笑顔と穏やかな声が俺の名を当たり前の様に呟いた。

…知らない儘で良い。
今すぐこの感情に蓋をしろ。
この気持ちを…夢の時と同じ温かな柔らかい温もりを俺が求めちゃ、絶対にならねぇんだよ…
頭では、理性が今すぐ阿呆な感情なんぞ捨てろ。
そう繋ぎ止めて居る…理解しちゃ居るのに本能は俺の張りつめた理性を引き裂こうと浸食している…
このままでは吸血鬼の本能に従い俺は彼女が死ぬまで血を貪り尽くすのだろう。

血が、欲しい。
あの甘い、濃厚な血を骨の髄随までありつきそして…、


「うわああぁぁん、ママー!!」
「…、ラルヴ、あれ。」
「どうしました、お嬢様…」
「転んだみたいなの、かわいそう…」

リボンを無事に購入し、嬉しそうに微笑むウミはそれは楽しそうに歩き回りフリルの裾がふわりと揺れてはまた波打ち、彼女の白い華奢な足が覗く。
彼女の周りを旋回しながらその指先が指し示す光景に目をやれば通行人にぶつかり転んで喚くガキが母親を捜して路地の真中で泣き喚いている。

「…」

其処に重なる…遙か昔に追いやった幼い温かな記憶。
俺に纏わり付く越せねぇ親父の屈託のねぇ笑顔、手。
ハンターに襲われた…未だガキだった俺を守るために…親父は…

「ッ…!!」

淀みひとつ無い夕日に照らされる隠した左腕のあの傷が酷く痛んだ。
傷を押さえ痛みに耐える。
なぁ、親父。
俺はどうすりゃいい、あんたならこんな時どうした?
人間なんぞ俺たちを化け物と畏怖し武器を手に襲いかかる弱いだけの醜い存在でしかなくて…くだらなくて仕方ねぇのに。

あいつだけはどうしてもそんな人間とは違う気がしてたまらねぇんだ。
危なっかしくて目を、反らせねぇ。
いつもの様に力尽くじゃねぇ、

心から…、あいつを俺のモノにしたい。

隠した本能、欲望で、お前を蝕み汚す前に。
俺には触れられない、この左手自身が許さない。

俺は幸せを奪った…己の不甲斐無さで何もかもを無くした。





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