愛し方さえも分からずに | ナノ
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「7th.secret 世界で誰よりも…」


月明かりに照らされた貴方の綺麗な顔、サラサラの黒から金へ、グラデーションの掛かる綺麗な髪、意地悪な笑顔、初めて交わした気がしない、キスの温度、今でも鮮明に覚えているよ。
甘く、胸が締め付けられて…切なくなる不器用な優しさが痛いほどに身に沁みて。
全て夢だなんて悲しすぎるから、だから痛みを伴う。
痛みの障害のない恋なんて無い。
隔たりを取っ払って、貴方を失いたくなかった…
動かない、冷たい貴方を抱き寄せても涙は止まらなくて、また胸を締め付けられるばかりだった…

いつか貴方に伝えたかった、I LOVE YOUを今、伝えるから…

誰の物にもならないで…

アルベル、

「飛ぶぞ、」
「きゃあああっ…〜!」

長い足が地を蹴り走り飛ぶ様に森を抜け中世の煉瓦造りの建物の屋根を悠々と飛び越し闇夜をひた走ること数分。

この能力、ただ走っている様に見えるが流れる景色は全て光の早さで駆け抜けてゆく…
そのスピードは最早彼が人間でないことを知らしめている様な証。

しかし、彼の肩に振り落とされない様に掴まりながら、本心はこのまま離れたくないと願う気持ちでいっぱいだった。

「着いた。此処の何処だ」
「あの…森の前にある巨大な煉瓦造りの屋敷です…」
「屋敷だぁ?ハッ、通りで世間知らずなわけだ。で、部屋は何処だ、」
「え…もう仕方ないので玄関からで「阿呆、俺はテメェの配達人なんぞ引き受けたつもりはねぇ、部屋からじゃねぇと俺が人間に姿晒すハメになンだろうが阿呆。
さては…俺をハンターに差し向けるつもりか…お嬢サマ?」
「…!
ち、違います!!そんなつもりなんかじゃ…」
「くくっ、冗談だ、阿呆。」
「なっ…!」

冗談にムキになってしまった所を指摘、からかわれ、かあっと頬を真っ赤に染め、ぷるぷると頭を震わせているウミ。
初めて見る純粋そうな歳の割に幼い顔立ちをした彼女の初な反応にアルベルは興味深そうに見つめている。
彼の冗談が本気に感じてしまう程、アルベルは知れば知る程自分を引きずり込む様に考えるより先に身体で動き、野性的で雄々しく男らしく魅力的に感じられた。

見えてきた森のすぐ街の郊外にそびえ立つ巨大な屋敷のロマンチックな月明かりに照らし出されたテラスに音もなく着地するとその暗闇の先に見えた彼女の部屋に鼻で笑う。

「此処か、しかし無駄にでけぇ屋敷だな。
テメェ、地主の娘か何かか?」
「はい…、そうですけど…でも、私は…」
「ならさっさと降りろ。舌噛むぞ、口閉じてろ。」
「っ…、」
「あ?」

軽々とウミを担いだままアルベルはそれは巨大な屋敷を見上げ鼻で嘲笑を浮かべる。
ふと、何か言い掛けたウミの言葉を遮ると彼女の部屋のテラスまで先程と同じ飛び去る能力で一気に壁を駆け上がってみせた。

「あっ、有り難う御座いました、アルベルさん。」
「くくくっ、テメェ…小せぇ割に意外に重いんだな」
「…っ!な、何ですかそれは…!!」
「阿呆、騒ぐな。誰にも見つからずに家に入りてぇんだろ?」


騒がせてるのは誰だ。
からかう様に、アルベルはくつくつと喉の奥で妖艶に笑う。
月明かりの下で笑う姿はどんな女性、もしかしたら男性すら惑わしてしまいそうな程に妖艶だ。

顔を覗き込む様に自分を見つめる紅蓮の様に燃ゆる紅く鋭い瞳。

担ぎ上げられていた身体がやけに熱くて…ウミは月明かりに照らされた彼の端麗な表情にうっとりと見蕩れて居た。

吸血鬼が吸血を行う際に放つ人間を魅了する魔力関係なしに、彼の綺麗な横顔に、華奢に見えて自分を軽々と担いだその身体は見た目の割にガッチリして鍛えられていて、その存在に胸の高鳴りを押さえることが出来なくて。

「あっ…そうだ、内側から鍵が掛かってるんだ…執事に頼まなくちゃ、大丈夫…彼は…「阿呆か、執事に頼んだら全部パァだろが。
それに、鍵なんぞ無くてもこんなモン、朝飯前だろ。楽勝だ。」

しかし、其処が彼女の本当の牢獄だとはつゆ知らず、アルベルはただ指を鳴らしそしてその鍵を意図も容易く開錠してみせると言う信じがたい事を彼女の前でやって見せたのだ。





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