「聖夜元旦企画」 エレさん宅の聖夜元旦企画にいただきました。不思議な夢を見たの。其処はエミリオの居る世界じゃなくて、私のいた世界だった。テーブルの上には三本のワイングラス。湯気の立つ料理の皿。リビングに入るなり、具現化したクライスが私の方を見て白い歯を見せた。「おう。海、目が覚めたか」「……?」「何ぼうっとしてるんだ?海が起きねえから、フィーデスも痺れを切らしたんだぜ」「フィーデス、が?」あれ?何だろう。聞いたこともない名前なのに何故か顔が浮かんだ。と同時に階段を音を立てて誰かが下りてくる。其処にいたのは先程脳が勝手に描いた、知っているような知らないような人、そのもので。彼女はクライスと同じく、目を細めて笑う。「海ちゃん!いつまで寝てたのさ?起こしに行ったんだよ?」「ご、ごめんね、フィーデス」「海ちゃん、可愛いから許す!」不意に、フィーデスは私を抱き締めてきた。そんなこと、滅多にあることじゃないからどうすればいいのか分からなかったけれど、顔は正直に笑みを浮かべる。分かった。私とフィーデスはきっと友達なんだ。何処かで会って、でもすれ違ってばかりで、気が付いたら色々な記憶に押し潰されていたんだ。私は謝罪の意味も込めてフィーデスの背に手を回す。「私もフィーデス、大好きだよ」「えへへ!クライスさん聞いた?うちら相思相愛だよ!」「はいはい、それは良かったな。早く食わねえと料理が冷めるぜ」「クライス、嫉妬してる?」「いーや。俺も海抱いたことあるもん」「変態」フィーデスの一言に笑いながら、私達は席に着いた。ワイングラスの一つにはワインが注がれ、残りにはジュースが満たされる。エミリオは何処にいるのだろう。一瞬脳裏を不安が過ぎったが、二人の笑みを見ていたらどうでも良くなったんだ。「海!ほれ」「ひゃあ!これ、何?」突然、考え事をしていた隙をつかれ、クライスからプレゼントの袋が飛んできたのだ。慌てて受け止めるとクライスは開けるように促す。私は高まる心臓を抑えながらも、袋を包んでいるピンクのリボンを解いた。現れたのは、首に赤のリボンを巻いた小さな白いテディベアのストラップだった。「これは……」「泣き虫海にはお似合いだろう?」「あ、もしかして赤いリボンはクライスを表してたりして!」「そういうことだ。携帯にいつも付けていれば泣き虫も治るかと思ってな」「クライス酷い!もう泣き虫じゃないもん!」「そうだよクライスさん!海ちゃん苛めたら私がやり返すもんね!」「おお、怖いな!」「でも……有り難う、クライス」改めて目を見て礼を言うのが照れ臭くて遠慮気味に頭を下げると、クライスは高らかに笑いながら私の髪をわしゃわしゃと撫でてくれた。「海ちゃん、私からはこれ!」「有り難う!これは……ネックレス?」「うん、たまたま可愛いお店で見つけたんだ」可愛いよね、と笑顔を浮かべるフィーデスから、貰った青い石の付いたネックレスに視線を移す。石の中には星のように銀色の物が散りばめられていて、まるで夜空のようだ。私は思わず石を握り締めると、俯いた。「……」「どうしたの、海ちゃん?」「……っく、ひっく」「ほらほら、やっぱり泣き虫治ってねえだろ?」「違うもん!これは、これは……!」涙を拭いても拭いても止まらなくて、わけが分かんなくてプレゼントを握り締めたら余計に涙が止まらなくなった。そこで、目が覚めたんだ。フィーデスもクライスも居るわけがなく、其処にいたのは不安そうなエミリオ。彼に言葉を掛けるより前に、私は手が力強く握り締めていた物に絶句した。「これは……」「どうした、海」「エミリオには秘密!」大切なプレゼントを握る手を布団の中に埋め、私は機嫌を損ねたエミリオに小さくキスをする。いいでしょ?エミリオ。私、お友達が出来たんだよ。 prev |next 【back to top】